まぜまぜ

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❥❥Blue @sweetblue83

・・まぜまぜ・・ 1. 時計の針とにらめっこしながら鍋を火にかける。 (あと…サラダ、) あ、ゆで卵も、冷蔵庫から取り出した卵が手のひらで踊って床に潰れた。 もう… こんな些細なことで泣きそうになるのは、最近仕事に追われて疲れ果ててるから。

2016-04-16 08:42:59
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2. それでも家のことはちゃんとやらなきゃって思う。でも思えば思うほど。 (キャッ、) 白身を踏んだスリッパが滑る。ムキになって床をこすった。 ** 「アハハ!」 テレビを見ながら笑いころげる章大。 「ちゃんと服かけて」 「んあぁ、あとで。ハッハハ。なぁ飯まだ?」

2016-04-16 08:43:59
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3. 「もうすぐできるよ」 「腹ペコや。お菓子あったっけ?」 「できるってば!」 ちょっとムッとした。 ** 「なぁ、これ薄ない?」 「え、」 「味見した?」 「した…かな、」 正直覚えてない。 「ごめんやけど、これ食われへん」

2016-04-16 08:44:31
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4. 「…じゃ何か作り直すね」 「いや、もぉええわ。俺自分で作るし」  ** 「うまい!」 ボールにお豆腐を入れていろんなものをぐちゃぐちゃと混ぜ合わせた謎の料理。 「あ、これも入れよ」 わたしが作った料理を乱暴につっこむ。 「うん。食えるようになった」

2016-04-16 08:45:50
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5. 食えるようになった…。  「なん、その顔」 「別に」 「機嫌悪いん、」 「悪くない」 「ブスーっとしとるやんか」 「してないって」 スーッと心が冷たくなる。 「なんや、俺がこんなんしたから拗ねとんの?」 「…、」 「ほら。やるって。食べてええよ」

2016-04-16 08:46:41
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6. 「いらないよ!」 すすめる神経がわからない。 ** 「人が…人が作った料理、何だと思ってるの?」 変に抑えてた感情が爆発した。 「急いで帰ってきて、料理作って。なのに章大はお腹すいただおいしくないだ、」 「急いで帰ってきたとか知らんし俺」

2016-04-16 09:16:49
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7. 冷静な言い方にカチンときた。 「忙しいんだよ!今仕事ピークなの!うまく行かないことばっかりだし、みんな勝手なことばっかり言うし、プレシャーばっかりかけられて、誰も何も、」 「待ちーな、俺一回も聞いたことないで、そんなん」 「言ってないもん!」

2016-04-16 09:17:22
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8. 「知らんやん!そんなら俺悪くないやろ!八つ当たりすんなや!」 思わぬ怒鳴り声に身がすくむ。 「俺かて疲れて帰ってくんねん。家でくらい気ぃ抜きたいのにお前はイライラしとるし、小言言うし。何やねん」 向けられる視線が痛い。

2016-04-16 09:18:12
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9. 「そんな…わたし確かに悪かったけど。けど、けどできるだけ持ち込まないように、家のことだってちゃんと…」 「頼んでへんわ」 そんな言い方…。 「もういい!しょーたのバカ!」 限界だ。 部屋を飛び出そうとして 「キャッ!!」 「おいっ!」 「なんなのもう…!」

2016-04-16 09:19:32
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10. 拭ききってなかった卵の白身。 派手に滑った。 全てがばかばかしく情けなくなって 慌てて駆け寄ってきた章大の手を振り払って …大泣きした。 ** 「よぉ泣いたなぁ」 隣に屈む。 「ちょっとはすっきりした?」 「…、」 どういうこと?

2016-04-16 09:21:13
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11. 「お前のことやからさ、無理すんな言うても聞かへんやろうし。そのうち甘えてくれるかな思とったけどまるでそんな様子もないし」 クシャっと頭をなでる。 「大変なんやろ、仕事」 「章大…」 「一回出してまえ。そっからまた頑張ればええやん」 それで泣かせたの?

2016-04-16 09:22:41
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12. 「ごめんな。ちょぉっと荒療法やった」 クシャクシャっと頭を撫でる。 「張りつめとるだけじゃ参ってまうよ」 「…、」 「せや、」 章大はそう言うと、自分が作った混ぜ混ぜ豆腐を差し出した。 「食うて?」 差し出されたスプーンに素直に口を開ける。

2016-04-16 09:23:14
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13. 「食えるやろ?」 「うん、」 「そりゃ味はお前に敵わへんけど、こんくらいなら俺でも作れんねん。洗濯も、掃除…は怪しいけど、まぁ一通りはできんねんで?」 「…」 「なんでも完璧にこなそうとせんでええって」 「章大…、」

2016-04-16 09:23:57
❥❥Blue @sweetblue83

14. 「味が薄いってゆーたの嘘。いっつもおいしい。ホンマありがとう」 わたしの料理は章大の混ぜ混ぜ豆腐の上に置かれただけで、混ぜ込まれてはいなかった。 ** 「なぁ?」 章大は大げさに膨れた顔を作った。 「お前がそんなんやったら俺もグテーってでけへんやろぉ?」

2016-04-16 09:24:35
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15. 「え、」 「疲れたぁ~、酒ぇ~、寝る~って床に転ばれへんやんか、お前のせいで」 わたしの鼻をつまんでクルクルっと回す。 「たまにはうまいことサボリってまえ」 ** 「一緒に洗いもんしよ!」 「うん、ありがとう」 「いやぁ、ありがとうかどうかは、」

2016-04-16 09:25:25
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16. にやりと笑う。 「…えっ、ちょっと!」 章大の身体がピタッとくっつく。 泡まみれの手で押し返せない。 「やりたかってんなぁ、これ♡」 ギュッとしたりチュッとしたりフーッとしたり。 「もっ…止めて//」 「ちょぉ!泡つけんで!ちゃんと洗いもんしてーや!」

2016-04-16 09:26:01
❥❥Blue @sweetblue83

17. 「もうやめた」 蛇口を締める。 「ん?」 「洗い物なんてどうでもいい。章大とグテ~ってする!」 手を拭いて章大に抱きついた。 ** 「グテ~っねぇ」 回された腕に力がこもる。

2016-04-16 09:26:58
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18. 「まぁ、あとでそうさせるつもりやけどな」 いたずらっぽく笑う章大の胸に顔を埋めた。 pic.twitter.com/Wa58AjTPw2

2016-04-16 09:27:54
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