アロカCAN-OSP-NAIの場合、検出限界を改善する余地が残されている
NHKのニュースなどでも話題になっているように4月見込みの新規制値を視野に入れた場合,多くの施設でNaIシンチの検査水準の引き上げが必要になってくるといえます.これに関してすこし書いておこうと思います.
2012-01-29 17:23:00スクリーニングという視点でいえば,すでに公開されている文書にあるように,NaIシンチで信頼できる数値と判断するにはかなりの難しさが残ります.http://t.co/frjxaczr
2012-01-29 17:24:57そうした点はここではおいておくとして,新規制値の100Bq/kgを視野に入れた場合,最低限必要になってくるのは,すでに所有している機械の検出限界値をより引き下げないといけないということです.
2012-01-29 17:26:16検出限界を引き下げたい場合,もっとも手軽で効果があるといえるのは,サンプル量を増やすという方法が挙げられると思います.しかし,たいていのNaIシンチの場合,測定に使用する容器は固定であって,異なる容器を使用すると測定値自体の信頼性が失われてしまいます.
2012-01-29 17:29:05測定時間延長によって検出限界を引き下げる方法もとれます.いま仮に新規制値の1/5を検出限界の達成目標とすると20Bq/kgを目指すことになるわけですが,アロカ社のCAN-OSP-NAI(2inch温度補償なし)の場合,指定のV-11容器で玄米を測定すると,18分は必要となります.
2012-01-29 17:33:48測定時間を延ばせば,NaIシンチはある程度までは,検出限界を下げられますが,それにも限度があります.Ge器に比べ,分解能も劣りますので,のばせばのばしたなりに自然放射線の影響をうけ,なかなか面倒が増えてきます.
2012-01-29 17:36:07容器を変更したいがシステム上変更が難しい,測定時間を延ばしたいがサンプル数が増やせなくなる…,今後あちこちで新規制値に対応するため手持ちの測定器のスペックが課題になっていくことは確かのようです.先のニュースはそうした課題を指しています.http://t.co/mGr5FS9d
2012-01-29 17:39:06ニュースに出ている機体はウチの施設にあるのと同じアロカ社が販売しているCAN-OSP-NAI.メーカー公称,検出限界は10分間測定で玄米の場合30Bq/kg.今後もっと下を見たくなってくると思います.
2012-01-29 17:41:37幸いにして,このCAN-OSP-NAIの場合,まだ検出限界を改善する余地が残されています.これまで私たちの施設でおこなってきた手法を書いておきますので,興味のある方は参考にしてみてください.
2012-01-29 17:42:58CAN-OSP-NAIはアロカ社が販売していますが,元を正せばキャンベラ社のOEM品です.なので,基本的なスペックはキャンベラ社のFoodScreen(™) Radiological Food Screening Systemと同等です.http://t.co/b940m2Lp
2012-01-29 17:46:55このカタログにあるように,この機体は実のところ,V-11容器だけではなく,もっとさまざまな容器,サンプル重量に対応できるフレキシブルな設計(ハード&ソフト)で構成されています.たとえば1Lマリネリ容器も本来は使える設計で,ミルク,水は4分間で20Bq/kgまでとあります.
2012-01-29 17:50:01なぜ日本で販売されるモデルはV-11容器固定なのか,が気になってくるわけですが,これは単純に利便性と容器の価格などを考慮した結果だと思います.
2012-01-29 17:51:48実のところ,日本販売されるアロカ社製食品放射能測定システムCAN-OSP-NAIにも,V-11容器以外を使用して測定するためのソフトウェアがインストールされていて,海外のモデル同様,様々な容器,サンプルを用いたもっと柔軟な試験ができるようになっています.
2012-01-29 17:57:59V-11容器以外の容器を使った測定を実現するには,Genie2000ソフトウェアを利用します.アロカ社さんのサポート外ですので,購入時説明はありませんが,ライセンスの都合,かならずパソコン内にインストールされているのでプログラムファイル内に見つかります.
2012-01-29 18:04:31手法の概要はこうです.まず使いたい容器の形状を直径,高さ,肉厚などを正確にはかり,記録します.これをGenie2000ソフトウェアのGeometory Comporserでモデリングします.
2012-01-29 18:05:133Dモデルが完成したら,その中に詰めるサンプルのタイプと密度を設定していきます.仮に今,玄米を1Lマリネリ容器(だいたい900g程詰まる)で計ろうとした場合の例で進めていきます.
2012-01-29 18:07:12メーカーによるとサンプルタイプは有機物の場合derlinを,土壌の場合はdirt1,水の場合はwaterを指定します.玄米は有機物なのでderlinを指定すればよいです.次に密度を指定します.1Lに900g程玄米米が詰まる例ですので,densityの欄に0.9を入力します.
2012-01-29 18:10:36次にEfficiency Curveから,Plotを出力します(実行時自動保存).これをGamma Acquisition & AnalysisアプリケーションのCalibrateからLabSOCSによるEfficiencyで読み込みし,キャリブレーションファイルを作成します.
2012-01-29 18:15:17作成には何かしらデータを読み込んでいないとできないので,読み込んでおきます.Gamma Acquisition & Analysisアプリは,CAN-OSP-NAIで採取されたデータをそのまま読み込みますから,CAMFILESフォルダから読み込んでおけばよいです.
2012-01-29 18:17:41時間の都合,ちょっと省いて書きます.キャリブレーションファイルは考えられるサンプルごとにそれぞれ作成しておきます.たとえば有機物の密度0.1用,0.2用のようにです.
2012-01-29 18:19:44作成したキャリブレーションファイルを使って定性と定量をおこなう方法についても簡単に書いておきます.まず,CAN-OSP-NAIで通常通り測定をします.それからそのデータをGamma Acquisition & Analysisアプリで読み込みます.
2012-01-29 18:21:07読み込み後,EditからSample Infoを呼び出し,サンプル情報を書き直します.日本語に対応していないので,化けています.このままで進めると,定性と定量レポートのレイアウトが壊れるので,残念ですが書き直します.
2012-01-29 18:22:21