ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション #2
「……イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの背中に縄のような筋肉が浮かび上がり、その恐るべきニンジャ膂力が、オベリスクに拘束具めいて巻きついたエンシェント・シメナワを引きちぎった!「道を!示せ!」『010010101101』シルバーキーは息を呑んだ。「……ここだ!ここで俺だッ!」 25
2011-12-01 16:35:30シルバーキーは駆け寄り、左手でニンジャスレイヤーの肩を掴んだ。そして右手はオベリスクに……銀色に輝く四角い立方体に触れた!「イイイイイヤーッ!」ナムサン!途端にシルバーキーの全身に白い稲妻がまとわりつく!オベリスクの輝きは巨大な空洞を目が眩むほどの光で満たす!真っ白に! 26
2011-12-01 16:42:49010101010001001010001000101001001001000010010001000100010001010010100010010000010010100010010010010001001001001010010010000100100100100 (27)
2011-12-01 16:55:49「……はい、おかえり」無限の暗黒の中に椅子一脚。そこには黒髪の美女が透き通るような裸で座っており、シルバーキーが近づくと首を傾げるようにアイサツした。「ドーモ……エート、バーバヤガ=サン?」「さすが、よく覚えているじゃない」女は無感情に褒めた。 28
2011-12-01 17:11:59途端に、女の背後に、前回同様、朽ちた石の階段がせり上がる。全部でそれは2248段あり、一番上のトリイ・ゲートを始めとして、数百段ごとに踊り場とトリイが存在する。「で、どこまで上がるか、決めたってわけね」「エート……」シルバーキーはやや困惑した。頭上には金色の立方体。 29
2011-12-01 17:17:27「アレって、何なんだい?」シルバーキーは指差した。「……」バーバヤガは答えない。「俺はさ、アレが銀色になったようなオベリスクを見つけた。……で、それとニンジャスレイヤー=サンとを繋ぎに来たわけなンだよ。あンた、神様めいてるから、ご存知なんだろうけど」「繋ぐのは何故?」 30
2011-12-01 17:23:48「エート……『そうしろ』って、あのおっかないナラク・ニンジャが俺の夢枕に立つわけだよ。そりゃもう、絶え間ない悪夢ってヤツさ」シルバーキーは頭を掻いた。「……」バーバヤガはシルバーキーをじっと見た。「そりゃ、わかってるよ。わたしが知りたいのは、貴方の覚悟。動機」「またそれか」 31
2011-12-01 17:35:04シルバーキーはあたりを見回した。周囲は驚くほどの暗闇、虚無だ。ただ女と、椅子と、階段だけがある。「なんか理由が要るのか?」「そりゃそうでしょ」女は肩を竦めた。「理由も無く死んだら貴方、犬死にってやつよ」 32
2011-12-01 17:40:48「物騒だな!」シルバーキーは笑いかけた、だが、女は真顔でシルバーキーを見ている。「流石に危険の程をわからんバカが、こんな大それた力を手に出来るわけも無い」女は言った。「危険をわからんバカが、このミッションを成功出来るわけもない」「……まあ、そりゃそうだよ」シルバーキーは頷く。33
2011-12-01 17:47:50「オベリスクのエネルギーをニンジャスレイヤー=サンの中のナラク・ニンジャに再び送り込む。実際ヤバイ」シルバーキーは言った。「ニンジャを殺しまくって来た奴のソウル。正体のわからない」「まあまあ、正解」女は頷いた。「何故、やる」「エート」彼は瞬きした。「人の為、つうのかな……」 34
2011-12-01 17:54:34「人の為?」「まて、笑うなよ」シルバーキーは制した。「どうせ共感されない話さ。特に、あンたみたいな、超自然の神様なんかにはさ。俺のこの……何だ、エート、平凡な俺!」「うん」バーバヤガは頷いた。「続けて」 35
2011-12-01 18:00:49「この、呪いだか何だか知らねえ、俺の中に入ってきた力。この時の為の物だったンだ。俺にはわかる。俺の力だ。名前も言わなかったせっかちなニンジャソウルのさ。使命。晴れ舞台って言えばいいのかな、そういうアレだよ。俺はさ、今まで波風立てないように暮らして来た。そういう器だから」 36
2011-12-01 18:10:16「うん」「まあ、わかっちゃいるんだ、このまま何もせず生きた方が、そりゃあ……」シルバーキーは言葉を探した。「でも、何だ。俺の中にも、欲、っていうか」「うん」「あのな!昔話なんだ。あれは、ええと、いつだったかな。よく覚えてないんだ。その時俺は、なんてこたない、買い物だか……」 37
2011-12-01 18:17:09実際それは大名行列めいていた。数台の装甲車、巨大な「罪罰」の旗を掲げた儀仗バイクヤクザ、武装リキシャー、コンテナにでかでかとウキヨエが描かれたトレーラー(中にはクローンヤクザ戦闘員が満載だ)……。そしてそれら威圧的な車列の中央には長大な家紋リムジン。 39
2011-12-01 18:41:27家紋リムジン車内には宇宙めいた黒装束のニンジャ、グランドマスター位階の恐るべきダークドメイン!オイランをはべらせる事も無く、むっつりと腕組みをして座る彼に向かい合うように、同じくザイバツのマスターニンジャ、ワイルドハント!車外にはサイボーグ馬にまたがったインペイルメント! 40
2011-12-01 18:46:22あまりにも戦闘的なその車列はネオサイタマのマルノウチビル街に極めて強い緊張アトモスフィアを呼び込む。道ゆくサラリマンの中には、巨大な旗を見ただけで白目を剥き失禁して倒れる者もいた。さもありなん!一体彼らはどこへ向かおうというのか?ここはマルノウチ……その通り! 41
2011-12-01 18:52:22「マルノウチ・スゴイタカイビル……」ワイルドハントがうっそりと言った。ダークドメインはじっと彼を見る。ワイルドハントは震えた。昨晩の宴の、あの恐怖が身をもたげるのだ。アワレなオイランたち。「あのインペイルメント=サンにも所縁ある地ではございますが」 42
2011-12-01 18:56:29「……あのビルにこだわりがあるようだ。ニンジャスレイヤーは」ダークドメインは言った。例のニンジャ処刑事件の事を言っているのだ。マルノウチ・スゴイタカイビル抗争に参加した者らが恐るべき勢いで殺された痛ましい事件。あの事件をもって、ニンジャスレイヤーはギルドに宣戦布告した。 43
2011-12-01 19:03:56「あの抗争で戦闘に巻き込まれた市民の成れの果て……と言ったところであろうな。あの犬」ダークドメインはさほど興味無さげに呟いた。「くだらん復讐者だ。センコでもあげにきたか」「は」ワイルドハントは緊張に乾いた唇を舐めた。チャが飲みたいが、あるじが手を付けぬ限りは当然許されない。 44
2011-12-01 19:08:53そう、この威圧的車列の目的地はマルノウチ・スゴイタカイビル。ではダークドメインはニンジャスレイヤーを始末する為にこれほどの大部隊を?否!彼が求めるのはそれ以上の成果だ。マルノウチは現在アマクダリ・セクトの支配領域だ。そこへこうして大部隊を率いて侵入する。何が起こるか? 45
2011-12-01 19:13:32この車列が抱えるニンジャは実際この三人だけではない。さらに装甲車に一人。トレーラーに二人。ニンジャスレイヤー討伐、そしてアマクダリ・セクトが挑発に応えればこれを撃破する。反応が無くば、この地はそのままザイバツの支配下だ。不可侵協定を堂々と破る腹づもりである! 46
2011-12-01 19:19:59ワイルドハントは体の震えを抑えている。恐ろしいのはアマクダリ・セクトの襲撃ではない。今こうして向かいに深々と腰掛け、腕組みして、瞬きもせず、不機嫌そうに彼を凝視するダークドメインだ!(早く来ないものか!アマクダリの奴ら!そうすれば車外に出られる……)そんな事すらも考える! 47
2011-12-01 19:25:32ワイルドハントの捨て鉢な願いむなしく、襲撃の起こらぬままに車列は目的地へ到達。マルノウチ・スゴイタカイビル前の広場を包囲するように展開する。異様なアトモスフィアを感じ取った買い物客、サラリマン達が、足早にその場を離れてゆく。ダークドメインとワイルドハントは車を降りた。 48
2011-12-01 19:33:02そして同様に、トレーラー、装甲車からしめやかに展開するクローンヤクザ達。たちまち凶悪なアトモスフィアが満ち満ちた。「フーンク!」叫んだのは馬上のインペイルメントである。彼は恐るべき長さの大業物、ザオ・ケンを掲げ、ネオン看板「コロンボン」を輝かせる近隣のビルを指し示した。 49
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