近代食文化研究会さんによる、チキンラーメンが語らないインスタントラーメンの黎明史

119
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

この欠点を克服し、縮れた乾麺(屈曲麺)を生産できる製麺機械を発明したのが、村田良雄です。 村田はさらに、それまで別工程であった製麺と加熱の工程を一つの機械で連続して行えるようにし、この2つの特許を昭和27年に取得します。 そして昭和28年に縮れた乾麺「中華そば」を発売します。 pic.twitter.com/TDd07KgeZb

2019-02-04 03:18:10
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

村田製麺所は会社名を都一とかえ、現在も「中華そば」を販売しています。 bit.ly/2DQGYY1 この見慣れた、縮れた麺を四角に折りたたんだインスタントラーメンは、村田良雄の発明以前には存在しなかったのです。

2019-02-04 03:18:11
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

この発明がいかに重要かは言うまでもないでしょう。 日清食品の出前一丁も、サッポロ一番も、ほとんどのインスタントラーメンは、この村田良雄の発明に基づいて作られています。

2019-02-04 03:18:11

お湯を入れるだけで完成する味付け麺の「発明」

近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

さて、村田良雄は屈曲面とは別の発明も行っています。 お湯を入れるだけで完成する、チキンラーメンタイプの味付け麺の発明です。

2019-02-04 03:18:12
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

安藤百福の推薦文つきの「即席麺と特許」によると、チキンラーメンと同じ味付け麺を湯で戻して食べる即席麺は、チキンラーメン発売より前、第二次世界大戦中に既に存在していたそうです。 その発明者は、現在のインスタントラーメンの基礎である屈曲麺を発明した村田良雄でした。 pic.twitter.com/xxV0GnnqMW

2019-02-05 03:01:30
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

”更に同二十六年には味付乾麺の製法として麺を蒸熱等によって糊化し、その外面に栄養物を含む濃縮調味液を塗布した乾麺の実用新案を取得している” 栄養物を含む濃縮調味液塗布した、つまりチキンラーメンのような味付け麺です。 pic.twitter.com/ptBwGyTCy6

2019-02-05 03:01:31
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

さて、村田良雄が味付き乾燥麺の実用新案を取得したのは昭和26年ですが、それを発案、実用化したのは戦時中のことでした。 というのも、「即席麺と特許」に次の一文があるからです。 ”その一部の権利に基いて製造された麺は戦場に於ける兵士の簡便な携帯食糧として貢献” pic.twitter.com/Qw6ZxyRoUW

2019-02-05 03:01:32
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

つまり、大戦中にチキンラーメンタイプの味付け乾燥麺が存在し、兵士に供給されたというのです。 インスタントラーメンを、何らかの方法で簡易に湯戻し味付けができる中華乾燥麺と定義するならば、日本初のインスタントラーメンは、戦争中に開発された兵士向けの携帯食であったということとなります

2019-02-05 03:01:32
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

これはラーメン史において非常に重要な情報ですので、村田良雄が設立した都一に事実関係を問い合わせました。 お答えいただいたのは、当時社長であった、村田良雄の孫にあたる方でした。 お忙しいところありがとうございました。

2019-02-05 03:01:33
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

しかし残念ながらそのお答えは「味付け麺を作ったことはない」というものでした。 ひょっとすると村田良雄は軍の依頼で開発だけに携わり、製造は軍が行っていたのかもしれません。 あるいは、製造の記録あるいは記憶が、戦後の混乱の中で失われてしまったのかもしれません。

2019-02-05 03:01:33
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

安藤百福の発明話は嘘ですが、大和通商の陳栄泰は百福のような嘘はつかず、鶏糸麺のルーツは台湾の雞絲麵にあると公言していたようです(現在、裏とり中です)。 ここで野嶋さんの雞絲麵の記事を再度確認してみます。 bit.ly/2UuOkG6

2019-02-05 03:01:33
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

”極細の麺を揚げ、麺に絡めるスープに鶏のダシを使ったので、「雞絲麵」と名付けて売り始めた。まさに「チキンラーメン」である。” ”違う点は、揚げた後に麺に粉をまぶして味をつけたところだ。チキンラーメンは揚げる前に麺に味付けをしている。”

2019-02-05 03:01:34
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

大和通商の鶏糸麺=チキンラーメンのルーツである台湾の雞絲麵にも、味はついていました。 安藤百福が村田良雄の味付け麺を知らなかった可能性はありますが、まさか故郷台湾の、鶏糸麺と同じ名前の雞絲麵が味付け麺であったことを知らないはずはありません。

2019-02-05 03:01:34
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

現在のインスタントラーメンの基礎を作ったのは、台湾の名もなき人たちであり、また村田良雄のような多くの日本人たちなのです。 安藤百福はその中の一人に過ぎません。

2019-02-05 03:01:34
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

そしてそこに、香港もつけ加えたいと思います。 チキンラーメンのルーツとして、もう一箇所、香港が絡んでいる可能性があるのです。 明日に続きます。

2019-02-05 03:01:35

香港の旅行麺と直木賞作家・邱永漢

近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

直木賞作家であると同時に実業家でもあり、「お金儲けの神様」と呼ばれた邱永漢という人がいます。 安藤百福と同じく台湾出身、しかも邱永漢も安藤百福と同じように、作家家業のかたわらインスタントラーメンを開発していました。 pic.twitter.com/h8bCZJmSWd

2019-02-06 03:09:21
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

邱永漢は昭和29年から雑誌「あまカラ」に、食在廣州という連載を持っていました。 その5回目、昭和30年5月号において、邱永漢は広州の麺事情について述べています。 pic.twitter.com/DlSn9Wndhz

2019-02-06 03:09:21
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

”九龍にある百吉という麺家は(中略)普通の干麺から茶碗に入れてお湯をさしただけですぐ即席が出來る旅行麺に至るまである。” ”この旅行麺を眞似たものが最近東京のデパートにも現はれたやうであるが、味の点では到底香港の敵でないから、私達は毎月香港から送つてもらってゐる” pic.twitter.com/Bu3NpYosE3

2019-02-06 03:09:22
拡大
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

”お湯をさしただけですぐ即席が出來る”ということは、香港/広州の旅行麺は、チキンラーメンのような味付きのインスタントラーメンだったようです。 しかも邱永漢によると、”この旅行麺を眞似たものが最近東京のデパートにも現はれた”そうです。 最近というのは、昭和30年のことです。

2019-02-06 03:09:22
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

昨日、日本初の味付きインスタントラーメンは、村田良雄が昭和26年に実用新案をとっており、戦時中に日本軍兵士向けに製造されていたと述べました。 しかし、村田良雄が設立した村田製麺所(現在の都一株式会社)からは、味付きインスタントラーメンは発売されていませんでした。

2019-02-06 03:09:22
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

邱永漢によると、昭和30年には”旅行麺を眞似たものが東京のデパートに現れた”そうですから、日本初の商業ベースのインスタントラーメンはどうやら昭和30年には存在したようです。 大和通商の鶏糸麺が発売される昭和33年より前の話です。

2019-02-06 03:09:22
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

大和通商の鶏糸麺(後のチキンラーメン)は、台湾の雞絲麵を模倣した味付け麺を金網に入れて揚げる麺でした。 台湾出身の邱永漢は、当然のことながらこの雞絲麵を知っていたことでしょう。

2019-02-06 03:09:23
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

しかし、昭和30年に東京のデパートに現れたインスタントラーメンを、邱永漢は香港の旅行麺をまねたものだと判断しています。 すると、日本初の商業用インスタントラーメンは、雞絲麵とは異なる、香港/広州の旅行麺系統のラーメンだった可能性があります。

2019-02-06 03:09:23