『人工細菌誕生』の論文を解説してみる
- popeetheclown
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「『人工細菌誕生』の論文を解説してみる」を加筆・改訂してブログ記事にまとめました.研究の背景や実験の詳細についても解説予定.これから続きを書きます.> http://bit.ly/a6XfKL
2010-06-05 02:01:43今夜,時間があれば,昨日の科学ニュースの話題をかっさらった「人工細菌誕生」の論文解説でもしてみようかな.せっかく論文読んだし.
2010-05-23 10:31:20@nennpa 身も蓋もない言い方ですが,その通りですもんね.今回の論文は,細菌自体を人工と見なすかどうかという点よりも,長大(1 Mbp)のDNAを遺伝子工学的に扱えることを示したエポックメイキングな例として僕は興味を持っています
2010-05-23 10:53:09@nennpa ゲノムDNA自体の扱いもですね.1 Mbpの合成DNAはボルテックスなんてしてしまえば簡単にずたずたとなるし,普段のDNAの扱いとは全く変わるそうです.当然,合成自体も技術的な進歩の上で可能になったことですし.
2010-05-23 11:03:09@nennpa あと,科学的な部分として論文のイントロにある通り,”Even in simple bacterial cells, do the chromosomes contain the entire genetic repertoire?” はとても興味のあるところです
2010-05-23 11:04:36流し読みしたせいか,sMmYCp235とsMmYCp142の違いがよく分からない.142がdnaA mutantってことなのか?
2010-05-24 00:22:43obtaining an error-free genome that could be transplanted into a recipient cell to create a new cell controlled only by the synthetic genome
2010-05-24 00:29:34これを主語にしたというところに,著者たちの執念を感じる(あの後,...was complicated and required many quality control stepsと続く) http://bit.ly/cJMH5w
2010-05-24 00:31:09人工細菌誕生ニュースの元となる論文を読んだので,ちょっと解説してみる.ちなみに僕は生物学を学んでいるが,合成生物学の専門家ではない. #synthcell
2010-05-24 00:55:18元論文は2010-05-20にScience誌オンライン版に発表された "Creation of a bacterial cell controlled by a chemically synthesized genome" #synthcell
2010-05-24 00:56:19人工細菌誕生のニュースについてはこちら>読売新聞の記事http://bit.ly/9kV467 >Venter Instituteのプレスリリース(英語) http://bit.ly/91WYvK #synthcell
2010-05-24 01:00:40論文の責任著者であるCraig Venterは,ヒトゲノム解析を中心的に行った人物としても有名.90年代後半に自分でベンチャー企業を作り,解析に着手.その結果,国際共同チームとの競争で解析が早まったと言う経緯があった #synthcell
2010-05-24 01:04:09今回の論文は,ヒトゲノム解析後に「細胞を創る」ということを目標にしたVenterらの1つのゴールとも言え,数年に渡って彼らが発表してきた研究成果の集大成でもある. #synthcell
2010-05-24 01:05:15最低限の前提知識:ゲノム=ある生物種が持つ遺伝情報の総体.DNA=遺伝情報が記録されている媒体(化学物質).遺伝子=遺伝情報の中でタンパク質など細胞内で働く部品の設計図となっている部分のこと.詳しい説明はぐぐってください #synthcell
2010-05-24 01:09:17今回の論文のポイントは,1ある細菌のゲノム全体を構成するDNAを化学合成した,2化学合成したDNAを繋ぎあわせて元と同じ形にした,3繋ぎあわせたDNAを別の細菌の中に入れた,4合成したDNAだけを用いて細菌が分裂増殖することを確認した,の4つ #synthcell
2010-05-24 01:14:004つのステップの中で,1と2(ある細菌のゲノムDNAを人工的に作り出した)は2008年,3(ある細菌のゲノムDNAを別の細菌に移植した)は2007年に,彼らが技術を開発し,Scienceに報告していた.その意味で今回は集大成 #synthcell
2010-05-24 01:19:472007 or 08論文と今回の論文では,方法に細かい違いもあるが,ここでは,今回の論文で行われた実験について解説する. #synthcell
2010-05-24 01:21:24登場人物(細菌)は2種.まずはMycoplasma mycoides(以下Mm).このゲノムDNAを人工合成して移植した.もう1つは.Mmの近縁種でMycoplasma capricolum(以下Mc),MmDNAの移植先. #synthcell
2010-05-24 15:19:29この2種,特にMmは比較的ゲノムサイズが小さい=DNA全体の長さが短いという特徴を持つため,DNAを人工合成しやすいことから選ばれた.07論文ではよりゲノムサイズが小さいM. genitaliumが使われていたが,実験上の理由からMm(より増殖が速い)になった
2010-05-24 15:20:14Mm がドナー(提供者)で,Mcがレシピエント(移植先),ということだけ覚えておけば特に問題はない. #synthcell
2010-05-24 15:20:32【1Mm ゲノムの人工合成】Mmゲノムは約108万bp(塩基対).ヒトゲノム(30億)と比べたら小さいが,実験で扱うDNAの長さとしてはとても長い.これを人工合成するために,4段階のステップ:1k -> 10k -> 100k -> 1Mbpで繋ぎあわせた #synthcell
2010-05-24 15:21:14まず,1kbpのDNAを化学合成し,ベクターに組み込んだものを,ゲノム全体をカバーするように約1000種類作った.ここでは普通に制限酵素処理→ライゲーションでベクターに組み込んでいる #synthcell
2010-05-24 01:36:36次に,このMmDNA 1kbpが載ったベクターの中でDNAの位置が連続するものを,10種類まとめて酵母の中に入れて組換えさせて繋げ,それを大腸菌に移すことで,10kbpに繋がった中間体を得た.この段階で出来た中間体の配列は全て正しいことをチェックしていた #synthcell
2010-05-24 15:21:24さらに,10kbpの中間体の中で,連続するものを10個ずつ酵母の中に入れて組換えを起こさせることで,100kbpの中間体,計11種(全体をカバーする)を作製した.正しく繋がったかどうかは長さのチェックによって確かめた #synthcell
2010-05-24 01:46:29最後に,100kbpの中間体11種を酵母に入れて組換えさせることで,完成体の人工合成Mmゲノムを作製した.最後のステップでは,中間体に混入している酵母のゲノムDNAが効率を大きく下げることが分かったので,混入物を取り除くために精製したことが鍵となった #synthcell
2010-05-24 15:21:40