#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】12251200【ブレス・オブ・ペナン】

ニンジャスレイヤーをリスペクトした艦これファンジンSSです。 重巡ネ級と、ある駆逐艦の物語。 前時系列:http://togetter.com/li/987038
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春魔解丼 @vespiking

●●●●●●●●●●●●● #KZNPLN

2016-06-28 19:04:57
春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】12251200【ブレス・オブ・ペナン】 #KZNPLN

2016-06-28 19:06:10
春魔解丼 @vespiking

闇の中。意識が深く、深く沈んでゆく。01の波濤が遠ざかり、底の無い闇に溶けてゆく。耳元で鳴り続ける、波の音。岩のような手触り。ここはジゴクの底か。あの時と同じ、懐かしく、ただ忌まわしい感触。 #KZNPLN

2016-06-28 19:12:18
春魔解丼 @vespiking

わずかばかり残った意識が、閉じかけた瞳を通じて、空の色を脳に焼き付ける。夜のように暗い曇天。生温かい液体が全身を浸している。痛みも何もない。或いは、身体すらもうないのかもしれない。血と油が漏れ出した不愉快な水温と、灰色の空が、今の羽黒のすべてだった。 #KZNPLN

2016-06-28 19:17:00
春魔解丼 @vespiking

時折、低く深い爆発音が聞こえる。おおかた、付近で海戦でもあったのだろう。恐らく岩礁に身を横たえる羽黒にとって、その音は救済にすら感じられる死神の足音だった。長波はうまくやっただろうか。阿賀野は元気だろうか。非連続のソーマト・リコールが、羽黒の頭を駆け巡った。 #KZNPLN

2016-06-28 19:24:11
春魔解丼 @vespiking

12251200。暗黒の空に、光の柱が立ち上った。羽黒の意識はそこでシャットダウンした。 #KZNPLN

2016-06-28 19:26:00
春魔解丼 @vespiking

大本営の軍事衛星ロケット打ち上げ強行から6時間。衛星の展開は急ピッチで進められた。そして今、大東亜の新たな秩序を讃えた祝砲が、暗黒の空より打ち下ろされた。「元帥閣下、報告致します。軍事衛星ヤルダバオート、主砲着弾確認。着弾点の誤差、128m。破壊半径、1km」 #KZNPLN

2016-06-28 19:34:39
春魔解丼 @vespiking

「素晴らしい!よくやったマックス・シュルツ中将!」不気味な白肌の女は拍手喝采でもって、これを寿いだ。「偉大なる前身だ。勅命はついぞ果たされる……新造敵対者"デミウルゴス"は起動したッ!プロジェクト・サタンはこれをもって、最終段階に入る!大東亜に、偉大なる平和を!」 #KZNPLN

2016-06-28 19:40:05
春魔解丼 @vespiking

「旗艦大淀の野望を阻止し、大東亜に真なる平和をもたらせ」大日本帝国元帥、あきつ丸は己に刻まれた勅命を復唱した。偉大なるエンペラーより賜った、彼女を支える唯一絶対の目的を。「絶対の平和を!すべての闘争を無に還すのだ!八百万の戦争敗北者らと、敗残兵たる我が帝国が!」 #KZNPLN

2016-06-28 19:45:52
春魔解丼 @vespiking

聖夜の午後。帝国全土のニュース番組が、センセーショナルな一大スクープで差し替えられた。『臨時ニュースドスエ。本日正午、大日本帝国軍は新兵器のレーザー衛星で、オミナント警備社を砲撃。同社は帝国に対し大規模テロ行為を企てており、この先制攻撃によって未然に……』 #KZNPLN

2016-06-28 19:51:14
春魔解丼 @vespiking

「やだ、コワイ……」衣笠は思わずテレビを切った。何か、とてもおぞましいものを見せられている気分になったからだ。平和。安全。テレビからしきりに告げられる文句は、実際、あの日から彼女が切に願い続けたものだったはずだ。それなのに。 #KZNPLN

2016-06-28 19:59:22
春魔解丼 @vespiking

センセイ不在のハッカー・ドージョーを守護するヨージンボーは、ドージョーを一望した。門下生らは不安を振り払うように、タイピングに集中している。そして、センセイの遺影を見つめた。「朝潮=サン……いつになったら日本、平和になるのかな……」 #KZNPLN

2016-06-28 20:04:43
春魔解丼 @vespiking

……揺りかごめいた心地良い揺れが、闇に溶けた意識を優しく抱いた。生温かい岩と水の感触はもうなく、確かに、命の温もりがキモノ布の柔らかな手触りを介して伝わってきた。どれだけ時間が経過しただろう。ほとんど開かない瞼の上から、斜陽が注いだ。「アバッ……こ、こは……?」 #KZNPLN

2016-06-28 20:33:04
春魔解丼 @vespiking

「……!気がつきましたか!?」甲高い、だが優しさのある声が、温もりのほうから聞こえた。「ア……バ……ゴボッ」何かを問おうとした羽黒の口から、黒ずんだ血が溢れた。「ああ!無理に喋っちゃダメです!大丈夫。絶対助かります!だから安静に、気をしっかり持って!」 #KZNPLN

2016-06-28 20:35:42
春魔解丼 @vespiking

羽黒の意識が、だんだんと闇から戻ってきた。それにともない、全身の感覚も戻ってくる。身体は動かない。瞼も開かない。だが、全身の傷に急拵えのダメコンが施されているのはわかった。目が開かないのもそのせいか。「もうすぐ陸につきます。そうしたら、バケツもあります!」 #KZNPLN

2016-06-28 20:38:00
春魔解丼 @vespiking

「……ナン、デ……?」バケツ。彼女は確かにそう言った。バケツとは帝国軍において用いられる、高速修復材の隠語だ。羽黒は率直な疑問を口から絞り出した。「……私、深海……」今の自分は重巡ネ級だ。帝国にはおいそれと入国できぬ外見である。打ち捨てられて然るべき存在だ。 #KZNPLN

2016-06-28 20:42:44
春魔解丼 @vespiking

「……何言ってるんですか!そんなの、オカミの事情です。最前線の負傷者に、艦種も何もありません!私達が戦ってるのは、テロを起こす深海棲艦達です。今の貴女が、テロなんて起こせるわけないじゃあないですか。元テロ犯なら、尚更治して聴取しないと!」甲高い声は快活に答えた。 #KZNPLN

2016-06-28 20:45:57
春魔解丼 @vespiking

「私、もう目の前で誰かが沈んでいくの、嫌なんです。だって、そんなのおかしいじゃないですか。誰も彼もを殺していけば、確かにいつかは平和になりますけど、そんなの、よくないにきまってます。……たとえ敵だって、殺さなくてよかったって、そう思える平和な世界にしたいんです」 #KZNPLN

2016-06-28 20:52:38
春魔解丼 @vespiking

揺りかごめいた揺れが、ズシリと芯に響く衝撃に変わった。「……さあ、陸地です!ネ級=サン、もうすぐ前線基地に着きますからね!」それからしばらく、声の主は力強く羽黒を励まし続けた。そうして足音が砂浜からコンクリートになり、羽黒は寝台にごろりと寝かされた。 #KZNPLN

2016-06-28 20:53:57
春魔解丼 @vespiking

壁を隔てて、どこかと通信をする声が漏れ聞こえた。「……シモシ、ハシラジマ・ピ……へ伝達。ペナン前線基……風です。ハイ、重傷の重巡ネ……修復材の許可……ハイ!司令官、ありがとうございます!やったあ!ヨカッタ!」トコトコと軽快な足音が、近付いてきた。 #KZNPLN

2016-06-28 21:04:05
春魔解丼 @vespiking

「ネ級=サン!私達の本部、ハシラジマ・ピラーのドックで、貴女を本格的に修復してくださる許可が下りました!取り急ぎバケツで怪我を治します。その後、連絡船で運んでくれるそうです!」ハシラジマ・ピラー。呉鎮守府直属、各地の前線基地を統括する大型泊地だ。 #KZNPLN

2016-06-28 21:07:09
春魔解丼 @vespiking

ハシラジマは前線基地、帝国外の扱いだ。ゆえに深海棲艦であっても、泊地内に限り、デジマの入国審査を介さず"入国"できる。何たる僥倖か。否。彼女が上官に掛け合ってくれたのだろう。羽黒はもう満足に声も出せなかったが、ただただ、彼女に感謝した。 #KZNPLN

2016-06-28 21:10:45
春魔解丼 @vespiking

「あ!そうだ!」バケツによる応急修繕を受け、全身の損傷箇所に包帯をぐるぐる巻きにされた羽黒の傍らで、甲高い声は何かを思い出したように走り去り、すぐに戻ってきた。「これ、使ってください!」顔の包帯で視認はできぬが、銃器めいた何かが、腰近くにねじ込まれたのを感じた。 #KZNPLN

2016-06-28 21:13:57