反社会的行動をしてしまう少年と自傷行為
いずれにしても、その多動はさらなる虐待を呼び込む。そして彼らは、自分を被害者の立場から救い出してくれない、養育者や権威的な大人に対する信頼感を失っていく。
2011-06-28 01:54:51その結果、敵対的、反抗的態度をとる学童期(反抗挑戦性障害)を経て、青年期になって非行集団に属することで被害者の立場から脱出し、最終的に、「これ以上、自分が被害者とならないように」、反社会的な性格の鎧を身にまとって加害者の信念に同一化していくのである。
2011-06-28 01:55:09すなわち、虐待被害を受け、過覚醒と知覚過敏によって多動を呈する子どもは、解離することでつらい現実を逃れ、「消えたい」「いなくなりたい」という感情を意識から遠ざける。
2011-06-28 01:56:02自傷行為におよぶ者も多いが、いくら自分を傷つけても痛覚を感じないのが特徴である。「心の痛み」だけではなく、「身体の痛み」も分からなくなっている、といいかえてもよいであろう
2011-06-28 01:56:42これと前後して、虐待的な環境を逃れるために家出を試み、そのなかで窃盗や援助交際を繰り返し、あるいはアルコールや薬物に耽溺することで、「化学的に」解離しようとする。
2011-06-28 01:57:51なかには、外傷記憶を反復強迫するかのように動物虐待や弱い者いじめに夢中になる者もいる。やがて彼らは非行集団に所属することで、「自己の痛み」を感じないまま、再び「殴る/殴られる」という暴力的な生き方に曝露される。
2011-06-28 01:58:20この「心の痛み」に対する感覚を喪失するプロセスは、同時に、被害者が加害者へと変貌を遂げるプロセスであり、自己破壊的行動から反社会的行動へと、攻撃の方向性が転換するプロセスでもある。
2011-06-28 01:58:48不思議なことだが、少年鑑別所を何度も出たり入ったりしている少年たちのなかには、14, 5歳の頃は自傷行為を繰り返し、面接のなかでも「消えたい」「いなくなりたい」と訴えていたにもかかわらず、18, 9歳になると、いつしか自傷行為をしなくなり、自殺念慮も訴えなくなる。
2011-06-28 01:59:27そんな少年たちと面接しながら、筆者自身、「これだったら、まだ自傷行為を繰り返していた頃の方がましだった」という思いに襲われたことが何度もあった。
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