「フー・クゥド・イート・ソーリー?」

秋だ!北の海だ!秋刀魚漁だ! マグロもあるよ!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

加古は涎を拭いながら、左右に頭を巡らせる。「エッ、何?敵襲?敵襲なの?」「ほら加古!寝てないでドックへダッシュ!秋刀魚漁が始まるって伝えて!」「秋刀魚ぁ…?ああ、今年ももうそんな時期か。あいよー、じゃあひとっ走りしてきますわ」加古は敬礼し、慌しく退出した。 24

2016-12-02 22:17:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「俺達も行くぞ。艤装の準備をしとけ」「了解」「了解だ」「了解したぜ」3人の艦娘はリカルドと神山に対して敬礼し、加古の後を追うように指令室から退出した。リカルドもそれに続かんとする。「あ、ちょっと待って」その背を神山が呼び止めた。「何だ?」「実はちょっとお願いしたいことが…」 25

2016-12-02 22:21:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「お願い?深海棲艦の討伐か?」「あー、ここは平和だからそれはまだいいかな」「平和、ねぇ」リカルドの脳裏に、哄笑する魔人の姿が過る。リカルドは眉を顰め、魔人の笑い声をニューロンから追い払った。「えっとですね。今回お願いしたいのはある艦娘の捜索でしてね」「捜索?」 26

2016-12-02 22:25:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

神山は画材の山から一枚の書類を取り出した。「実は昨日の深夜哨戒から戻ってこない子がいてさ…この子なんだけど」神山が手渡した書類を、リカルドは受け取る。書類には「吹雪型10番艦・浦波」と名と詳細な経歴が記され、写真が貼られていた。「男みてぇな奴だな」リカルドはそう呟いた。 27

2016-12-02 22:31:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そう!男の娘みたいでカワイイでしょ!」突如、神山は豹変したかのように捲し立てる。「まさかこの世にるなかを女の子にしたみたいな子がいるなんてこの絵師の神山の目をもってしても見抜けなかったよ!いやぁ、生えてないのが残念だなァ!一昨日着せたるなコスにあってたなぁグヘヘヘヘ」 28

2016-12-02 22:34:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」リカルドはチョップで軽く神山の頭を叩いた。「ンアーッ!?」唐突な激痛に悶え、神山は頭を抱えてしゃがみ込んだ。「で、こいつを探して来ればいいんだな?」リカルドは幽かに青筋をひくつかせて問うた。「は、はい…お願いします」「仕事のついでだ」 29

2016-12-02 22:39:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「取り敢えずちゃんと探してはやる。生死は保証せんがな…そろそろ行くか。失礼した」リカルドは端的にそう告げると、荒々しい足取りで指令室から退出した。神山は一人残された指令室で頭を擦りながら立ち上がり、画用紙と画材を手にした。「いたたた…叩くなんて怖い人だな…」 30

2016-12-02 22:44:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

神山は魔法めいて画材を代わる代わる取り換えて、画用紙を彩る。彼女は一切画用紙を見ていない。「るなかの素晴らしさは無形文化財級だって言うのに…少しは理解を示してくれてもいいような………お?」神山は完成させた画用紙の絵を見て首を捻った。 31

2016-12-02 22:48:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

画用紙には、奇妙な絵が描かれていた。絶壁の元に筋肉質な黄金の像が立ち、その周囲を無数の人影が取り囲んでいた。人影は白い者、黒い者、そして色鮮やかな者に分かれていた。人影は皆一様に崖の上に立つ緑色の光…否、炎を見上げていた。「何この絵?訳分かんない」神山は首を捻る。 32

2016-12-02 22:53:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

神山ミシロは常人ではない。彼女は絵画を通して未来を予知するピクトマンサーである。もっとも、この事実を知る者は非常に少ない。その神山をして、この絵はよく分からなかった。「悪いことが起きないといいんだけど…」クワバラクワバラと厄除けのチャントを呟いて、画用紙は机の上に置かれた。 33

2016-12-02 22:57:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「さあ行くぞみんな」そのころ、磯風は浮足立って皆を先導していた。「おいおい」天龍はその後姿を見て苦笑する。「秋刀魚は逃げねぇよ」「だが脂の乗った秋刀魚は逃げるかもしれないだろう?」磯風は頬を膨らませて抗議した。「今年こそ、司令に旨い秋刀魚を喰わせて、アッと言わせてやるんだ」 34

2016-12-02 23:02:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「おお、それは楽しみだな」天龍は獰猛に笑う。「俺もお零れに預かりたいね」「………やめておいた方がよろしいかと」吹雪が微かに蒼褪めながら呟いた。「吹雪?なんか言ったかお前」「……いえ、特に何も………?」ふと、吹雪は立ち止まり、振り返った。強烈な殺気を感じたからだ。 35

2016-12-02 23:05:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、振り向いた先には誰も居なかった。「……今のは?」「吹雪ー?置いてくぞー?」先に進んだ天龍の声が廊下に響いた。「あっ、ハイ!今行きます!」吹雪は慌てて天龍達の後を追った。そのタタミ20枚後方、人気のない資料室の中。「ふふ…ふふふふふ…」一人の女が、扉に凭れて笑っていた。 36

2016-12-02 23:09:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その姿は長い銀の三つ編み。豊満なバストを強調するビキニめいた緑と白の艦娘装束。知る人ぞ知るその姿は、雲龍型1番艦艦娘・雲龍のそれだ。だが、その顔は掴み処のない泰然とした一般的な雲龍の表情ではない。獰猛な、闘争に渇望した狂獣のそれであった。 37

2016-12-02 23:12:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あれが…」雲龍は己を抱きしめるように己の腕を交差させて上腕を掴む。その体は震えていた。恐怖でなく、興奮で。「深海棲艦殺しの死神…!こんなところで会えるたぁ…!」その雰囲気が一気に豹変する。女のそれから、男のそれへと。「詰まらねぇ任務かと思ったけどよぉ…僥倖たぁこの事か!」 38

2016-12-02 23:14:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ふはは!ふはははは!」豹変した雲龍は獣めいて高笑う。その目はギラギラした闘争心で燃えていた。そして雲龍は、自分に言い聞かせるように呟いた「ようやく会えたぜ…!あんたとは、一度打ち合いたかったんだ。この大辻照海はよぉ!ははは!はははははは!」 39

2016-12-02 23:19:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フー・クゥド・イート・ソーリー?」#1 おわり #2 へ続く

2016-12-02 23:19:33

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フー・クゥド・イート・ソーリー?」#2

2016-12-11 16:01:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」幌筵泊地出撃ドックの片隅で、吹雪は踊るようにカラテ演武を待っていた。「イヤーッ!イヤーッ!」凍える北の空気の中で、流れるカラテが空を切り裂く。その右手には黒鉄の籠手。彼女に与えられた専用AGP艤装・フネクダキ。 1

2016-12-11 16:02:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

二度の試作を経てようやく完成したそれを、吹雪は体に染み込ませる様に振るう。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」呼吸にカラテを乗せる。血にカラテを流す。皮膚を通して、身につけたものにカラテを通し、身の一部にする。冷たい黒鉄に、カラテを染み込ませ、熱を含ませる。皮膚との合一を図る。 2

2016-12-11 16:02:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

黒鉄に熱が移る。吹雪は己の指先と鋭い爪を備えた籠手の指先の一致を認識した。カラテが通る。フネクダキを己と認識する。吹雪は目の前に置かれた木人人形を見た。「イヤーッ!」吹雪はチョップを縦に振るった。KRAAASH!木人人形が、正中線から縦に引き裂かれる。 3

2016-12-11 16:04:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

バキバキと乾いた悲鳴を上げて、木人人形は地に倒れ伏す。「スゥーッ…ハァーッ…」吹雪は調息し、身に着けた感覚を忘れないように己に刻み付ける。パチパチパチ…ふと、背後から拍手が聞こえた。吹雪は調息を止め、振り返る。そこには、茶色のサイドテールに、白と焦げ茶のセーラ服の艦娘の姿。 4

2016-12-11 16:08:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

実際懐かしい姿であった。吹雪は彼女を知っている。その分かち難い二つのソウルの在り様を知っていた。吹雪は先んじてアイサツした。「ドーモ、艦娘・吹雪です。ゴブサタシテオリマス、綾香=サン」「お久しぶりですね」彼女は笑ってアイサツを返した。「ドーモ、綾波型駆逐艦1番艦・綾波です」 5

2016-12-11 16:08:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「綾波ー、何してんの……げぇ、死神!?」綾波の背後から、呻き声が響く。綾波は振り返る。そこには豊満なバストを強調する長良型艦娘装束に身を包んだ深海色のツインテールの艦娘。そしてそれに付き従う銀髪の艦娘。共に、綾波と同じく見覚えのある艦娘達であった。 6

2016-12-11 16:22:09
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