ツリー＋おまけ【横山家】

かおり @orange_shake_

【ツリー・42】 "お前、そんなもん欲しかったん" 『…なわけないやろ』 "やんな" もう子供やないし、俺らの欲しいものなんかサンタに頼んでどうにかなるもんちゃうねん。 どっかで飯でも食って帰るか、とまた歩き出した。

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【ツリー・43】 ＊＊ "じゃーなヨコ！今日はありがとぉな" 『おん、じゃーまたな』 飯食い終わって、家が逆方向の友達とそこで別れる。 ちょうど目の前にバスが来たけど、なんとなく歩きたくなってそのまま夜道を歩く。 手に持った紙袋を見て小さく溜息をつくと、白く曇った。

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【ツリー・44】 『…さむ』 俺はどんな顔してあいつにこれを渡して、どんな言葉を言うんやろう。 あいつは、どんな顔して笑うんやろう。 …喜んでくれるん、かな。 好みをリサーチする暇もないほど、最後にあいつの顔見たのすら随分前に思える。

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【ツリー・45】 街の明るさから離れると、息の白さがさっきより濃くなった。 鐘の音が聞こえる。 そっか、近くに教会あったわ。 これが正しいクリスマスってやつやで。よぉわからんクリスマスソングよりこっちの方がずっと… 『…寂しいやんけ』 らしくない独り言が、また白く曇った。

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|ω・)つづく そろそろお気付きの方もいらっしゃるのでは？ ヒロインの続きとなるこのお話、またしても盛大にback number先生のお力をお借りしております…！ youtu.be/JfgOjtq440o 昭和に街頭インタビューがあったかどうかは知らない許してにゃん。

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【ツリー・46】 ＊＊ 「もしもし？横山くん、久しぶり♡元気？」 『…おん』 「え、鼻声じゃない？」 『寝起きや』 久しぶりにあいつから電話がかかってきたのは、それから1週間後。 昼寝しすぎて夜になって、オカンも弟も寝てもーてるから1人で飯食おうとしてる時やった。

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【ツリー・47】 『…お前、今どこなん』 寝ぼけてた頭がすっきりしてくると同時に、周りから聞こえてくる音や声で彼女が今いるのは家やないってことに気づいた。 「あれ、言ってなかったっけ？今日ね、ゼミの忘年会なの♡」 後ろで"丸子ー！"って呼ぶ声がする。

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【ツリー・48】 おい待て、今の声、男やないか。 「ちょっと、田中くん待ってよぉ。今、わたし電話してるんだから！」 やっぱり田中か。 顔も見たことないけど、あいつの話に時々出てくんねん。 同じゼミで、一人暮らし仲間で、ケーキ屋のバイトもその田中とやらの紹介で始めたとか。

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【ツリー・49】 『で、何の用なんわざわざ外から電話してきて』 俺も小っちゃい男やな。 自分で思ってたよりも冷たい言い方になってしまって、後悔してももう遅い。 「ご、ごめんね寝てたのに…！あの、その…会えないかなって」 『ん？会えへんって、』 会えへん？ 今度はいつが？

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【ツリー・50】 ていうか最近ドタキャン続きで申し訳ないからってもう約束してへんかったやんな？ 「あ、違うの違うの！会えないんじゃなくて…会いたいな、ってこと」 『え、』 「横山くんの都合が悪くなかったら、なんだけどね。…25日。」 『25日って…』

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【ツリー・51】 後ろから、ヒュー♪って声が聞こえて、あいつの「もぉ、うるさい！」って言う声も聞こえる。 『お前、バイトは？』 いっちゃん忙しいやろその日。 「うん、だから夜遅くなっちゃうんだけどね？ケーキ屋さん終わってから…だめかなぁ」 『いや…ええよ』

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【ツリー・52】 「…よかったぁ…♡」 電話越しでも、あいつが頬を赤らめて笑う顔が浮かんで。 「あ、テレカ切れちゃう。じゃあ、また電話するね。おやすみなさい」 慌てたように切られた電話。 『おやすみなさいって、俺今起きたとこやっちゅーねん…』 寝れるか、色んな意味で。

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【ツリー・53】 ＊＊ そしてあっという間にやってきたクリスマスの日。 「実はお店のクリスマスケーキ、1個予約したの♡家で一緒に食べよう？」 って、昨日の電話で言われた。 家て。 一人暮らしの女の子の家て。 あいつ、全然何も考えんと言ってるんやろうなぁ…

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【ツリー・54】 他の男やったら何されても文句言われへんぞ。 …幸い、スーパーネガティブ臆病者やから何もしませんけども。 できませんけども。 カップルだらけの駅前を抜けて、あいつに聞いてた家の住所の近くの公園へ。 9時にバイト終わるから待っててほしいって言うとった。

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【ツリー・55】 腕時計に目を落とせばちょうどあと5分というところ。 なんとなく足元に目を落とす。 それから自分の右手へ。 プレゼントと、それから… 『ほんまにこれでええんかぁ…？』 なぁマミちゃん。 君も今頃彼氏とラブラブクリスマスやろうけど。幸せ分けてくれてるやんな。

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【ツリー・56】 右手を身体の後ろに隠すようにして、左手はコートのポケットへ。 この冬はホンマに寒い。末端冷え性には辛すぎるわ。 今日だって、いつ雪が降ってもおかしくない。 …降ってくれてもええねんけど。 雪降ったら、あいつ喜ぶんやもん。

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【ツリー・57】 最後に見た3年前の、雪の中で笑うあいつの顔思い出してたら不思議と寒さも心地よくて。 なんか、なんか俺… 『…ベタ惚れやな。』 離れてた3年間、毎日会いたくてたまらんくて。 あいつが戻ってきてから毎週会えるようになったのに、だんだんそれじゃ足らんくなって。

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【ツリー・58】 3年離れとったのに2週間会えへんのが耐えられへんとか、俺2週間会ってへんのになんで田中くんは毎日会えるねんとか…。 俺って、こんなんやったんや。 自分でも知らんかった自分の姿を、あいつに次々と見せられてる感じがする。 嫌でも思い知らされる、自分の気持ちを。

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【ツリー・59】 いつか勝手に溢れ出して暴走してまう前に、ちゃんと伝えようと思ってる。 スーパーネガティブ臆病者やけど、あいつの返事がNOやったとしてもそれぐらいで消えるような気持ちじゃとっくになくなってる。 もう一度時計を見れば、9時10分。

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【ツリー・60】 バイト長引くかもって言うてたし、待たされるのは全然嫌ちゃう。 心の準備にもまだかかる。 『流れ星でも落ちてこーへんかなぁ…』 別に願い事をするわけじゃないけど、ぼんやりと空を見上げた。 pic.twitter.com/t0hAJGhGD8

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【ツリー・61】 ＊＊ 「横山くん！」 10時を少し過ぎた頃。 公園に、聞き慣れた声が響いた。 『…？』 確かにあいつの声がしたのに、姿はどこにも見当たらへん。 『幻聴…？』 あいつのこと考えすぎて、頭やられたんやろうか。 「横山くん…、はぁっ、お待たせ…！」

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【ツリー・62】 いや。 幻聴にしては息切れすぎやろ。 後ろを振り向けば。 『えっ！？』 「ごめんね、遅刻…」 申し訳なさそうに謝る、 クリスマスツリー。 『………』 「横山くん？」 『お、おぉ…』 俺の身長ぐらいあるクリスマスツリー。

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【ツリー・63】 その後ろから、彼女の顔が覗いた。 『びっ…くりした。ツリーが喋ったんかと思った』 「ぷっ…(笑)まさかぁ！横山くん、やっぱりおもしろいね♡」 そう笑う彼女のおでこには、こんなに寒いのに汗が滲んでて。 『どしたん、これ…』 「メリークリスマース♡」

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【ツリー・64】 『は？』 得意げに笑ってた彼女の顔が少し曇った。 「あ…もしかして、もう誰かにもらっちゃった？」 『え』 「テレビ、見たの。夕方のニュース、横山くんが大きいクリスマスツリー欲しいって…」 『………あ。』 あれか…！ てかあれ放送されてたんや…

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【ツリー・65】 やっと辻褄があった俺を尻目に、どうしようどうしようって慌ててる彼女を。 思わず、抱きしめた。 「わ、横山くんどうしたの…」 『あほやろお前…』 あのニュース見てから、俺のためにこんなでっかいツリー用意したん？