模擬戦本丸ログ

ろろ @roronyoroTRPG

ほかにも、部屋の状態で気になることといえば…文机の上がやたらときれいだ。整理整頓が苦手な主は、よく書類を散らかして堀川君に叱られていたのに…今はパソコンと黒電話以外は何もない。パソコンは電源が入っている。パスワードがかかっていて、中身は見れなかったけど。#模擬戦本丸

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天井をふと見上げるけれど、主は足が悪くて、車いすを使用していた。背の高い家具は置いていないため、この部屋の中には天井裏に上るための足場に使えそうなものはない。…あれっ、よく見たら、車いすがない。いつもは折りたたんで寝間の近くに置いてあるのだけど…#模擬戦本丸

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あと、主が目覚まし代わりにしているらしいスマホもない。朝、僕らの手を煩わせなくても自分で起きられるようにと言って、これもいつも必ず枕元に置いていたのに…机の上にも、引き出しにも、壁のコンセントに刺さったままの充電器にも、どこにもない。持ち去られてしまったのだろうか。#模擬戦本丸

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主の努力は結局実らなくて、いつまで経っても朝に弱いままの主だった。朝餉当番か郵便当番の子がだいたいいつも起こしにくる羽目になって…でも、だからって、こんな形でお寝坊できるようになっても、不本意でしかなかっただろうに。 #模擬戦本丸

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検分がひと段落したあとは、主の体をもとの状態に戻した。いつもの寝姿に見えるその光景に、今にも起きだしてきそうな幻覚を見てしまいそうになるけれど…そんな感傷を頭を振って追い出したそのとき、僕は、外から複数の足音が聞こえてくるのに気が付いた。 #模擬戦本丸

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「お？いたいた」 開きっぱなしになった襖から、和泉守君がひょこっと顔を出してきた。その後ろから聞こえてくる話し声を聞くに、堀川君と山伏さんも一緒にいるみたいだ。#模擬戦本丸

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「おう燭台切、おはようさん」 「あ、こんなところにいた！なかなか帰ってこないって歌仙さんが怒ってましたよ」 「主殿はまだお休みのようであるな。しかし朝餉が冷めてしまう。どれ、ここは拙僧が」 「わーやめろやめろ！燭台切、俺らの鼓膜が破れる前にさっさと主起こしてやれ！」　#模擬戦本丸

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彼らも主が眠っていると思っている。僕の体が壁になって、主の様子はよく見えないだろう。顔さえ見えなければ、ただ眠っているようにしか、見えないから。笑顔で軽口をたたきあう彼らの様子に痛ましいものを覚えながら、それでも僕は口を開いた。#模擬戦本丸

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「…みんな、落ち着いて聞いてくれ。主が死んでるんだ」 「……は！？」 「なんですって！？」 「なんと…！？」 「しかも、たぶん殺されてる。…和泉守君と堀川君は第一部隊だったよね。今日の近侍が誰か知ってるかい」#模擬戦本丸

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全員、戸惑ったり、ひどく驚いたりといった表情だ。無理もない、突然主が死んでいるって言われて、すぐに飲み込めるほうがおかしい。彼らの表情に不自然なところはないように思えたけれど…信じきれなくなっている自分に少し悲しくなった。でも、僕は考えなければ。#模擬戦本丸

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「…そりゃ、俺だ。昨晩、山姥切から引き継ぎがあった」 ややあって、疑うような顔つきの和泉守君が手を挙げた。今日が近侍交代の日だったらしい。 「近侍は俺だけどよ…それがどうした。主が死んで、まさか仕事の話ってわけじゃねえんだろ？」 「うん。…あれを、見てくれ」#模擬戦本丸

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僕はそう言って、黒電話を指さす。受話器の上がったそれを見て、和泉守君がまた怪訝そうな顔をする。 「…主や僕らの身に何かあると、あの電話が鳴るんだ。少なくとも僕が前いた場所では…そうだった」#模擬戦本丸

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「近侍じゃないと電話には出られないんだ。受話器を戻したら、たぶん電話が鳴る…頼めるかい？」 「…電話についちゃあ別に異論はねえが、その前にだ」 「僕らにも、主さんの顔、見せてくれませんか…？」 和泉守君が続ける前に、堀川君が我慢しきれなかったのか、口を挟んできた。#模擬戦本丸

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「………」 僕はそっと、部屋の奥へと体をずらし、彼らから主の姿が見えるようにした。和泉守君が先頭になって室内に入り、主の体を仰向けにする。主の、苦痛と無念に満ちた、あの顔を、僕も再び目のあたりにした。#模擬戦本丸

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「……っ」 怒りか悲しみか、感情を飲み込むように歯を食いしばる。叫びそうになったのか、口元を押さえて瞳を動揺に揺らす。一度ひどく悲しげな顔をした後、静かに目を閉じて手を合わせる。反応は三者三様だった。やがて、和泉守君がずかずかと黒電話へ向かい、受話器を戻した。#模擬戦本丸

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じりりりりりりりりん　 #模擬戦本丸

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一瞬の空白ののち、あの二度と聞きたくなかったベルの音が、部屋中に響き渡った。 その場にいた全員が息をのむけれど、和泉守君がすぐに受話器を取った。僕ら三人も、電話の近くに耳を寄せる。四人が受話器の周囲に群がる中、案の定、僕にとっては覚えのある電子音声が聞こえてくる。#模擬戦本丸

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【管理者の生命活動の停止が確認されました。本丸の解体処理に移ります。 新審神者への引き継ぎ手続きは 1 を 刀剣の他本丸への移譲手続きは 2 を 全刀剣の即時刀解・本丸解体処理は 3 を ダイヤルしてください】 前の事件のことを嫌でも思い出して、肌がざわりと泡立つ。#模擬戦本丸

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和泉守君は迷わず、怒りに任せるような勢いで１を押す。 【近侍 和泉守兼定と確認。ダイヤル1 2 における存続手続きは 管理者の死亡要因・当該事故/事件へ関連のある問題刀剣の処分確認書類 を 添えて行ってください。なお、当回線への接続権限は審神者・近侍までとなります】 #模擬戦本丸

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「っおい待ちやがれ！俺らの中に犯人がいるっ言いてぇのか！？んなワケ…っ」 和泉守君が電話に向かって吠えたけれど、電子音声は審神者の死傷要因の特定と処理を促した後、相も変わらず一方的にぷつりと通話を打ち切った。ツーツーという音がむなしく響く。　#模擬戦本丸

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「ックソ、」 和泉守君が力任せに受話器を置く。 「…だめだよ兼さん。この電話、たぶんとても大切なものだ…壊しちゃったら、この本丸は今度こそ終わる…だよね、燭台切さん？」 「うん。おそらく本丸はすでに封鎖されてる。悔しいけれど、この黒電話が外部との唯一の連絡手段なんだ」#模擬戦本丸

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「この本丸の問題が収まるまで、封鎖された状況は続く。問題を解決できない本丸とみなされたら…」 「…犯人、見つけなきゃですね。仲間を疑うのはいやだけど…」 堀川君がちらりと和泉守君のほうを見る。情に厚い彼は、怒鳴りだしたいのを堪えるように、こぶしを握って俯いていた。#模擬戦本丸

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「…下手人を突き止めるのも重要であろうが、守りを固める必要もあるのでは」 ふいに、今まで静かだった山伏さんが口を開いた。 「兄弟、守りって？」 「うむ。下手人の狙いがいまだわからぬ以上、被害が拡大せんとも限らん。用心しておくに越したことはなかろうよ」#模擬戦本丸

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「…そうだね、僕もそう思うよ。電話で言われなかった以上、ほかに被害は出ていないと思いたいけれど…早くみんなの無事を確認しなきゃ」 「それもあるが、燭台切殿。拙僧はこの黒電話の警護につこうと思っている。兄弟の言う通り、この電話は本丸の命運を握る命綱故」#模擬戦本丸

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「黒電話の警護か…」 なるほど、それは盲点だった。犯人の狙いは確かにわからない。受話器のことがあるし、犯人はこの黒電話の機能を知っている人物だ。壊したいなら犯行後に壊すこともできただろうとは思うけれど、用心しておくに越したことはないのかも。#模擬戦本丸