ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ #2
ブルーブラッドは胸に確かに機動隊長の刺突を受けていた。しかしそれすらもブルーブラッドに対してダメージとなったのか判然としない。機動隊員達は知るよしも無い……彼、トリダは単なるニンジャではない。死後24時間以上経過した体にアーチニンジャの力を宿し不浄な命を宿した邪悪存在なのだ!
2011-06-03 19:43:04ブルーブラッドは生前のトリダの記憶を完全に有する!これはリー先生にとっても全くの想定外であり、彼を狂喜させた。しかし完全な記憶を有するからといって、それは果たしてトリダなのか?記憶とは自我なのか?なかば哲学的領域にすら踏み込むこの問いに、トリダ自身すら答え得ぬのではないだろうか!
2011-06-03 19:47:07「オ、オメーン!」別の機動隊員が決死の突撃!逆さまのブルーブラッドの頭を打ちに行く!「イヤーッ!」ブルーブラッドの爪が閃く!機動隊員は首を刎ねられ絶命!切断面からスプリンクラーめいて鮮血が噴き出す!
2011-06-03 19:54:19「オツキー!」さらなる機動隊員が決死の突撃!逆さまのブルーブラッドの首筋を打ちに行く!「イヤーッ!」ブルーブラッドの爪が閃く!機動隊員は首を刎ねられ絶命!切断面からスプリンクラーめいて鮮血が噴き出す!
2011-06-03 20:01:41「オコテーー!」さらなる機動隊員が決死の突撃!今度はブルーブラッドの腕を打って攻撃封じの狙いだ!「イヤーッ!」ブルーブラッドの爪が閃く!まるで問題にならず、機動隊員は首を刎ねられ絶命!切断面からスプリンクラーめいて鮮血が噴き出す!
2011-06-03 20:02:45「「「オメーン!オメーン!オメーン!」」」残る機動隊員6人が決死の覚悟で列を為し殺到!「イヤーッ!」逆さのブルーブラッドは爪を水平に構え、コマめいて激しく回転しながら一列の機動隊員を迎え撃つ!
2011-06-03 20:07:01「イヤーッ!」「アバーッ!」首を刎ねる!「アバーッ!」刎ねる!「アバーッ!」刎ねる!「アバーッ!」刎ねる!「アバーッ!」刎ねる!「アバーッ!」刎ねる!ナムアミダブツ!シャンパンめいた鮮血の連続噴火!ブルーブラッドは狂笑し、最後の一人、立ち竦むデッカーの首もそのまま刎ね飛ばした!
2011-06-03 20:09:15「アハハハハ!実際時間が無い!」全ての侵入者を殺害したブルーブラッドは天井を蹴って床に着地した。彼が恐れるのは夜明けである。蘇生後に彼が背負った日光アレルギーというペナルティは極めて深刻、ネオサイタマの雨雲を通した太陽の明かりですら、身体への重篤なダメージとなる!
2011-06-03 20:20:44もはやこのラボに彼が居残る理由は無い。「開けますので」と書かれた壁のスイッチを押すと、壁のシャッターがチャリチャリと音を立てながら開いてゆく。
2011-06-03 20:24:45夜明けは近い!「イヤーッ!」ブルーブラッドはシャッターが開くと窓ガラスを飛び蹴りで破壊、窓枠を蹴って外へ飛び降りる!その際彼は抜け目なく手にしたIRC起爆装置を押す! カブーーム!実験施設はまるごと炎につつまれ、窓から爆風が噴出!全てのデータを完膚なきまでに隠滅!ナムアミダブツ!
2011-06-03 20:32:49トコロザワピラー周囲に植えられた桜並木を蹴りながら無傷で着地、噴き上がる黒煙を一瞥したのち、邪悪なニンジャは稲妻めいた速度で闇に消えて行く。彼以上に邪悪な主のもとへ!
2011-06-03 20:39:29「アバーッ!アッバーッ!」店のバウンサーとおぼしきヤクザが火だるまになりながら吹き飛び、立ち飲みテーブルをなぎ倒して転がった。「やめとけやめとけ!おとなしく死ねよ!抵抗すると苦しいもんだぞ!」悠々と店内に入ってきたニンジャが火だるまヤクザに言い放つ。……そう。ニンジャである。
2011-06-03 22:20:04「アイエエエ!?」「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」「コワイ!」「ゴボボーッ!」明け方を迎えようとする飲み屋の酔漢達は恐怖のあまり容易に失禁し、嘔吐した。それらへ侮蔑的な視線を送りながら朱色のニンジャは手近のオチョコを掴むと中のサケをイッキし、壁に投げつけて割った。
2011-06-03 22:25:44「ドーモ、皆さん。サーベラスです」朱色のニンジャはぞんざいにオジギした。ガスマスク型のメンポであるが、口の部分にはなにやら青い火が灯っており、バーナーめいた機構の存在をほのめかした。「今からこの建物は爆破する。これは実際戦争だから、死んでも恨むなよな」
2011-06-03 22:48:07「アイエエエ!?」「戦争!?戦争ナンデ!?」「コワイ!」「ゴボボーッ!」酔漢達は低下した思考力によって単調な言葉を繰り返す。そして失禁し、嘔吐した。それらへ侮蔑的な視線を送りながら朱色のニンジャは別のオチョコを掴み、やはりメンポの飲食機構でイッキ。壁に投げつけて割った。
2011-06-03 22:52:02「ザッケンナコラー!」火だるまヤクザが生命力を振り絞って起き上がった。「ス、スッゾオラー!」「何だそりゃあ」サーベラスは肩を竦めた。「そのまま死んでおけよ」「ど、どこのヨタモノだテメッコラー!看板どこだコラー!」サーベラスは悠々とストレッチをしながら答える。「ザイバツだよ」
2011-06-03 22:59:19「ザイバツ……?」「まあ、俺も詳しくは知らんが、とにかく戦争だから暴れりゃいいんだよ。お前の『看板』とやらはもうお終いなんだよ、ワカル?ザイバツがいただく、ワカル?」「スッゾオラー!」火だるまヤクザがナックルダスターで殴りかかる!
2011-06-03 23:02:32サーベラスは顔の前で両手をクロスし、そして開く。「Spitttt!」メンポのノズルから可燃性の液体が弧を描いて射出された。ノズルの火が液体に着火、炎の水となってヤクザに降り注ぐ!「グワーッグワアバーッ!」再度燃え上がったヤクザは床をのたうち回り、炭化して死んだ!
2011-06-03 23:09:42「アイエエエ!?」「燃えた!?燃えたナンデ!?」「コワイ!」「ゴボボーッ!」酔漢達は低下した思考力によって単調な言葉を繰り返す。そして失禁し、嘔吐した。それらへ侮蔑的な視線を送りながら朱色のニンジャは別のオチョコを掴み、やはりメンポの飲食機構でイッキ。壁に投げつけて割った。
2011-06-03 23:17:04「ああ!面倒くせえ!」サーベラスはカーボンフロシキから拳大の球体を取り出した。「もうやっちまうぜ!お前らそのまま死んでいいよな!」球体は黒光りしており、表面に冷徹なミンチョ文字で「江戸時代」と書かれている。誰がどう見ても爆弾だ。コワイ!
2011-06-03 23:21:46サーベラスが球体をねじると、球体は少し上下にスライドし、内部の液晶漢字タイマーがあらわになった。「じゃあこの建物をこれで吹っ飛ばしてノルマ達成、ワカル?汚らしいネオサイタマのアホどもには実際飽き飽きなんだよ!」
2011-06-03 23:47:52「おい」サーベラスに呼びかけた声がある。「あん?」サーベラスはそちらを見やった。先ほど火だるまヤクザが最初に倒れこんだ立ち飲みテーブルだ。聖職者が着るようなカソックを着て、鍔広の帽子で顔を隠している。極めて酒臭い息がその歪んだ口から煙めいて立ち昇る。
2011-06-03 23:50:38ナムサン!読者の皆さんは覚えておいでであろうか。彼はこの安酒場でラオモト・カンのPR番組を背景に酒を飲んでいたのだ。その時隣にいたトレンチコートの男は既に退出しておりそこにはいない。このカソックの男はその後も一人、ここで飲み続けていたのである。
2011-06-03 23:52:40見れば、この酒場で前後を保っているのは彼一人だった。他の客はみな泥酔しており、先程から同じ単調な言葉を呟くばかりだ。バーテンはといえば、とうに店外へ駆け去って、カウンターは無人であった。
2011-06-03 23:55:23