オウガ・ザ・コールドスティール #4
「僕は……僕はこんな事になるなんて知らなかったのです」マノキノは己の言葉の空虚を噛みしめる。「僕はただ、貴方にオムラの技術指導員として就任していただいて……僕なりに貴方へ恩を返そうと……それがこんな事になってしまって……まさかこんな……この町が……」
2011-03-25 17:13:52マノキノの目に涙が滲んだ。「ごめんなさい……父さん……僕はただ、僕の技術を僕なりにネオサイタマに役立てたかっただけなんです……どこでこんな事になったのか、わからないんです……」「馬鹿もんが」サブロが叱責した。「馬鹿もんが。……お前の馬鹿はワシの遺伝だな」「え……」
2011-03-25 17:39:05サブロは少し笑ったような顔をした。「オヌシは若い。いくらでもやり直しが効く。間違えれば、正せばよい」「父さん……」マノキノは涙をぬぐった。「なにしてるんですか!」後ろで急かす武装サラリマンを睨みつけて黙らせ、 マノキノはモータードクロの背部カバーを操作した。
2011-03-25 17:42:13背部カバーの下から引き出されたのは、実体キーボードである。赤いスキャンレーザーがマノキノの社章インプラントを読み取る。最新式のロック機構なのだ。「アドミニストレーター権限を確認」マイコ音声が告げた。マノキノは 素早く実体キーボードをタイピングした。
2011-03-25 17:46:09「アドミニストレーター=サンからの戦闘を中止命令。ヨロコンデー」間の抜けた機械音声が応答し、モータードクロの全関節が蒸気を吹き上げた。「え?」「何をした!」「ちょっとあなた!」武装サラリマン達が口々に叫ぶ。マノキノは力なく笑い、サブロのもとへ歩み寄ると、肩を貸した。
2011-03-25 17:54:37「父さん……僕は未熟です……」マノキノは呟いた。サブロは目を伏せた。……と、その時だ。ビガー、ガー!不気味なアラーム音が、戦闘停止を受け入れたモータードクロの頭部から鳴り響く!「何だ?」「イヤーッ!」「危ない!アイエエエー!」
2011-03-25 18:59:19マノキノはとっさにサブロを突き飛ばした。地面へ投げ倒され老人は苦しげに呻いた。マノキノは?おお、なんたることか!その背中はモータードクロのカタナの不意打ち攻撃を受けて斜めにざっくりと裂け、鮮血を噴き上げる!ナムアミダブツ!
2011-03-25 19:10:40「……と、このように、何らかの造反があったとしても、遠隔操作IRC解除キーによって命令の再設定、再遂行が可能というわけだ」ラオモト・カンは卓上の携帯型ボタン装置を出席者に示して見せた。たった今彼が押したウルシ塗りのボタン装置を。そして冷酷にスクリーンを見やり、「さあ、試験再開だ」
2011-03-25 19:24:25スクリーンに映るモータードクロが七つの武器(ジュッテは投げてしまった)を構え、戦闘姿勢を取る。「ドーモ、モータードクロ、です。私は偶然ここへ来て、戦って、います。オムラは無関係」起き上がろうとする老人へ無慈悲にサスマタを振り上げる。「ん?」「なんだ?」出席者がざわついた。
2011-03-25 19:33:06スクリーンの映像が揺れた。画面隅の武装サラリマンの頭上になにか影めいたものが降って来て、跳ねたようだった。その影は近くのもう一人の武装サラリマンの頭めがけて飛んだ。そして、また跳ねた。「何だ?」最初の武装サラリマンの頭は?次の武装サラリマンの頭もだ。「頭が?無い?」
2011-03-25 19:41:16映像が激しく揺れた。カメラが落ちたのか、視界は地面に真っ直ぐに突進し、砂嵐が走る。「何だ?」「何です?」「トラブルですか?」砂嵐。そしてスパーク。ブツン…………
2011-03-25 19:43:02ゴウランガ!三人の武装サラリマンは全員絶命した!三人の頭部は真上からの恐るべき打撃を受け、押し潰されて肩の間にいびつにめり込んでいた!「イヤーッ!」飛び石めいた連続ストンピングを終えたニンジャスレイヤーはそのまま空中で六回転し、モータードクロへ飛び蹴りを繰り出した。
2011-03-25 19:52:25「イヤーッ!」サスマタの柄がそれを受け、 ツルギが反撃する。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは柄を蹴って飛び離れることで反撃を回避!空中で八回転し、サブロを庇うように着地した。そしてモータードクロへ向かって力強くオジギした。「ドーモ、はじめましてニンジャスレイヤーです」
2011-03-25 19:58:08「ピガッ!」モータードクロはニンジャスレイヤーを覗き込んだ。「ニンジャソウル検出。あなたはニンジャです」顔面が変形し、メンポめいたマスクが展開した。おお、なんたる形相!あらわれたのは憤怒の木彫り面だ!「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン!モータードクロ、です!ゼンメツだ!」
2011-03-25 20:58:15「ニンジャソウル?機械の分際で」ニンジャスレイヤーはジュー・ジツの構えを取る。視界の端に、背中を斬られて倒れた若いサラリマンが映る。あのときの若者だ。血溜まりが広がって行く。致命傷であろう。ニンジャスレイヤーは無感情に言い放った。「……外道め。ネジクギ一つまで分解してくれる」
2011-03-25 21:29:04