- tasobussharima1
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「大僧正、今、なんと」 『星は、天にあってこそ』 「これを天に戻せ、と仰るのですか」 仏舎利カプセルを回収した空海達は、再び大僧正の下へ報告に赴いていた。 「されど、如何にして」 いままで黙していた壱参空海が口を挟む。 「天から降りし物を返す術など」
2016-02-28 21:04:09大僧正は仏舎利を空に浮かべた理由を知ってる人間か。徳ある人間からすれば、仏舎利は無用の長物か #徳パンク
2016-02-28 21:05:56『術は、ある』 大僧正の機械音声が響く。仏舎利カプセルの存在した、衛星軌道。そこへ届く術は……存在した。 奥羽岩窟寺院都市は、元々シェルターとしての機能を持っている。徳エネルギーのサイクルを成立させれば半恒久的な居住が可能とはいえ、脱出する手段は必要であった。
2016-02-28 21:08:05奥羽岩窟寺院都市に設備があるの……でもそれは仏舎利を衛星軌道に投入するためのものじゃなさそうだけど…… #徳パンク
2016-02-28 21:09:49シェルターの設計者達は、考えあぐねたに違いない。海から遠い、道無き道の果てにあるシェルター。その環境から確実に脱出するためには、如何なる設備があれば良いのか。 或いは、別の方向性。人類が復興を遂げるために必要な『あるもの』に、もしもトラブルが発生した時にどうすればよいのか。
2016-02-28 21:12:06答えは、都市の閉ざされた坑道の奥にあった。厳重に窒素封印された嘗ての遺産。使い捨て型のローンチ・ヴィークル。古の時代の衛星打ち上げロケット。 地上が如何なる状態になろうとも、宇宙を経由すれば確実に地球上の如何なる場所へも即座に到達可能である。だが、それだけではない。
2016-02-28 21:16:04それは……誰を脱出させる想定だったんだろう。シェルターの全員が脱出するペイロードはないよね…… #徳パンク
2016-02-28 21:18:32人類社会に不可欠な衛星網に万一があった際、修復することも可能となる。 耐用年数は既に限界寸前だが、それでも、宇宙へ人類を送り出すことのできる、世界最後かもしれない道。 嘗てこの街を訪れたノイラ(その時名乗っていたのは違う名前だったが)は、大僧正との取引によってこれを知っていた。
2016-02-28 21:20:02そして同じ取引によって、大僧正は己の計画の無為を知った。 大僧正の肉体は既に限界を超え、彼が求める即身成仏に至るには時間が足りない。故に、まず彼は延命法を求めた。舎利バネによる改造。同時に、徳エネルギーによる解脱に耐える肉体を手に入れ、即身成仏を達成する。それが彼の計画であった。
2016-02-28 21:24:02新たな肉体を稼働させるための徳遺物にも目処は立っていた。奥羽岩窟寺院都市へ降下してくる筈の仏舎利が正にそれである。だが、大僧正の計画には根本的な欠陥が存在していた。 舎利バネティクスによって改造された肉体は、解脱に耐えるのではなく解脱そのものを寄せ付けないのだ。
2016-02-28 21:28:01