クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド #6
「君、上から?下から?」「上だよ勿論」「いつから?」「先週」「僕も。この仕事お給金いいね」「いいね」「夢ある?」「夢あるよ、ミュージシャン」「夢いいよね」「いいよね」……二人の若い労働者が会話しながら通過する廊下の天井にはりつき、じっと息を殺す存在あり。ニンジャスレイヤーである。
2011-09-24 13:26:03この若者たちの空疎な会話からネオサイタマと同じかそれ以上のショッギョ・ムジョを感じる事を禁じ得ないニンジャスレイヤーであったが、懐のIRC通信機のノーティスがその物思いを破ってくれた。天井にゲッコめいてはりつきながら、彼は通信機の液晶を確認する。
2011-09-24 14:07:11#undertake:Gan_doh: 機関室デッキからHELL-O。侵入出来。貴殿に地図を転送。司令室をマーキングしたので向かわれたし。機関室からは致命システムシャットダウン申請不可。司令室でキーを回せ || #undertake:NS: okした
2011-09-24 15:17:11……ニンジャスレイヤーはひとまとめにメッセージを送ってくるガンドーから焦りのアトモスフィアを読み取った。さらにメッセージが流れる。|| # undertake:Gan_doh: ニンジャ有。所属不明者vsオムラ?ザイバツ?謎の戦闘。所属不明者が勝利、どこかへ行った。ニンジャ有。
2011-09-24 15:38:21ニンジャ有!ニンジャスレイヤーのニューロンがにわかに加速する。やはりだ。収穫あったというものだ。これほど大掛かりな暗黒破壊行為がニンジャの関わり無しに行われるはずが無かった。十中八九、ザイバツのニンジャであろう。殺すべし!……所属不明者?
2011-09-24 15:58:36所属不明者とは?戦闘?仲間割れか……?ニンジャスレイヤーがメッセージの意味を読み取ろうとしていると、かぶせるようにガンドーから更なる情報が届く。 || # undertake:Gan_doh: 所属不明者は我々と同時期の侵入者。詳細不明。おかしな奴、走り去る。遭遇可能性注意重点。
2011-09-24 16:35:36おかしな奴。ニンジャスレイヤーは一瞬当惑した。だがすぐに答えが出た。彼は短いメッセージをガンドーに返し、天井から降り立つ。|| # undertake:NS: 遭遇した。知った相手。 || 廊下を進み来る編笠姿のニンジャをジュー・ジツで待ち構えた。既に相手もこちらに気づいている。
2011-09-24 16:44:44「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。フフフ」フォレスト・サワタリはオジギした。バイオフロシキには何らかの荷物を満載し、背負っている。「ここで会ったが百年目と言いたいところだが、俺には任務がある!」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです。生きていたか、薄汚いジャングルの油虫め!」
2011-09-24 16:50:52「死んだと思ったか!俺と俺のグエン・ニンジャはあの程度の攻撃でへこたれはせぬ!」フォレストは居丈高に腕組みし、上体を反り返らせて威張った。「そして、悪いが貴様より一足早く救援物資はいただいたぞ」風呂敷包みを揺さぶり、「これだけのバイオインゴットがあれば、俺の軍はあと三年は戦える」
2011-09-24 17:01:37「私をオヌシのごとき火事場泥棒のコソ泥と同じに見ないでもらおう。不快だ」ニンジャスレイヤーはピシャリと言った。「キョートくんだりまで来て盗っ人まがいとは!バイオインゴット?好きにするがいい。サンズ・リバーへ向かう旅のベントーにしろ。ニンジャ殺すべし!」
2011-09-24 17:05:57「俺を殺せるものか」フォレストは両手にマチェーテを構えた。「バイオインゴットは俺のレーションではない。戦友たちの命綱だ!俺には責任がある」二者はじりじりと接近した。「そういえば金髪女はどうした、ニンジャスレイヤー=サン。どこにいる」「オヌシのご自慢の戦友とやらも見当たらんな」
2011-09-24 17:20:03「イヤーッ!」フォレストはマチェーテを振りかぶり飛びかかった!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転からの立体的な回し蹴りで襲いかかる。二者は切り結び交叉した。どちらも無傷!そして突然に照明が赤く変色、警報音が鳴り響いた!ブガーブガー!ガンドーのハッキングだ!
2011-09-24 17:24:53「オタッシャデー!」逃げながら振り向きざまに投げられたマチェーテを側転回避し、ニンジャスレイヤーはそのまま走り出した。やはり一撃で首を刎ねられる弱敵でない事は認めねばならない。ニンジャスレイヤーはフォレストを追わなかった。二者のイクサはまたもオアズケされたのである。
2011-09-24 17:28:27ブガーブガー!「異常!異常!でもとりあえず作業員は持ち場を勝手に離れない事」威圧的なマイコ音声!赤く点滅する廊下をニンジャスレイヤーは駆ける。時折作業労働者と擦れ違った。彼らは警報音に右往左往し、だが持ち場を離れる勇気も無い。彼らにニンジャスレイヤーは不吉な風としか見えぬだろう。
2011-09-24 18:22:14この先は労働者侵入禁止区域!銃弾すら防ぐ隔壁フスマはしかし、全て開放状態!ニンジャスレイヤーは駆ける!駆ける!壁を走りながら角を曲がると物騒なアサルトライフルを構えたクローンヤクザが二名!「イヤーッ!」「「グワーッ!?」」すれ違いざま、両手のチョップで首を刎ねられ二人同時に即死!
2011-09-24 18:51:05目指すは司令室!ニンジャスレイヤーが狙うは、このハンマーシリンダー装置の強制シャットダウンであった。ガンドーは狙い通り機関室をハッキングし、防衛機構を無力化した。だが自爆させるにはまだ足りぬ。この巨大鋼鉄破壊悪魔の心臓部を押さえた後は脳だ!脳を叩く!
2011-09-24 19:06:54ブガーブガーブガー!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは階段をひととびにジャンプ、さらに踊り場の壁を蹴って反射ジャンプ!上階へ突入すると廊下を三連続側転、さらに後ろを向いて七連続バック転!「「グワーッ!」」行く手に居合わせた二人組のクローンヤクザが首を刎ねられ同時に即死!
2011-09-24 20:42:37全速でスプリントしたニンジャスレイヤーは「コマンドー」とカタカナでショドーされたノレン前で急ブレーキ!床が線状に焼け焦げる!ここが司令室だ。中にニンジャは居るか?ニンジャスレイヤーは何の躊躇もせず、ノレンの奥のカーボンフスマを蹴り破った!「イヤーッ!」
2011-09-24 20:49:01ドガッ!カーボンフスマがくの字に折れ曲がり吹き飛ぶと、司令室の戦略机にぶつかって完全破壊された。「アババババッ!」「アババババッ!」「アババババッ!」UNIXデッキ一つ一つに、うつぶせで痙攣するエンジニアが一人ずつ!こめかみからLANケーブルが延びデッキに直結している!ナムサン!
2011-09-24 21:21:35それら哀れなエンジニアを一瞥したのち、ニンジャスレイヤーは司令室最奥にある黄金のビヨンボ仕切りを見る。そこにはもう一台UNIXデッキがある。指揮官権限のデッキだ。あれを強制的にシャットダウンすればハッキングで既に無数のヒビが生じたシステムが齟齬を起こし、この巨大装置は自壊する。
2011-09-24 21:33:24だが……。ニンジャスレイヤーは彼と指揮官デッキの間にある障害物を睨んだ。ニンジャの背中である。彼に背を向けるかたちで、真鍮色のニンジャがアグラ・メディテーションをしているのだ。ニンジャスレイヤーはあらゆる奇襲に対応すべく神経を尖らせた。
2011-09-24 21:49:02と、真鍮のニンジャはおもむろに流麗な動作で立ち上がり、背後を振り返った。そしてオジギした。「ドーモ。トゥールビヨンです」オジギ姿勢から復帰しながら、彼は両手の平を上向ける独特の中腰カラテ構えを取った。その若い目に一瞬、驚愕、そして恐怖が揺らいだ。だがそれは一瞬にして抑えこまれる。
2011-09-24 21:55:05「そのメンポ……貴様……ニンジャスレイヤー=サン」真鍮のニンジャは無感情に呟いた。ニンジャスレイヤーはアイサツを返す。「ドーモ。はじめましてトゥールビヨン=サン。オヌシのそのダイヤモンド・エンブレム。ザイバツ・シャドーギルドのニンジャだな」
2011-09-24 22:00:52「いかにもそうだ」トゥールビヨンは答えた。「私はザイバツ・シャドーギルドのマスターニンジャだ。そして貴様がこの蛮行の首謀者というわけかニンジャスレイヤー=サン。噂に違わぬ野蛮かつ凶々しい悪魔。なんという事をしてくれた」ブガーブガーブガー!警報音がうるさく鳴り続ける。
2011-09-24 22:07:21「なんという事を、と?」ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構えた。「なんという事を、と言ったか、トゥールビヨン=サン?」「そうだ」トゥールビヨンは責めた。「この超弩級掘削装置ベヒーモスは、ザイバツ・シャドーギルドの目指す理想社会の礎を築く象徴存在だった。それを貴様が踏みにじった」
2011-09-24 22:10:33