『史記』の「烏孫」の発音を復元すると、砂漠の水源「氷河」の輝きを意味した印欧語で、ギリシア語、ラテン語と同系統の言葉だった!?

「烏孫」(あそん)とは、インドヨーロッパ語族のトカラ語派(アールシ語)にみられる「白い」を意味するarkiと同根の言葉で、「アールスン」の音訳でした。日本語「えんじ」色の語源とも。言語学の専門家の考証と中国史からのアプローチが決め手になりました。
54
望之 @motijuki1017

@fushunia @Chetpheng こちらこそツイート興味深く拝見しています。以前「獅子」に関するまとめで烏孫=アールシ説の存在を知りました。トカラ語には「アールソン」に近い語形はあるのでしょうか。Baxter上古音では烏孫 *ʔa sun アースンと再構されるようです。

2016-02-08 17:01:10
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi 藤堂明保の字典だと、孫はsuen(普通話だけsunを併記)と表記されているのですが、このフランス式の表記法がよく分からなくて、困っています。アールソンよりアールスンの方が良いでしょうか?

2016-02-09 01:57:28
望之 @motijuki1017

@fushunia 藤堂式の綴りはよく分からないのですが、この e はシュワー、所謂「曖昧母音」の代わりでしょうか。現在よく参照されているBaxterや鄭張尚芳の再構では、上古音の *-un, *-on という直音から *-uən, *-uan という合口音が出来たと

2016-02-09 02:06:53
望之 @motijuki1017

@fushunia 考えられていて、「孫」の上古音は *sun と再構されることになります。

2016-02-09 02:10:18
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi カタカナでどう表記したらいいか悩みまして、とりあえず「アールソン」にしました。「孫」の発音ですが、音声を再生すると、スンにもソンにも聞こえなくて、ソワン?ソエン?と聞こえてしまいます(^^;

2016-02-09 01:53:13
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi @Chetpheng 昨日ツイートした内容ですが、風間氏の論文に亀茲国王「Ksemarcune」とあり、arcuneは亀茲王家が「白家」であることを示す。arsiの語源は「」が有力で、当時のトカラ語の「白」は、A方言でarki,B方言でarkwi

2016-02-09 01:24:09
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi @Chetpheng (いずれもaは長音です)とありまして、私の考えでは、A方言が出土した焉耆国の国名はarki由来のようです。『穆天子伝』のオルドス近辺「焉居、禺知の平に至る」焉居arkiと推測できます。禺知が月氏と関わる言葉だからです。

2016-02-09 01:33:11
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi @Chetpheng 従来、場所が違うことから甘粛の遊牧勢力・禺氏(月氏)と見ることに疑問もありましたが、焉居も禺知も各地に移動した集団の「よくある名乗り」だと考えれば、解決すると思います。『穆天子伝』は河西回廊を避けて移動するので、

2016-02-09 01:38:56
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi @Chetpheng 吉本道雅氏の指摘のように、『穆天子伝』が趙の使者の移動ルートを示すなら(吉本氏は武霊王の西征と見ますが)、河西回廊を避けて青海省に入っていくのは、秦と河西の勢力の同盟を示唆しますpic.twitter.com/kZruQ3wnvk

2016-02-09 01:48:52
拡大
望之 @motijuki1017

@fushunia ああ、そうでしたか、arjuna, argentum などと同源と考えられるのですね!

2016-02-09 01:50:31
望之 @motijuki1017

@fushunia 大変興味深いお話をありがとうございます。古代の西域史に疎いもので飲み込むのに時間がかかっていますが(^^; 「崑崙」が caelum との同源語の音写だった、とは驚きました。

2016-02-09 02:17:05
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi 林梅村氏が紹介している説です。『流沙の記憶を探る』という日本語訳された本が出ています。きれん山脈の「きれん」について、欧米の学者がcaelumだと主張したことが始まりとのことです。「こんろん」もそうだろうとの林氏の説です。

2016-02-09 02:23:24
望之 @motijuki1017

@fushunia 面白いですね。是非その本を読んでみたいです。そういえば、「」もトカラ語あたりからの借用語で、つまり英語の mead(蜂蜜酒)やサンスクリット語の medhu と同源という話を聞いたことがあります。

2016-02-09 02:37:05
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@HishamWaqwaqi 明代の偽書『今本竹書紀年』を使う部分は読み飛ばさないといけないですが、漢唐時代の西域死語の研究者なので、仕方ないですね。蜜はトカラ語mitだそうで、漢語の剣も「軽呂」と周代の表記例があり、トカラ語kareだとされます。えんじ色もarsiかarkiに

2016-02-09 15:04:18
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@BlogJoseph @HishamWaqwaqi 匈奴が漢に河西回廊の燕支山を奪われて、その地の紅花が取れなくなったという史書の記載があり、「えんじ色」は、燕支にちなんだ染料の名前みたいですが、燕支がarsi、arkiなら、その意味は「白」なので、「えんじ色」面白いですね。

2016-02-09 15:10:13
望之 @motijuki1017

@fushunia 字音の音韻的制約があり、-r や -l は発音位置が近い -t か -n で写すしかなかったのでしょうかねArshak も「安息」ですし。漢字音は時代が下るごとに磨り減ってその分、外来語の精密な音写がし易くなったように思います。

2016-02-09 15:57:40
望之 @motijuki1017

@fushunia @BlogJoseph 燕支・焉耆たしかに音がかなり近いですね。上古漢語にも意外と外来語が隠れているのですね。「白山」が紅の代名詞に、面白いです。

2016-02-09 16:05:53
KANATANI, Joe 金谷 譲 @BlogJoseph

@fushunia こんにちは。@HishamWaqwaqiさんとのやりとり、拝見しております。たいへん興味深いのでRTさせていただきました。たったいまいただいた御教示もふくめて、厚く御礼申し上げます。

2016-02-09 15:13:07
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@BlogJoseph @HishamWaqwaqi いえいえ、こちらこそ金谷さまのツイート拝見させて頂いています。もともと夏殷史に興味があったので、中国史の基礎の部分に西域との関係がもっとあるはずだとの疑問が生まれ、気付いたら印欧語の論文まで読むことになってしまいました(^^;

2016-02-09 15:19:41
望之 @motijuki1017

@BlogJoseph こんにちは、先ほどから私も金谷様と巫俊様のやりとりを興味深く読ませていただいております。

2016-02-09 16:27:11
巫俊(ふしゅん) @fushunia

@BlogJoseph それとは違う話ですが、鬼方の子孫ともされる春秋時代の「長狄」は長人(巨人)だとする伝説があります。始皇帝のときにも甘粛で「長狄」が出現し、始皇帝は金人の巨人像をつくりました。西周時代の遺跡からはコーカソイドの顔を彫った製品が出土していますね。

2016-02-09 15:48:31
切韻音系中古漢語bot @Chetpheng

おっと。實は「烏」の再構上古音なのですが,鄭張先生のは /*q/ /*qaː/ だけですが,Baxter 先生のは /*qˤa/ /*ʔˤa/ ,つまり /*q/ /*ʔ/ の兩方があります。 ……なんだか泥沼ですね。 twitter.com/hishamwaqwaqi/…

2016-02-04 18:51:00
望之 @motijuki1017

『漢書』ではアレクサンドリアが「烏弋山離」と音写されているから、「烏」は漢代には *ʔa だったのか。

2016-02-04 12:00:43
切韻音系中古漢語bot @Chetpheng

中古漢語の影母は,上古に於いては [q] または [ʔ] の2音であったと云ふ說があります。そして「烏」字ですが,これの聲母は上古で [q] の方であった樣です。 twitter.com/s_hskz/status/…

2016-02-03 05:11:52
shs_kz @s_hskz

烏は喉音なんですが、三世紀の倭人の名を記した「戴斯烏越」の「烏」は倭人語のなんの音を表現しようとしたのかについて尋常ではない興味があります。

2016-02-02 14:23:09
切韻音系中古漢語bot @Chetpheng

「烏」の韻母は,これが魚部に屬するために /*a/ の樣であったと謂へます。これらを合はせると,「烏」の上古漢語音は /*qa/ 的な感じあったと推察できるでせう。(一往,しっかりした再構音としては,鄭張先生が /*qaː/ ,Baxter 先生が /*qˤa/ としてゐます。)

2016-02-03 05:19:17
切韻音系中古漢語bot @Chetpheng

さて,日本語の話になりますが,古代日本語に於いて [q] の音素があったと云ふ話は聞いたことがないので,元は別の音であったと謂へるでせう。最も近くて妥當であらう音は [k] なので,結論として「烏」が表したかったのは「カ」の樣な音だったのではないでせうか。

2016-02-03 05:27:30