パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』感想について、上田早夕里先生によるtweet、リツイートを中心にまとめ。
上田早夕里『華竜の宮』読了。やー面白かった。やっぱりバチガルピ The Windup Girl との共時性があるなあ。まあそのへんはまたあとで。
2010-11-24 08:12:04で上田早夕里『華竜の宮』だけど、読んでてバチガルピ The Windup Girl とずいぶん見える景色が似てるなと思った。この二作に共通してるのは、いま社会の死命を制しているのは「環境」と「食料」、またその両者の肝を握る存在としてのバイオテクノロジである、と描いてるとこ。(続
2010-11-24 23:47:21ただもちろん、土台が似てても扱い方はぜんぜんちがう。端的にいえば『華竜の宮』は「人類の知恵」みたいなものを根っこのとこで信じてる感があるけど、 The Windup Girl はそうじゃない。どちらも社会全体のサバイバルを描いてる部分があるんだけど(続
2010-11-24 23:51:54バチガルピのほうは「外的要因の崩壊とともに決定的に破綻するもの」として社会を捉えてる。建て直しを担うのはほぼ、個人の絶望的な努力だけ。既訳の「第六ポンプ」と『華竜の宮』を比べるとわかりやすいかも。
2010-11-24 23:55:54他のバチガルピ作品では The Gambler と Ship Breaker がかろうじて希望といえそうなものを描いてるけど、それとて救済されるのは個人で、社会はほとんど揺らがない。The Windup Girl では人類がサバイバルするためのある方向が示されて(続
2010-11-25 00:00:54それは『華竜の宮』と一見ひじょーに似てるんだけど、手段も動機も結果として立ち現れる世界もまるでちがうのよな。このへんふまえて『華竜の宮』と The Windup Girl を読み比べると面白いんじゃないかと思いました。まる。
2010-11-25 00:04:49@wishigame ブラッドミュージックまであと1歩って感じでしたねえ。あとタイトル忘れたけどスターリングの短編でハッカーがいたずらでばらまいたウイルスで脊椎動物の知能がみんな上がって大変なことになる話とか。
2010-11-25 20:07:25@AerospaceCadet @jnmoo テロや暴走みたいな80年代的な華々しい展開もありますが、いまはむしろもっと微妙な、それこそバチガルピが描くような社会体制の到来のほうが恐ろしいな、と思いますた。
2010-11-25 22:40:14バチカルピの「ねじまき少女」面白いじゃないか!これは賞を総なめにするのもわかる、忙しいときは読み出しちゃだめだ、途中で置くのがもどかしい。こんなに奥行きのある世界を書ける人だとは、短編読んでたときは気づかなかった。細部はイラッ、カチンとくるとこもあるんだけど。
2011-05-27 21:17:08なんたってキャラクターがみんな魅力ある。ついでに、バチカルピさんにちょっと不満を感じていた「政治的に正しけりゃいいのかよ」という部分をキャラクターの厚みでもって見事カバーしたと思う。いかんともしがたい矛盾を抱えたクールな女隊長、かっけーなあ。しかも、みんな全部は語らないの。
2011-05-27 21:22:24「ねじまき少女」で食い足りないところのひとつは、問題のねじまき娘が「イノセント」のアレの映像でしか浮かんでこないところかも。あの手の人造少女(?)ではリチャード・コールダー「モスキート」の印象が強いなあ。ハイブランドコピー品のにゃんにゃん娘たち。そういやあれも似た話だった。
2011-05-27 21:56:13バチガルピ『ねじまき少女』読了。面白いには面白いけれど、こういう文芸的なソツのなさが売りなの?と拍子抜け。SFだからといって必ずしも斬新である必要はない、という意見には首肯する部分もあるのだけれど、いざそういうものを読んでみるとどこか物足りない
2011-06-01 21:57:01@ohip_up なんだかんだ言いつつ新しさに拘るのは、研究職ゆえの職業病的思考バイアスなのかも、と思ったりもします。論文と小説を同一視するなんて完全にナンセンスだとわかってはいるのですが…
2011-06-03 13:14:25@Koompassia 大変申し訳ないのだけれど、私はエシカルとかいうものには何の興味もないし、それを基準に小説を書いたこともただの一度もないんですよ。ごめんね。なお、『ねじまき少女』はいま読んでる最中なので、(続く)
2011-06-03 17:38:45@Koompassia (続き)最後まで読まないと何とも言えません。でも、他作家さんの作品を読むときにもエシカルとか考えないんで、たぶんそこを軸にした感想は抱かないでしょうね。だって、つまんないもんね。そんなことを基準に小説を読んでも。
2011-06-03 17:39:16『ねじまき少女』の未来では、再び民族間紛争が起きてしまうマレーシアだけど、1969年の衝突以降、政府による民族間の緊張緩和策はかなり成功している、という印象を受ける。計1年半ほど滞在した限りでは、わだかまりこそあれ憎悪のようなものを感じることは全くなかった。
2011-06-04 11:52:26政府は、民族間衝突を避けるため、という名目で検閲を敷いていて、結果、当然のように与党有利な報道になってしまう訳だけれど、意外なことに、野党党首の痛烈な与党批判が一面記事になったりもする。このバランス感覚がどう担保されているのか、不思議。
2011-06-04 11:54:06まぁ、その結果、与党連合(その名も国民戦線)が大敗し、州政府レベルではイスラム原理主義政党に政権奪われて、未婚男女の交際禁止条例が可決、華人男女が逮捕、なんて事件も起こってしまうのだけど。
2011-06-04 11:57:58お前は、なんで検閲なんて擁護してるの、と怒られそうだけど、人口比・信教比があれだけ割れながら、民族の融和を達成している国家なんてほとんどないのだから、現状の絶妙なバランス感覚が維持される以上は、仕方のない策なのでは、と思う。
2011-06-04 12:00:42バチガルピ『ねじまき少女』に関して。長いけれど、SFの人たちの面白いやりとりだと思うのでRTします。「SF」と「道徳や倫理」(エシカル)の問題について。(続く)
2011-06-04 18:46:54