小林雅一著「AIの衝撃」を読んだ中村伊知哉(@ichiyanakamura)氏の感想

まとめました。 (※2017/6/17 タイトルを一部変更しました)
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中村伊知哉 @ichiyanakamura

小林雅一著「AIの衝撃」読む。人工知能は人類の敵か、というサブタイトルだが、答えは「否」。 PCやネットに匹敵する技術がAIと次世代ロボットであり、AIと次世代ロボット技術が全ての産業を塗り替えることを描く。

2016-04-30 09:00:14
中村伊知哉 @ichiyanakamura

小林さんは、デジタルの重大な新技術について、深い技術知識と洞察力に基づいて鋭く未来を展望する研究者。これまでぼくもしばしば刺激を受けてきた。本書もAIの動向と意味をわかりやすく解説してくれている。

2016-04-30 09:02:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

類書にマカフィー/ブリニョルフソン「機械との競争」、スタイナー「アルゴリズムが世界を支配する」が挙げられるが、全体を俯瞰するには、まずはこの書を紐解くことを勧める。

2016-04-30 09:04:04
中村伊知哉 @ichiyanakamura

AIの歴史は小林さんが整理するとおり苦難の道だった。50年代に開発されたニューラルネットの限界をMITミンスキー教授が証明するなど、第一次、第二次にわたるブームと挫折を経た。ぼくは80年代の第二次ブームのころ、政府で開発プロジェクトに携わったため、その重たさはよくわかる。

2016-04-30 09:06:04
中村伊知哉 @ichiyanakamura

それが2006年以降のディープラーニングで自然言語処理が大きく進化し、ロボット産業にも革命を起こすようになったという。この10年でいよいよブームから本格離陸へと移行するように見える。

2016-04-30 09:08:07
中村伊知哉 @ichiyanakamura

iPhoneのsiriやITサービスのリコメンデーションなどもAIだが、それ以上に注目されるのが、自動運転車、ドローン、ロボットなど形を伴った新機軸だ。小林さんもここに注目する。

2016-04-30 09:10:03
中村伊知哉 @ichiyanakamura

特にアメリカでは、MIT、カーネギーメロン、スタンフォードからロボット・ベンチャーが続々と登場していて、DARPA(米国防高等研究計画局)の呼びかけで開発プロジェクトも進んでいる。産官連携だ。

2016-04-30 09:12:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

他方、いまそれ以上にAIやロボットを主導するのはグーグル、アップル、アマゾンなどのIT企業。彼らはネットとロボットを通じビッグデータを収集しようとしているという。

2016-04-30 09:14:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

かつてネットはDARPAから生まれ、大学で開発され、それが西海岸の企業群がサービス化・商品化することで世界に広がった。AI・ロボットも、軍事→大学→西海岸の企業群へと主要プレイヤーが移ったようだ。

2016-04-30 09:16:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そしてそれは、日本政府や大学が慌てても手の届かないところに事態が移ったことを意味するのではないか。数百、数千億円タームの資金を投資し続ける企業群に、政府や大学の僅かな資金で太刀打ちできるものだろうか。

2016-04-30 09:18:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

この点、本書が紹介するドイツ「インダストリー4.0」は、生産・物流現場をネット化し、AIで管理する国家政策で、米企業独占したIT革命がドイツ虎の子の製造業まで乗っ取るという危機感に裏付けられている。日本も戦略が問われる。(つづく)

2016-04-30 09:20:05
中村伊知哉 @ichiyanakamura

政府が近く決定する知財計画2016では、「世界最速・最高品質の審査の実現」を掲げ、特許審査の迅速化と品質の向上に向けた施策を講ずる予定。ここでのAI導入はタイムリーです。AI政策という点でも、AI... npx.me/hWY7/octu #NewsPicks

2016-04-30 18:58:05
中村伊知哉 @ichiyanakamura

「PCの検索」から入ったGoogleが「モバイルのプラットフォーム」へと移行し、次はIoTを含む「マルチデバイスのAI」へ、というのは自然な流れです。 / GoogleのピチャイCEO、「時代はモバイル... npx.me/L7XM/octu #NewsPicks

2016-05-01 08:12:14
中村伊知哉 @ichiyanakamura

小林雅一著「AIの衝撃」つづき。 気になるのは、日米で開発の方向性が違うという指摘だ。小林さんは両者をこう見る。 日本:人間が操作する単機能ロボットvs米国:AIを搭載して自律的に動く汎用ロボット

2016-05-01 09:00:08
中村伊知哉 @ichiyanakamura

背景として、日本のロボット・メーカに勤めるエンジニアの大半は、大学では機械系や制御系を専攻し、AIとは無関係であることを指摘する。ものづくりとAI・ITとが分離しているのだ。これはマズい。

2016-05-01 09:02:04
中村伊知哉 @ichiyanakamura

もっと気になるのは、「何を作るのか」という点で日本がブレているのではという点だ。 アシモのようなヒト型ロボットに対し、かつてアメリカは冷ややかだった。するとヒト型ロボットを開発する日本のシャフトに対して霞が関は「ヒト型に市場はない」と結論付け、日本では資金が得られなかった。

2016-05-01 09:04:04
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そしてシャフトはグーグルに買収され、関係者には衝撃が走った。今やアメリカの本丸はヒト型となっている。

2016-05-01 09:06:03
中村伊知哉 @ichiyanakamura

これに関し、稲見昌彦さんも「人がロボットにしてほしいことを追求するには人が活動する環境に機能を合わせるため」と指摘していた。AIの発達により、ロボットに求める機能も進化している。日本はいずれをも追えていないように見える。

2016-05-01 09:08:01
中村伊知哉 @ichiyanakamura

AIとロボットが人の仕事を奪う。オフィスワーカーなど中間所得層の雇用がまず奪われ、非定型的な肉体労働も奪われていく。上位にあるとみなされていた医療研究や経営コンサルなどへの転用も進む。

2016-05-01 09:10:07
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そこにとどまらない。将棋や囲碁がAIに王座を譲り渡しただけでなく、UCサンタクルーズの教授が開発したプログラム「エミー」が作曲したオペラがプロの作曲家を凌駕したように、創造的な仕事もそろそろAIの領域だ。

2016-05-01 09:12:06
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そこで最後に小林さんは問う。蒸気機関、自動車、重機、コンピュータなど、力の大きさや移動速度、計算能力などの面で、人間の能力を超えるマシンを人類は開発してきた。最後の砦としての「知能」もロボットやAIに譲り渡すのか。

2016-05-01 09:14:04
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そして自答する。人類はそう決断するだろうと。地球温暖化、大気汚染、核廃棄物処理など人類が直面する問題は人類単独で対処しきれなくなる。人間を超える知能を備えたコンピュータやロボットが必要とされるだろうと。

2016-05-01 09:16:03
中村伊知哉 @ichiyanakamura

そして説く。「知能」が人間に残された最後の砦ではない。それを上回る「何物か」を私たち人間は持っている。自分よりもすぐれた存在を創造し、それを受け入れる私たちの先見性と懐の深さだ、と。

2016-05-01 09:18:05
中村伊知哉 @ichiyanakamura

AIとロボットに対する漠然とした不安から、未来に対する悲観論も漂う。これに対し、ぼくらに必要なのは、やみくもな楽観論ではなく、創造論で未来を克服していく、この姿勢なのだろう。

2016-05-01 09:20:06