南北戦争で南部の奴隷所有者達は奴隷制を守る為に自らも武器を取ったのか?

主に自分が後でじっくり読む用のまとめ。
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

「戦う理由:南北戦争における奴隷所有と従軍」として追加しておいたのだ〜。 ア㊙️イさんのお尻と学ぶ統計学 - Togetter togetter.com/li/1342003

2019-09-23 18:23:29
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

奴隷制の存続を巡って争われたアメリカの南北戦争では、南部の「奴隷州」は連合国として戦うことになるんだけど、果たして奴隷の所有者達は奴隷制を守る為に自らも武器を取ったのか?未だに論争が続くこの問題に大規模なデータ分析で迫った研究が最近出版されたのだ。かなり長いまとめなのだ! (1/27) pic.twitter.com/qTdm9QjFzU

2019-09-23 17:32:07
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

教科書にもよく出てくるリンカーンによる「ゲティスバーグ演説」(1863年)で有名な南北戦争(1861-65年)は、奴隷制と自由貿易の存続を求める南部と、奴隷制の廃止及び保護貿易を求める北部の間で勃発し、50万人以上の戦死者を出した想像を絶する規模の「内戦」だったのだ。 (2/27) pic.twitter.com/zEGAi0hhfM

2019-09-23 17:33:09
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この南北戦争に関して未だに続いている論争の一つが、「この戦争を戦ったのは誰か?」という問題なのだ。南部で奴隷を所有していた人々が実はあまり従軍していなかった可能性を指して、南北戦争は「金持ちの為の貧者の戦争」とまで言われることもあるのだ。 (3/27) pic.twitter.com/X28wL6VZp3

2019-09-23 17:33:57
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

南北戦争中は徴兵制が採用されていて、従軍すればちゃんとある程度の金銭を得ることが出来たのだ。つまり、あまり豊かでない人々には「金の為に」戦うという動機があったと考えられるのだ。じゃあ金持ちの方はどうだったか? (4/27) pic.twitter.com/InmOEv85zy

2019-09-23 17:34:36
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

奴隷を所有しているような(相対的に)金持ちにとっては、従軍することで得られる収入は端金でしかないのだ。しかも徴兵制には金を使った抜け道が沢山あったから、金持ちは従軍するか否かを実質的に「選択」することができたのだ。 (5/27) pic.twitter.com/lJxPHPEwf5

2019-09-23 17:35:09
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

さらに、奴隷を使って農園を経営している金持ちは、従軍する事で本業を疎かにしなければならなかったはずなのだ。つまり、従軍から得られる利益とその機会費用(本業から得られる利益)を考慮すると、金持ちは戦争に参加する動機があまり無いと考えられるのだ。 (6/27) pic.twitter.com/V6NYmjaMie

2019-09-23 17:36:12
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

でもこの南北戦争は何を争って戦われたのか?そう、奴隷制の存続なのだ。もし戦争に負ければ、自分たちの飯のタネになる奴隷を失うかもしれないのだ。こうした「負けた場合の損失」は奴隷を所有しているからこそ生じるものなのだ。 (7/27) pic.twitter.com/t8mxJCg4B3

2019-09-23 17:39:37
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

つまり、奴隷を所有しているような金持ちは、理論的には南北戦争を戦う動機も戦わない動機もあると考えられるのだ。じゃあ一体どちらの考えが実態に即しているのか?これは実証的に決着をつけるしかないのだ!ということでいざ実証なのだ! (8/27) pic.twitter.com/auRq7RWRQy

2019-09-23 17:40:33
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この論文ではいくつか分析を行っていて(全部は紹介できないけど)、一つ目の分析では、南部州における1850年のセンサスのデータと当時の奴隷の所有記録、さらに南軍への従軍記録を、氏名や居住地に基づいてマッチングさせたのだ。うぉぉぉ!!!!! (9/27) pic.twitter.com/2hY57t2lTn

2019-09-23 17:42:42
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

統計分析の結果、南部州では奴隷を所有している人(家計)はそうでない場合と比較して南軍に従軍する確率が高かったことが分かったのだ。 …この分析だけでもホントに十分面白いんだけど、因果推論の観点からはちょっと問題があるのだ。 (10/27) pic.twitter.com/OQwtTy1tN3

2019-09-23 17:45:22
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

というのも、奴隷の所有は外性的な変数ではなく、奴隷の所有と従軍のどちらにも影響を与える要因がある可能性は排除出来ないから、ここに示した関係はまだ厳密には因果関係とは言えないのだ。ランダムに豊かさや奴隷の所有が決まるような「くじ引き」があるのがベストなのだ。 (11/27)

2019-09-23 17:46:06
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

そこでこの研究が行った2つ目の分析が、まさに「くじ引き」を利用したものなのだ。ジョージア州では、ネイティブ・アメリカンのチェロキー族から分捕った土地が市民に分配されていたのだ。しかもくじ引きで!! (12/27) pic.twitter.com/BOhZBxzbji

2019-09-23 17:48:49
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この研究が注目したのは1832年のくじ引きなのだ。ちょうどこの辺りの時期にチェロキー族の土地には金鉱脈があることがわかり、くじ引きに応募する人が殺到したのだ。くじ引きはジョージア州に3年以上居住歴がある18歳以上の家長なら誰でも参加することが出来たのだ。 (13/27) pic.twitter.com/KuVFNncaF1

2019-09-23 17:50:02
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

くじ引きでは「どの土地が割り当てらるか」もランダムに決まったのだ。当選者は一定の手続き料を支払い、土地を貰い受ける権利を得るのだ。ただ、皆がその土地に移り住んだかと言うとそうでもなく、土地の所有権を第三者に売り渡す場合も結構あったみたいなのだ。 (14/27) pic.twitter.com/ymA9IVvt0Y

2019-09-23 17:50:46
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

でも何にしろ、このくじ引きではランダムにある誰かが「豊か」になったと考えられるのだ。そしてもしそうして「偶然」豊かになった人が奴隷を買い、後に南軍に従軍しやすくなっていたとしたら、そこには因果関係があると考えていいのだ。 (15/27)

2019-09-23 17:51:43
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

その関係を検証すべく、この研究では1832年のジョージア州でのくじ引きの応募者のリストと、先の分析で用いた1850年のセンサス、奴隷の所有記録、従軍記録をマッチングさせ、再び統計分析を行ったのだ。ひぇぇ〜〜!! (16/27) pic.twitter.com/tZPL3pj5hV

2019-09-23 17:52:35
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

分析の結果、くじに当たった人はそうでない人と比較して、後に奴隷を所有する確率が高かったことがわかったのだ。その一方で、所有不動産価格はくじに当選したことで上昇した訳ではないのだ。これは、くじで豊かになった人のお金の使い道は奴隷を買うことだった、ということを示唆しているのだ (17/27) pic.twitter.com/4OgjnwTWNH

2019-09-23 17:53:45
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

また、くじに当選した人はそうでない人と比較して、従軍する確率が高かったこともわかったのだ。 ジョージア州を対象としたこれらの分析結果は、「奴隷所有」→「奴隷制を守る為に従軍」という因果関係があることを示唆しているのだ。 (18/27) pic.twitter.com/UWaoZV4K94

2019-09-23 17:54:37
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

ただ、紛争への参加をもう一度理論的に考えてみると、一つ謎が残っているのだ。奴隷の所有者たちは、何も自分が従軍しなくても他の誰かが戦って勝ってくれるのが一番得なはずなのだ。つまり、自分は従軍というコストを支払うのを避け、他人に「タダ乗り」出来たはずなのだ。 (19/27)

2019-09-23 17:56:09
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

筆者たちによれば、このフリーライダー問題を抑制したメカニズムは「社会的圧力」らしいのだ。南軍への従軍者は盛大なパレードで見送られ、連合国に「忠誠」を示すことが社会的に要請される空気があったみたいなのだ。もちろんそうした空気を作り出したのは奴隷制を守りたい金持ちたちなのだ (20/27)

2019-09-23 17:59:17
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

その一方で、南部で奴隷を所有していない人々は合衆国からの独立に反対の人が多かったのだ。そんな反対している人たちにまで社会的プレッシャーをかけて戦争に動員している訳だから、そのプレッシャーをかけてる側の金持ちたちも戦争に参加せざるを得なかったのだ。 (21/27)

2019-09-23 17:59:59
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

一つ目の分析で用いたデータを群(County)レベルに集計し各群の奴隷所有者の平均従軍人数と、非奴隷所有の平均従軍人数の表した図をみると、両者の間には正の相関関係があることがわかるのだ(45°線よりも上側の値が多いから、群レベルで見ても奴隷所有者の方が参戦割合が高い) (22/27) pic.twitter.com/G336FVZuF5

2019-09-23 18:00:38
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この正の相関関係は、社会的圧力があったことを示唆しているのだ。もしコミュニティレベルでの社会的圧力による動員が無ければ、両者はそれぞれ別個に参戦を決めるから無相関の筈だし、奴隷所有者が非奴隷所有者に戦争の負担を押し付けていれば、両者には負の相関がある筈なのだ。 (23/27)

2019-09-23 18:01:37
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

その一方で、奴隷所有者たちが社会的圧力によって非奴隷所有者の動員に常に成功していたかと言うと、そうでもないみたいなのだ。各群の奴隷所有率と非奴隷所有者の従軍割合を州別にみると、かなり違いがあることが分かるのだ。 (24/27)

2019-09-23 18:02:28