内部被曝について:島薗進氏 @Shimazono の児玉龍彦氏発言・論文へのコメント・やり取りなど

このまとめは、トゥギャリ:「内部被曝は“何シーベルト”という形で評価できるのか?児玉龍彦氏の発言・論文をめぐるやり取りなど」 http://togetter.com/li/184747 からの続きです。 まとめの最後に、言及された児玉龍彦氏の論文のリンク先、及び 「福島論文」について、「チェルノブイリ膀胱炎」からの引用を添付しました。
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言及された資料のリンク先:

1「チェルノブイリ原発事故から甲状腺癌の発症を学ぶ」

『医学のあゆみ』 Vol. 231 No. 4 2009. 10. 24.
http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.28.pdf

2「チェルノブイリ膀胱炎」

『医学のあゆみ』 Vol. 238 No. 4 2011. 7. 23. ―. 355.
http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.41.pdf

3「7q11変異」

『医学のあゆみ』 Vol. 238 No. 12 2011. 9. 17
―――ネット上でリンク発見できず。

 

「福島論文」について、上記「チェルノブイリ膀胱炎」から引用:

http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.41.pdf

「■“チェルノブイリ膀胱炎”

 我が国での化学物質の健康被害を検討する中心
的機関として国により設立された日本バイオアッ
セイ研究センターは,様々な物質の炎症惹起性や
発癌性を検討している.その研究所長の福島昭治
博士は,チェルノブイリ周辺におけるセシウム
137 の長期被曝の影響について検討を進めておら
れる.
 2004 年,福島博士らは,増殖性の異型性変化を
特徴とする“チェルノブイリ膀胱炎”という概念
を提唱した1).ウクライナでは,30 Ci/km2以上の
地域は強制避難となっている.それ以下の低い線
量の長期被曝がどのような健康被害をもたらすか
を多年にわたり解析しておられる.そこで膀胱癌
が百万人あたり 26.2 人(1986 年)から,43.3 人
(2001 年)に 65%増加していることに注目し,15
年以上,比較的高い線量(5~30 Ci/km2),中間的
線量(0.5~5 Ci/km2)区域に住んでいる住民につ
いて,膀胱の病理組織的検討を開始した(「サイド
メモ」参照).
 福島博士らは,良性の前立腺肥大の手術のとき
に一部切除される膀胱の病理組織の検討を進め
た.その結果,セシウム汚染地域の住民の膀胱に
は,高い線量でも中間的線量でも,増殖性の異型
性の病変が起こっていることを発見し,“チェルノ
ブイリ膀胱炎”と名付けた.
 なぜこのような特徴的な増殖性の異形性変化が
おこるのか? 免疫組織学的検討から,p38 MAP
キナーゼの活性化と,NFκB の p50 と p65 の細胞
内増加が発見された.これは低レベルのイオン化
された放射性物質による慢性被曝が引き起こした
ものと考え,被曝地域における住民の膀胱の病理
組織を緻密に解析すると,ほぼ全例からこのよう
な増殖性の異型性変化が発見されたが,非汚染地
区患者の膀胱ではみられなかった.
 福島博士らは,2009 年にこれらの被曝地域患者
に膀胱癌発症が増加していることを報告し2),そ
のメカニズムを図 1 のようにまとめている.

■チェルノブイリの尿と福島の母乳のセシウムレベル比較

 膀胱への低い線量でのセシウムの長期被曝が引
き起こす膀胱の慢性炎症が,前癌状態であるとい
う福島博士らの報告は大きな意味をもっている.
 チェルノブイリの小児の甲状腺癌の場合は,ヨ
ウ素 131 が甲状腺に集まりやすいという特徴か
ら最初から疑われていたにもかかわらず,広く認
識されるのに 10 年かかり,ほぼ終息した 20 年後
に WHO などにより因果関係があることがコンセ
ンサスとされた.膀胱癌で最初の報告が 18 年後
であり,発癌メカニズムが 23 年後に明らかに
なってきたことは,低レベルの放射線被害の証明
がいかに難しいかを再確認させるとともに,しか
し地道な測定と,検討の重要性を示している.
 すでに福島,二本松,相馬,いわき各市の女性
からは母乳に 2~13 ベクレル/kg のセシウム
137 が検出されることが厚労省研究班の調査で報
告されている.この濃度は,福島博士らのチェル
ノブイリの住民の尿中のセシウム 137 にほぼ匹
敵する.福島博士の報告では,表 1 のように,6
ベクレル/L とほぼ同じレベルである2).
 そうすると,これまでの「ただちに健康に危険は
ない」というレベルではなく,すでに膀胱癌な
どのリスクの増加する可能性のある段階になって
いる,ということである.そもそも,母乳にセシ
ウム 137 が検出されることが異常だと思わなく
なっている行政当局,研究者の判断に猛省を促し
たい.」

 

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