妖異の黒猫Ⅰ

ロンリコ@パ邪SGO_大戦 @lord_phRP

「……『今の』俺ァ酒が呑めりゃ、それでいい。アンタとつるむ必要は無い」 　ぷぁっと、口から息を漏らして、その後ねふぅと吐く。ぼんやりと見える、黄色い月。 「……俺はアンタが嫌いだ。『私たち』などと呼ぶな。この悪女が」 >猫憑 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「素直じゃない」 女はドレスから露出した肩を竦める。 「酒に酔うのがそんなに心地良いかしら」 ふっと、彼女の視線が木箱に映る。 中身に手を伸ばし、瓶を手に取り、コルクを抜いて。 口をつけると。 「……」 黙って男の隣にその瓶を並べた。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「貴方はこんなものより、ずっと心地良いものを知っているでしょうに」 顔をしかめ、舌を出しながら彼女は言う。 「地を駆け、獲物を追い、その首筋に牙を突き立てた時の心地良さを。こんな不味い水ばかり飲んでいるから、忘れてしまったのかしら？」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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もう一度、男の顔を覗き込む。 「貴方はここで酒が飲めれば満足でも、私はそうじゃありませんの。この戦争で、しなければならないことがある。パンドラとしても、『私たち』としても」 一歩、顔を近づけて。 「私と来なさい」 そう言い放った。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「パンドラ？ そういえばそんな名前だったか」 近づいた顔に、表情を歪ませた。だがその数瞬後にはにぃっと口端がつり上がって 「あんな場所に居てられるか。俺はとっくに下りてる」 　隣に置かれた彼女の瓶。おもむろに手にとって、飲み干した #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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それが空になると、口元を拭った。 「満足？　あァ、満足さ。尤も、アンタが目の前から消えてくれれば、の話だがな」 頭がズキズキする。気分が悪い。 「だから、アンタがどうなろうと知ったこっちゃ……」 刹那、カラダが翻った。 >猫憑 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「リコ」 彼女の両の手が、男の肩をそっと押した。 そのままふらりと倒れる彼を、黒いドレスがふわりと覆う。 甲板に男を押し倒し、彼女はにこりと笑った。 「貴方は――」 直後、空気が凍り付いたような気がした。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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彼は、突き抜ける嫌な予感に、そして女の変化に気付くだろう。 男の肩に置かれた女の白い手が、みるみるうちに黒い毛に覆われ。 その肩に鉤爪が食い込んだ。 膨れ上がるように大きくなった黒いドレスからは、長い鞭のような2本の尻尾が飛び出し。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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気付けばそこに居るのは、微笑む女ではない。 長く鋭い牙を剥き出し、その前脚の下にちっぽけな獲物を捕え、嘲笑うように琥珀の瞳の光を歪ませた、巨大な黒猫。 「この『私』以外に、貴方の帰る場所なんてあるのかしら？」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波 ＞幻想卿

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「……」 ほんの一瞬。視界の隅に彼女の近寄る姿が映ったと思ったその一瞬の後に、彼の身体は妖異の黒猫に拘束されていた。彼を押し倒したその巨躯を押しのけて、起き上がろうとしても、身体がぴくりとも動かない。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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全身に力を込める。だが、この体制からは抜け出せそうにない。 「ふぅ」 どこか、諦めた様な、ため息を一つ。 「この期に及んで力技か？　全く、色気の無ェ女だ」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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その後、しばしの静寂が流れる。力技となれば、もう逆らう気にもならない。 ザザ、潮風、波の揺れる音。 だが、その静寂を破る音が、一つ。 びり。 びりりりっ ---ニンゲンから、出ない音がした--- 「ッ！」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「てめェッッ！！！！」 激昂。激しい怒りが、黒猫を振り解く。 肩口の”皮”を抉り取るような鉤爪。 ばっと身を退けた彼はよろりと立ち上がり、彼女の鉤爪にやられた”傷口”を隠す。 だが、それは隠し切れず。 ---ツギハギの、身体。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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見ると、その”皮”には破かれたような”傷跡”がある。 だが、違和感。 その傷からは赤い血が流れない。 びらり、と破かれ、風に靡く”傷口” それはまるで「キグルミ」のようで。 その傷口からは、獣の毛並みが、顔を覗かせていた。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「ノア・シャノワール……！」 なんて事をしてくれたんだ、と男は激昂する。 その”縫い目"から黒い毛並みを覗かせて。 その”ツギハギ”から獣の相を覗かせて。 彼は、ケモノだった。 >猫憑 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「……うふふ」 気が付けば、巨大な黒猫の姿はなく。 そこに居たのは、元通りのドレスを着た女だった。 男の激昂に対して、女は心底嬉しそうであった。 「やっぱりそのおかしな被りものは、貴方に似合いませんわよ？」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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男の怒りをよそに、彼女は露出した毛並をうっとりと見つめ。 「ああ、やっぱりライカンスロープは美しいですわ」 感嘆の溜息を漏らすのだった。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波 ＞幻想卿

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「……」 絶句。 その恍惚とした表情に彼が見せた反応は、それだった。 ただ只管、何も言わない。言いたくもない。 ただ、バツが悪そうな表情だけたたえて。 「……チッ」 　叫んだ声が、出なくなる。力を込めた拳を弱めて、そう舌打ちした #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「……どうせ、今から断ると言ってもまた押し倒されるんだろう？　女に跨がられるのは悪くは無ェが、女じゃなくてアンタは黒猫だ」 はぁと大きなため息を吐く。 嫌気がさすほど、彼女に話は通じない。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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「ったく……このカブリモノだって高えんだぞ」 　あーあ、と呟きながら”傷口”を見やる。 こんなのでも魔法師のマジックアイテムなのだ。これは修理は高くつく。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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いつもそうだ。 ギリィっと、歯を食いしばる。 コイツに話は通じない。 何を言っても、どう抵抗しても、コイツは何も構わない。自分のやった事を悪いとも思っていない。 俺の事を未だに従者と思っていて、何かあるごとにやってくる #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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そんなコイツが死ぬ程嫌いだ。 死ぬほど嫌いなのだが、それでも俺は……。 「……はぁぁぁぁぁぁっ」 大きなため息。 まるで、全ての諦観の様な。投げやりのような、そんなため息。 「好きにしてくれ。今度は何をすればいい」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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どうして自分が逃げないのか。その答えが分からない。 彼女を殺すまで、気が済まないから？ 彼女を殺せば、何かが変わると信じているから？ かつて忠した相手だから？ そんな自分に、彼女は彼女なりの最大限の熱意で応えたから？ それとも。 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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今、そう応えた自分に、彼女はどう返すだろうか。 その表情を想像するだけで、どこか、こう…… バツの悪い表情しか、出来ない。 >猫憑orEnd #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波

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男の答えを聞いて、彼女は輝かんばかりの満面の笑みを浮かべた。 「戦争、それも海戦に参加しますの。地上はなんだか騒々しいけれど、海ならば連れ去ってしまえばこっちのもの。混沌をその身に宿さぬ可哀想な人間たちを、美しく変身させてあげますわ」 #ツギハギの黒狐 #妖異の黒猫 #戦火の荒波