SSいろいろ

リハビリ(自分の)
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全∞ @all_zen_bu

羊 「ただいまぁ~腹減ったぁ~。」 玄関からくたびれた声が聞こえる。 「お帰り~。」 「今日飯な…に??」 リビングに入って来た忠義の動きが止まる。 「あれ…??あれぇ~!?」 すっとんきょうな声を上げて、ピョコピョコ近付いてくる。

2016-03-30 02:28:10
全∞ @all_zen_bu

「へ、変…??」 数年ぶりに作った前髪…。 忠義の反応見て急に不安になる。 「ううん、似合うてるで♡ひつじみたーい!!」 言いながら大きな手が前髪を撫でた。 (ひつじ…??) 「プッ…それ、服のせいじゃないの??」 白いモコモコの部屋着を引っ張って見せる。

2016-03-30 02:28:16
全∞ @all_zen_bu

「それもあるけど、それだけやなくて…なんかフワフワしとる~(о´∀`о)切ったの前髪だけ??ほかなんもしとらんの??」 私の周りをチョロチョロして、前から後ろからチェックする。 「うん。」 「可愛い可愛い♡ひつじさんや♡」 ご機嫌な忠義になんだかホッとした。

2016-03-30 02:28:24
全∞ @all_zen_bu

「成功…かな??」 「大成功♡ま、なんでも可愛いけどな♪」 言いながら、パーマのかかった毛先に鼻を埋めてくる。 「ごはん…食べ、よ、」 首筋に掛かる息に、思わず身をよじるけど…構わずに、小さくはない私を軽々抱き上げた。 「…旨そうなひつじさんが先。」 おちまい

2016-03-30 02:28:29
全∞ @all_zen_bu

ヤり逃げ 「俺はぁ!!本気だったんすよぉ!!」 お酒は強いはずなのにいつもより酔いが回ってるみたいだった。 会社でもイケメンで有名な後輩、錦戸。 お酒好きでウマが合って、社外でも飲み歩く仲。 ベロベロになってペラペラ話し始めてもう小一時間。

2016-04-02 14:44:42
全∞ @all_zen_bu

「真剣に付き合いたいんすよ!!もぅええ歳やし、落ち着きたいちゅうか…」 適当に相槌を打ちながら聞く。 「せやから真面目に付き合えそうな子紹介してもろたのに…」 その紹介してもらった知り合いの知り合いのさらに知り合いの女に、初対面でいきなり襲われて、即音信不通になったって…。

2016-04-02 14:44:45
全∞ @all_zen_bu

さっきから繰り返してる…不憫な後輩。 「俺は本気で、付き合える子を探してたんすよ!!なのにぃ…」 「はいはい、ツイてなかったね。」 「1回ヤってポイなんて、そんなん男しかせぇへんのかと思うてたわ…」 大きなダメージを受けたことを、涙目で必死に訴えてくる。

2016-04-02 14:44:48
全∞ @all_zen_bu

「そんなわけないでしょ。」 「へ、」 「女にだって性欲あるんだし。…何驚いてるの??」 「…いや、先輩の口から…そういう言葉が出るとは…」 「お人形じゃあるまいし(笑)ヤりたくて仕方なかったんじゃない??そのヒト。」 錦戸は複雑な顔でグラスをあおった。

2016-04-02 14:44:51
全∞ @all_zen_bu

納得いかないその表情に、なんだか苛っとする。 「例えば…」 横顔を見つめながら肩を掴む。 無防備な唇。 その下のホクロ。 「なっ、ンッ…」 驚きと抗議めいた声を無視して舌を絡める。 歯列を順になぞって唇を食む。 「ッはあ、っ…」 錦戸が息継ぎみたいに大きく息をした。 「なに…す」

2016-04-02 14:44:53
全∞ @all_zen_bu

「例えば、男なら誰でも良かった…とか??」 錦戸の眉がピクリと動いた。 構わずさらに距離を詰める。 「例えば、思ったほど…良くなかったとか??」 そっと股間に手を置いたら、あからさまにムッとして。 笑いそうになるのをこらえた。

2016-04-02 14:44:57
全∞ @all_zen_bu

(かぁわい…) 「ほんなら試す??」 ムキになって挑むような目で見てくる。 「音信不通になるかもよ??」 「『もっと』って言わせたる。」 「お手並み拝見。」 おしまい♡

2016-04-02 14:45:36
全∞ @all_zen_bu

花見 桜の咲く時期は忙しい。 新年度の準備に、学校が始まれば新しいクラスの生徒や親への対応に追われる日々。 ゆっくり花見なんて、する暇はない。 「丸山せんせ。」 小さな鈴が鳴るように職員室に響く、透明な声。 僕を呼ぶ甘い香り。

2016-04-06 00:34:37
全∞ @all_zen_bu

「桜、見ませんか??」 振り返ると天使がおった。 大きな黒い瞳で真っ直ぐ射抜かれる。 短いスカートから伸びた足が近付く。 「渋谷、…」 「すば子でしょ??」 「いや、学校やし…」 「誰もいないけど??」 「来たら…困るやん。」 「ケチ。」 笑いながら窓を開けた。 「ね、満開。」

2016-04-06 00:34:41
全∞ @all_zen_bu

促されて窓の外を見る。 正門から続く桜並木。 教員の出入り口は裏門やし、生徒指導で正門に立つときは花より生徒を見とるし。 ゆっくり桜を堪能する余裕なんて、ここ数年なかった。 遠くからやけど久しぶりに満開の桜を見る。

2016-04-06 00:34:45
全∞ @all_zen_bu

けど、それも、 ほんのわずかな時間。 「綺麗。」 桜並木を見て呟く。 その目に映る、花びら。 桜より、お前や。 俺の欲しいもん。 抱き寄せようと、思わず上がった自分の手を制す。 無理矢理頭を掻いて、その横顔を見つめる。

2016-04-06 00:34:49
全∞ @all_zen_bu

しばらくして、すば子が頬を膨らませた。 「意気地無し。」 あ、バレとる。 「学校、やし…」 「…またそれ。」 「…」 「意気地無し。」 天使の唇が、俺の唇を掠めていった。 ポカンとする俺を見て、いたずらっ子みたいに笑った。 花のように。

2016-04-06 00:34:54
全∞ @all_zen_bu

なあ。 君が隣におったら… 花見になんて、ならへんわ。 おしまい。

2016-04-06 00:34:58