松岡久和先生講演『民法の学び方』

@igakiさんによる松岡久和先生講演『民法の学び方』のtsudaりまとめ
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弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「まずXが権利を取得しているかを考えます。176条というのが日本の民法の基本姿勢で、「物件の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」とあります。不動産の売買契約を結んで履行されれば、引渡しなどをしなくても所有権は移転します。意思主義といわれます」

2010-04-17 17:15:42
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「αが甲地に含まれる場合は、αは乙地や丙地には含まれません。すると、乙地や丙地を譲り受けたYとZはαについて所有権は主張できません。これは暗黙の前提なのですが、権利を承継するためには前者が権利を持っている必要があります。不動産の場合には権利があると信じていても保護されません」

2010-04-17 17:17:57
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「少し勉強が進みますと、こういう場合に94条2項の類推適用というのを出してくる人がいるのですが、94条2項というのは虚偽の外観を信じた人を救うという単純なルールではありません。虚偽の外観を作り出した人がいて、それに責めるべき場合に初めて使えるルールです。」

2010-04-17 17:20:28
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「177条が適用される典型的なケースは、「正当な権利者」が2人以上の人に所有権を譲渡してしまって、その所有権が競合するときには登記が必要というものです。しかし本件の場合Bは無権利者ですから、Bから譲り受けたY・Zは無権利者です。したがって、この場合には177条は使えません。」

2010-04-17 17:24:13
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「177条の第三者とは、「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」のことをいいます。つまり、範囲を絞って無権利者などを排除しているんですね。したがって、問い1ではXは登記なくしてY・Zに対して所有権を主張することができます」

2010-04-17 17:25:52
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「問い2ですが、これはαが甲地に含まれない場合です。これはつまり所有権はBにあるのであってXにはなかったのだから、Xは無権利者ということになりそうです。しかしXが買い受けてからαを10年以上占有してますので、取得時効が成立するかが問題となります」

2010-04-17 17:27:25
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「しかしひとつ問題となります。時効の場合には177条が適用されるのか、という点です。どういう物権変動について177条が使えるのかという点ですね。詳しくは省きます」

2010-04-17 17:28:46
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「この論点に関する判例の準則は5つくらいありますが、本問では2つくらいが問題となります。Yは時効完成前の第三者で取得時効によって権利を失う側ですから、権利変動の当事者です。したがって177条の第三者にあたりません。しかし時効が完成した後となると事情が違う。」

2010-04-17 17:32:53
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「時効完成後に現れたZのような者は、時効による権利変動の当事者ではありません。したがって177条の第三者にあたりますから、時効による所有権の取得を主張するためには登記が必要です。なぜ時効完成の前と後でこんなに結論が変わるのか。この判例の準則は学説からは批判されています。」

2010-04-17 17:34:39
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「また、Zが177条の第三者にあたるとしても、ZはBX間の紛争などを知って買い受けていることから、背信的悪意者にあたるかが問題となります。これは結構微妙です」

2010-04-17 17:36:36
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「法科大学院では知識をつけるだけじゃなくて、今まで見たことがない問題への対応力をつけることが求められています。そのためには、自分の頭でとことん考えてみること。自分の頭で考えるという経験値をどれだけ蓄積できるかにかかっています。」

2010-04-17 17:37:36
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「法科大学院の授業では、先生が言っていることを理解してメモを取ることが必要で、そのためには予習が不可欠です。でも法科大学院は授業が多いので、予習を100%やろうとすると消化不良になるんですね。ですから、予習は8割方にとどめておいて残りの時間は復習に充てた方がいいと思います」

2010-04-17 17:38:58
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「法律学というのは議論の学です。ですから、本を読むだけでは身につきません。先生や友達と議論してください。また、人に教えるというのは非常にいい経験になります。わかってるつもりだったがわかってなかった、ということに気づけます」

2010-04-17 17:40:43
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「講義を録音する人がいますが、無駄が多くてダメだろうと思っています。リアルタイムに自分の脳を通過させて理解する、そのプロセスを日々繰り返すことが大切です。」

2010-04-17 17:41:35
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「最後に。学びて思わざればすなわち罔し、思いて学ばざればすなわち危うし。学んでいても自分の頭で考えないといつまでたってもわかるようにならないし、自分の頭で考えても学ばなければそれは非常に危ういものです」

2010-04-17 17:44:36
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「最後にちょっと崇高なお話しを。なぜ司法(試験)制度改革が行われたか。司法研修所のとあるエピソードを聞いたことがあります。ある研修生は非常に優秀だったのですが「この問題はXでもYでもどっちでも勝たせられますけどどっちにしましょうか」と言った。教官は激怒しました。」

2010-04-17 17:47:06
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「「それがどっちかを考えるのが法律家の仕事だろう。」目の前の問題に対して自分の頭で考えずに、結論だけをとりあえず出すような人にはならないで欲しい。こういう人たちを生み出さないようにというのが、司法試験の改革の理念のひとつです。」

2010-04-17 17:49:14
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「基本書を何にするかという点ですが、共著というのは一般的にお薦めできません。普通は寄せ集めだけになってますので。ただ、ざーっと見渡すのにはエッセンシャル民法がお薦めです。これは共著ですが、2~3年かけて著者間で付きあわせて書いた本です。」

2010-04-17 17:51:45
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

松岡「基本書を読むというのはとても大事。読まなければ書けるようにはなりません。基本書というのは「てにをは」まで気をつけて書かれています。そういった文章をたくさん読むことは答案を書くためにも大切です。」

2010-04-17 17:58:43
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

以上で京都大学松岡久和教授による『民法の学び方』のtsudaりを終わります。5時間超に及ぶ中継はしんどかったですが、個人的には普通に知らなかったことや思いを新たにした点が多々あったので、非常に良かったです。

2010-04-17 18:06:15
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