ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ #2
「お前、さっきから黙って見てりゃあ、フザケやがって……」「あん?」男の声には背筋も凍るような憤怒の響きがあった。「サーベラスだと?ニンジャだと思って調子に乗ってやがる……ナメやがって……」サーベラスは鼻を鳴らした。「どうした、おい。オレとやりたいってのか?構わんぜ?」
2011-06-03 23:59:36男はどこか様子がおかしい。サーベラスはやや警戒しながら、男の次の行動を伺う。男はブツブツと呟いた。「オレは嫌な思いをしたくないんだ……ただこうしていりゃ、それで十分だ。それだけなんだ。なのに、お前のようなカスが現れる。乱していく。何様だ……ええ……?」
2011-06-04 00:06:28「フン!酔っ払いってのは嫌いだね!」サーベラスは「江戸時代」をカソック男の足元に投げつけた。「おら、逃げてみろよ!爆弾だぜ、それは」「イヤーッ!」カソック男はいきなりその球体を力任せに蹴り飛ばした。
2011-06-04 00:12:17ギュン!球体はサーベラスの左耳の端をかすめてニンジャ頭巾ごと削りとり、そのまま砲弾めいて店外へ真っ直ぐに飛んでいった。そして夜空で爆発!カブーム!花火めいた閃光が曇り空を一瞬、照らし出す!「何!?」サーベラスは店外の空とカソック男を交互に見返した。
2011-06-04 00:14:10「何……何だ、お前は?」「俺はジェノサイド!」カソック男が進み出た。そして肩を怒らせてオジギした。「ドーモ、サーベラス=サン!ナメやがって!俺はジェノサイドだ!ナメやがって!」「ジェノサイド?ソウカイヤの新手のバウンサーか?ダラダラとうるせえ奴だ。かかってきやがれ!」
2011-06-04 00:16:49ガチャリ。カソックの中から無骨な鉄の塊が床へと落下した。バズソーだ。鎖がついている。ドルルルル、ドルルルル、バズソーはジツめいた謎の機構によってひとりでに起動し、刃を回転させ始めた。サーベラスは目を見開いた。なにかまずい!両腕をクロスし開く!「spittttt!」放射される火線!
2011-06-04 00:21:02「イヤーッ!」ジェノサイドが腕を振り上げる。鎖が跳ね、くくりつけられたバズソーが宙を飛んだ。バズソーは可燃性液体を撥ね散らかし、そのままサーベラスの首をめがける!「イヤーッ!」サーベラスはブリッジしてバズソーを回避!「イヤーッ!」反対の腕がもう一本のバズソーを飛ばす!
2011-06-04 00:27:02「イヤーッ!」サーベラスは横に転がって追撃を回避!素早く起き上がりカラテを構える。「ニンジャ!?ソウカイヤか?まあいいや、消してやる!」両腕をクロスし、開く!「Spittttt!」可燃性液体が襲いかかる!ジェノサイドのカソックに炎が振りかかった。僧服はたちまち燃え上がる!
2011-06-04 00:33:36「アイエエエエ!」泥酔者たちが先を争って出口へ殺到する。ジェノサイドのカソックは左肩口が焼け崩れ、荒っぽく包帯を巻きつけた体が露出した。漂う強烈な酒の匂い、微かに交じる腐臭!だがジェノサイドは意に介さず、サーベラスへ突き進む!「俺は!」腕を振り上げる!跳ねるバズソー!チュン!
2011-06-04 00:35:56「グワーッ!?」サーベラスは目を疑った。右腕の第一関節から先が無いのだ!ヨーヨーめいて繰り出されたバズソーが彼の右腕を一発で切断したのだ!「グワーッ!?」「イヤーッ!」さらにもう一撃!バズソーが飛ぶ!しかしサーベラスもニンジャである、右腕を失いつつも冷静にそれをスウェー回避!
2011-06-04 00:38:02「何だ、お前その、お前のその体は!」サーベラスは困惑して叫んだ。ジェノサイドの腐敗した異様な体を見とがめたのだ!「俺はジェノサイド……!」ジェノサイドは回避されたバズソーをそのままブンブンと振り回し、頭上で旋回させる!店内を乱舞するチェーンソー!カウンター上の酒瓶が吹き飛ぶ!
2011-06-04 01:12:20「Spittttt!」サーベラスが可燃液体を吐きかける!鍔広の帽子が燃え上がり、包帯を荒っぽく巻きつけたジェノサイドの顔が明らかになる!「アイエエエ!?」サーベラスは悲鳴を上げた。包帯の隙間からのぞくジェノサイドの顔は腐乱死体のそれだったからだ!
2011-06-04 01:15:09「バラバラにしてやる!お前を!俺はジェノサイドだ!」頭上を旋回するバズソーが横から飛来!サーベラスの胴体を切断にかかる!「ウオオーッ!」サーベラスは必死でそれを回避、切断はまぬがれたものの胸板には真一文字に深々と傷がつき、鮮血が飛び散った!「Spitttt!Spitttt!」
2011-06-04 01:19:21サーベラスは可燃液体を放出しジェノサイドを焼き殺そうとした。だがジェノサイドは可燃液体をカソックで受け、燃え上がったそれを脱ぎ捨てながらワン・インチ距離に殺到した。「イヤーッ!」下から上へバズソーがアッパーカットめいて飛ぶ!チュン!左腕の肩から先が切断!「グワーッ!」
2011-06-04 01:22:59「ザイバツとか言ったなぁ?」サーベラスの目と鼻の先へ、ジェノサイドは己の腐乱した顔を近づける。まぶたのない目が睨み、唇のない歯がむき出しになる!「グワ…グワーッ!」「ソウカイヤ?ザイバツ?知った事じゃねえ!」サーベラスは絶望した。こいつは何なんだ?既に腐敗した顔を焼いて何になる?
2011-06-04 01:28:05「ふ、不測の事態!」サーベラスは奥歯に内蔵されたインカムのスイッチを舌で押し、喚いた。「おかしなニンジャに襲われた。ジェノサイド!ソウカイヤじゃない。死んでいるんだ。死んでいるから殺せない。もうダメだ、俺は死ぬ!」「死ね!」ジェノサイドはサーベラスの首をつかんだ。「アイエエエ!」
2011-06-04 01:31:38「イヤーッ!」ジェノサイドはサーベラスの首を素手で引きちぎりにかかる、ナ、ナムアミダブツ!「アバーッ!グワーッ!アッババババーッ!」なんたる惨たらしい死に様!数分前のサーベラスはこのような己の運命を予測し得ただろうか?ジェノサイドの怒りは一切の容赦なくこのニンジャを滅ぼしたのだ!
2011-06-04 01:37:12鎖つきバズソーを引きずり、カソックも帽子も失ってそのズンビー身体をあらわにしたジェノサイドは路外へ飛び出した。「アイエエエ!」偶然それを目にした酔漢が失禁しつつ倒れ気絶!ドオン!遠方で別の爆発音!ザイバツ!「アイエエエ!」角を曲がってきた別の酔漢がジェノサイドを見て失禁し気絶!
2011-06-04 01:44:30「……!」ジェノサイドは己の身体を忌々しげに見下ろす。そして人気のない路地裏へその身を滑り込ませる。遠方で断続的な爆発音が響き渡る……。
2011-06-04 01:47:47そこから数ブロック東、「全卵かしまし」と書かれたネオン看板の上で片膝をつき、街のあちこちで起こる騒乱を見下ろす少女あり。セーラー服姿の彼女は騒ぎの波及する先を見定めようとするかのように、厳しい表情で夜風に吹かれていた。
2011-06-04 01:57:30あちこちで起こる爆発。少女の瞳が不可思議な桜色に光る。ネオン看板の直下の道路を、爆音と共にドリフトしながら走り抜けていく一台の異様な車両。鏡面加工クロームシルバー車体の武装霊柩車だ。しかし彼女はそれには注意を払わず、立ち上がると、屋根から屋根へ飛び移り、すぐに見えなくなった。
2011-06-04 02:06:58(第二話「キョート殺伐都市」より:「ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ」#2 終わり。 #3へ続く)
2011-06-04 02:07:57