ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
9
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二話「キョート殺伐都市」より:「ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ」#2

2011-06-03 16:22:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ズンズンズンズズポーウ!ズンズンズンズンズズポポーウ! ノイズ混じりのサイバーテクノが不快な環境音となって機動隊員を迎え入れる。真っ白な無機質空間。壁も床も天井も、潔癖性めいた白い強化プラスチックで覆われている。「突入……」「気味が悪いな」警戒を怠らず、小隊が進み出る。

2011-06-03 16:30:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒッ!なんだこりゃ」隊員は小銃で壁ぎわに並べられたアクリル塊を指し示した。透明のキューブの中に輪切りの人体が浮いているのだ。医学的資料というよりは、単に異常な妄想か性的嗜好の産物であることを強く思わせる、眺めていると精神に変調をきたすようなオブジェである。

2011-06-03 16:33:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クリア」「クリア」「奥のカーボンフスマ開きますよ」「お願いします」小隊は小銃を構え、規則性の無い配置で視界を遮る柱の間を確かめていく。「こっちはオフィスだ。誰もいない」「クリア」「……クリア」無数のUNIXパソコン、液晶モニタの数々。すべて電源が落ちている。

2011-06-03 16:37:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「パンチシート、フロッピーディスク、カセットテープの類、全部押収せよ」「ハイ……見当たらないですね」銃口のライトで机の下まで照らしながら、彼らはラボの記録を探す。ラオモトが巨額の資金を投じたリー・アラキのラボには犯罪の証拠がゴマンとあるはずなのだ。

2011-06-03 16:43:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ええ、残念ながらここには何も無いのです」いきなり目の前に現れた研究員に、小隊は一斉に銃を向ける。「ドーモ、ドーモ皆さん、トリダです、ええ」どこから現れたのか?隊長は挙動不審なその研究員をホールドアップさせ、白衣のIDに読み取り機をかざした。「トリダ・チェンイチ=サンか」「ハイ」

2011-06-03 16:51:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

病的な細面のトリダの首筋には水平の傷跡が生々しい。「……何か?」「みりゃわかるだろ君ィ。マッポですよ。操作令状も出てるから」隊長はマキモノを拡げて見せた。トリダは頷き、「ドーゾ、お好きに。引き払うところだったので、あまりお役に立てるものは無いんですよ。リー先生もビッチもいない」

2011-06-03 16:55:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ビッチ?」「アバズレだよ、ア、バ、ズ、レ!わかるでしょ。あのクソ女。あいつ、先生に取り入ってやがるから。私が留守番てわけでして」隊長は隊員と顔を見合わせる。「……えーと、奥にもっと研究施設ありますね。あらためるんで、案内しなさい」「わかりました」トリダはニヤニヤ笑っている。

2011-06-03 16:59:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

隊員を先導しながら、トリダは喋り続けている。「センセイとビッチのシリコン女はね、そのう……たまたヨロシサンの別施設に準備をしにね、行ってまして。まあ、こんなことになっちゃあ、ピラー内のこの出張所はおしまいですよね。だから大急ぎでしたよ私。私はなんでも捜査に協力しますよ」「……」

2011-06-03 17:12:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トリダは防弾ガラスの窓を備えた実験施設のフスマを開いた。「ドーゾ、ここでしょ。先に入りますよ」トリダはスタスタと歩いてゆく。「うお、これは……」隊員が絶句した。

2011-06-03 17:16:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!まるでこれではスクラップ処理場だ。広大な施設内にうず高く堆積する機器類!なにもかもが破壊され、捻じ曲げられて、ところ構わず散乱している。高価なIRC遠心分離器までオシャカだ!機器類に混じって、なんとも意味のわからぬ物……バラバラの木馬やフクスケも破壊され横たわる。

2011-06-03 17:22:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うわあ、なんてヒドイんだぁ」トリダは他人事の様に言った。「データもきっと壊れて読み取れないぞ、センセイに怒られてしまう。どうしよう!」「ウヌ……」機動隊員は呻いた。隊列からデッカーが進み出、惨状を前に溜息を吐いた。「やれやれ。証拠隠滅だあ?テメエあんまりマッポをナメるなよ……」

2011-06-03 17:27:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そりゃあナメますよ!」トリダは真顔で言った。「あんたら、劣等ですもの!」「え?」「ア、アイエエ!」残骸をあらためにかかった隊員たちが何かを見つけて叫んだ。「あったか……ア、アイエエエ!?」隊長も度を失い絶叫!ナムサン!彼らが発見したのは機材とごっちゃに積み上げられた死体の山だ!

2011-06-03 17:31:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだとーッ!?」デッカーも驚愕し叫ぶ。白衣姿の死体の山!これはこのラボの研究員では無いのか!?一体何人が犠牲に!?証拠の隠滅!?あらためて破壊された機材の山々を見やると、ところどころ腕や死体の頭がはみ出ている!コワイ!ここは狂ったモルグだ!「アハハハハハ!」トリダが笑い出す!

2011-06-03 17:35:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここには何にも無いって言ったでしょ?大忙しだったんだ!ぼくは!アハハハハハ!」トリダは仰け反り笑う!「こ……こいつを確保しろーッ!」「イヤーッ!」トリダが長い両腕を伸ばして旋回!「アバッアババババーッ!?」付近に立っていた機動隊員7名は首を刎ねられて瞬時に絶命!ナムアミダブツ!

2011-06-03 17:41:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAM!BLAM!!その場にいる全員がトリダめがけて集中砲火!「アハハハハハ!」トリダは全身に銃弾を受け、血を撒き散らしながら飛び上がる!そして天井へコウモリめいて逆さに直立した!コワイ!「ドーモ、ドーモ、ブルーブラッドとでも呼んでください!」

2011-06-03 17:45:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……アイエエエ」「ニンジャ……?」「これはニンジャか?」「緊急事態!ピラー内ヨロシサン・ラボラトリーフロアでニンジャと遭遇……!」機動隊員が浮き足立つ!「アハハハハハ!」トリダは首筋の銃弾をほじくり出し、「有難くブルーブラッドになって、ぼくは吃音を治したんです!」

2011-06-03 17:48:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAM!BLAM!さらなる銃撃の集中!逆さまのトリダ=ブルーブラッドは身を震わせる!「オオオオ……痛みも無いんですよ、これ!効かないんですよッ!」BLAM!BLAM!「でも白衣は……新調しなきゃいけない……」「アイエエエ!」機動隊員が一人、士気をくじかれて逃走を図る。

2011-06-03 17:59:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ブルーブラッドが腕を突き出すと爪が瞬時に10フィート伸び、逃走を図る機動隊員の後頭部をケンドーヘルムごと貫通した!「アバーッ!」「逃げるのはダメでしょう!ぼくが犯罪者扱いになっちゃう!」ナムサン!狂気!既にこの騒乱が通信で外の本隊に伝わっているのは当然だというのに!

2011-06-03 18:05:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!」機動隊員が一人、ケンドーケン・ブレードを構えて飛び出した。銃が効かぬなら電磁シナイで攻撃というわけだ!ケンドー機動隊はその名の通り、本来ケンドーを最も得意とする戦士である。「オメーン!」最大出力のシナイが火花を散らす。逆さまのブルーブラッドに斬りかかる!

2011-06-03 18:13:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「アバーッ!」ナムサン!やはりダメだ!ケンドーケン・ブレードはブルーブラッドに届かず、伸びた爪がその機動隊員の 脳天を一撃して殺害!逆さまの状態のブルーブラッドを相手にすれば、ケンドー熟練者と言えども間合いが狂ってしまうのだ!

2011-06-03 18:16:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このトコロザワピラーに投入された部隊はニンジャとの戦闘を想定した熟練者で固めている。道中、各小隊は数人のニンジャと戦闘。実際仕留めてもいるのだ。だがこのブルーブラッドはバカバカしいほどの戦闘能力で機動隊を圧倒している。個人の実力が集団を凌駕する……これがニンジャの恐ろしさだ!

2011-06-03 18:57:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」逃走を図った更なる一人にブルーブラッドは後ろから爪を突き刺し、殺害!「だからダメでしょうって逃げたら!まったく劣等だな!」逆さになったまま、ブルーブラッドはほとんど足を動かしてすらいない。機動隊長は覚悟を決めた。「突撃!続け!かかれ!」

2011-06-03 19:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オメーン!」機動隊長がケンドーケン・ブレードで斬りかかる!「イヤーッ!」ブルーブラッドの爪が伸びて隊長の脳天を襲う!「オコテー!」機動隊長は危ういところで爪を弾き、刺突を逸らす!「イヤーッ!」「オコテー!」ゴウランガ!反対の手の爪も見事に防御!

2011-06-03 19:18:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オメーン!オドー!」機動隊長はブルーブラッドの頭を打ちに行くと見せかけ、胸を突きにいった。見事なフェイント攻撃だ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ナムサン!好調もそこまでであった……ブルーブラッドは広げた両手をクロスさせ、ハサミめいて機動隊長の首を切断したのだ。

2011-06-03 19:25:19