佐藤竜雄監督「他人事だと思っていても、いつか自分の身に降りかかる」

15年前の地下鉄サリン事件と初監督作品「飛べ!イサミ」にまつわる佐藤監督の回想録。 ちなみにつぶやきで触れられている問題の回は第6話「RX95の秘密」。毒ガスを扱った話のため一旦延期になり、後日37話として放送されました。
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佐藤竜雄 @seitenhyohyo

ちょうど15年前の今頃、オレは代々木にあるタックへ行こうと地下鉄へ。しかし、地下鉄には乗る事が出来なかった。新高円寺駅には封鎖のテープが引かれ、路上には数人の人がうずくまって救急車を待っていました。何が何だかわからずオレはJRへ。スタジオに着き、オレは事の真意をニュースで知った。

2010-03-20 11:16:01
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

人が大勢集まるところに毒ガスをまく。あまりに酷い事件だった。ひょっとしたら自分も巻き込まれていたかもしれないと思うと震えが来た。しかしその一方で我が身の幸運に感謝した。それからまもなく、放送局から驚きの一報が来る事になる。

2010-03-20 11:20:22
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

翌日の番組のアフレコを中止する、というのだ。その話数は秘密兵器の入った(とされる)カプセルが隠されたロボットのオモチャを取り合うという、他愛のないモノだった。しかし、その秘密兵器が問題だった。兵器とは、毒ガスだった。今では笑い話だが、当時は笑いごとではなかった。番組がオチるかもと

2010-03-20 11:25:19
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

最悪の場合、番組は打ち切りになるかもしれない。そんな悲観的な意見もあった。テレビシリーズ初監督だったオレは混乱した。「子供番組なのに?」「何も悪い事をしていないのに?」取りあえず一部セリフを変えて収録はする事になったが、結局当面の放映は見送られた。

2010-03-20 11:29:06
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

この辺りの話は結構繰り返して話してるし語られてるので詳細は省略。ただ、その時思ったのは「自分は抵触している『ヤバイ』ものは作ってないから安心」とか「他人事だと思っていても、いつか自分の身に降りかかる」15年前の事件とは離れてしまったけれど、今回の条例改正に際してあの頃を思い出す

2010-03-20 11:33:36
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

飛べ!イサミのあとナデシコを引き受けた際、「魂を売り渡した」とか「あっち側の人間になっちゃうんだ」とか色々言われた。当時はまる子から始まって、サトウは人殺しやエロのない健全な路線をこのまま行くのだろうと周りも思っていたから。だけど、そのガスの事件以来、オレは思ったのです。

2010-03-20 11:40:16
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

健全なアニメ、良いアニメと僕らが思って作っていたとしても、「それはダメだ!」「俗悪だ」というレッテルはいつ何時やって来るかわからない。そして安全な「こちら側」にいて「あっち側」を金儲けだ俗悪だと揶揄するのは何かイヤだなと。だから僕はナデシコを引き受けた。後悔は無かった。

2010-03-20 11:45:28
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

実はそのガス事件には後日談、というか更なる事態がイサミを襲った。もう忘れられかけているが、サブリミナル映像挿入事件だ。アクションシーンなどで一瞬白コマや黒コマを入れる代わりに遊びの絵を入れるというアレ。アレに超絶な方の絵を入れて大問題になったという。

2010-03-20 11:53:26
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

イサミも御多分に漏れず「一コマ遊び」はよくやっていた。アニメーターのお遊びだし、問題ないだろうと。しかし「内容に関わらず今後一コマ絵を見つけたら、即刻番組を打ち切りにします」ときっぱりと言われた。今では笑い話だが、当時は「何でこう、次々と」と途方に暮れた。

2010-03-20 11:58:31
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

政治的な話は苦手、とかオレには関係ないと思っている人もいるかもしれないが、モノを作ったり表現している以上、他人事では実はない。そう考えれば初のテレビシリーズ監督で一年間、そんなこんな経験が出来たのは良かったのかもしれない。

2010-03-20 12:05:26
佐藤竜雄 @seitenhyohyo

一番なのは、論より証拠で作品で皆を納得させる事。それはわかってる。だから悪戦苦闘の日々。

2010-03-20 12:08:24