リブート、レイヴン #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェー……中に相手がいたら、どうするんスか?」「グッドポイント!」ガンドーが有能な助手を指差す「抜かりはない。まずはターゲットが室外にいるのを確認する。車内で見せた写真を思い出せ。今はちょうどイベントホールでヨロシサン製薬やオムラ重工のハイテック・ショウが開催されている」 25

2012-02-08 00:55:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコースティックな雅楽が鳴り響く庭園を、探偵と助手は足早に渡る。「ハイテック・ショウに奴らがいるって、何で解るんスか?」「奴らのこれまでの手口を考えるんだ。常にハイテックを駆使してる。だからショウも見物してるに違いない。アリーナ席を歩いて、あの3人の誰かがいないか探すんだ」 26

2012-02-08 01:04:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イベントホールは目の前だ。観客席から響く拍手の音と、ネオサイタマらしい下品なアナウンス音声が聞こえてきた。「アー……でもそれ……ウェー……居なかったらどうするんスか?」シキベが問う。「次の手を考える」ガンドーはズバリガムを噛みながら返した「仕方ないだろ、時間が無かったんだ」 27

2012-02-08 01:11:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「彼女は不幸な事故で四肢を失いましたが、見てください!」芝居がかったプレゼンターの声。ステージ上にスポットライトが当てられ、笑顔を浮かべた美しいオイランが現れ背中を露にした。白いうなじに4つのLAN端子、そこから脊髄へとケーブル類が伸びる。「我が社のサイバネ義肢の力です!」 28

2012-02-08 01:20:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーとシキベは二手に別れ客席を歩く。ステージ上のオイランは着物で再び背中を隠すと、どこか空虚な笑みを作って振り返り、奥ゆかしい姿勢で正面に一礼した。観客席から小さな拍手が起こる。だが、最前列から仕込みと思われる男の声。「しかし、この技術は半年前のショウでも見ましたよ?」 29

2012-02-08 01:25:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「い、か、に、も、その通りです!」プレゼンターが大仰な口調で答える。手元のボタンを押すと、オイランに注ぐスポットライトが消えた「時代は変わりました。我が社はついに、高性能オイランドロイドの開発に成功したのです!しかもそこに、アイドルというエクスプロイテーション要素を重点!」 30

2012-02-08 01:28:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

胸糞悪いプレゼンだぜ、人間を何だと思ってやがると思いながら、ガンドーは薄暗いアリーナ席を捜索する。幸いにも、観客たちは現在のプレゼンを食い入るように見つめている。時代の転換点を目撃するかのように、静かな熱狂がホール内を支配していた。すでに立ち上がり拍手をする者すらいる。 31

2012-02-08 01:33:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

軽薄で性的なサイバーテクノがホール内に流れ始めた「ご紹介しましょう!ネコネコカワイイです!」プレゼンターが叫ぶ。ステージのソデから人間と区別がつかない……いや人間以上に完璧にカワイイな動きをプログラムされた2体のオイランドロイドが、元気いっぱいに駆け込んでくる!万雷の拍手! 32

2012-02-08 01:41:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暗がりの中、俯き加減で退場してゆく義肢オイランに一瞥をくれながら、ガンドーはやり場のない怒りを覚えていた(((スモトリも、ヤクザも、オイランまで紛い物だ。次は何だ?探偵か?俺たちも遂に絶滅か?メガコーポめ、調子に乗りやがって)))……ふと目をやると、発見サインを作るシキベ! 33

2012-02-08 01:47:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネコネコカワイイは球体関節技術を活かした完璧なW字開脚ジャンプを決める!湧き起こる歓声!「スゴイ!」「スゴスギル!」「カワイイ!」鳴り止まぬ拍手!「我が社のサイバネとピグマリオン・コシモト兄弟カンパニーの人工知能が……」勝ち誇ったプレゼンターの声を背に、出口へと向かう2人。 34

2012-02-08 21:57:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いたか?」とガンドー。「所長の推理通り、ターゲット3人ともいて、仲良く立ち上がって、拍手してたっスよ」緊張感からか、シキベもいつになくハキハキとした口調だ。「ブッダ!上出来だぜ。ズバリが効いて来た」2人はエレベーターに乗り、最上階へ。オーガニック畳の匂いが彼らを出迎える。 35

2012-02-08 22:07:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニューロン内にワイヤフレーム式の見取図とスタッフ巡回ダイヤを展開したガンドーは、薄暗い無人スタッフルームに押し入って大型フートン・キャリーと酒瓶を調達し、マツ1203号室へ向かう。横並びで歩く2人は交代で蝶ネクタイをスタッフ用のそれに付け替え、さらに乗務員バッジを装着した。 36

2012-02-08 22:23:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

幸いにも乗客の大半は、ハイテック・ショウに参加しているようだ。ガンドーはマツ1203号室の少し前にキャリーを止めると、酒瓶の蓋を開けて床に放り投げ、撒き散らす。フートンの陰に隠れながら、屈み込んだシキベが金属製のLAN端子蓋をドライバーでこじ開け、ガンドーのケーブルを直結。 37

2012-02-08 22:33:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

予想以上に守りが固い。ガンドーは胸元から真鍮フラスコを取り出し、ズバリ・ウィスキーを呷りながら、少々焦り始める。もうじき5分経過だ。偏頭痛。ようやく、重い物理鍵が3つ回る音が聞こえた。「無理するなよ、IRCで連絡を取る」とガンドー。シキベは頷き、フスマを開け単身部屋に潜入。 38

2012-02-08 22:48:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

美しいビヨンボで区切られた20畳の優雅なタタミ部屋には、贅を尽くした調度品が並んでいる。半開きになったショウジ戸の彼方には、大型トリイがライトアップされた琵琶湖の夜景と、キョート山脈に映し出される壮大な漢字。『明かり』シキベは携帯IRCでガンドーに伝える。『1分待ってくれ』 39

2012-02-08 23:01:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

少しして、ガンドーが室内のハッキング支配度を深める。電子ボンボリが燈り、雅楽が流れ始めた。『音楽はすぐ切る』とガンドー。シキベは頭を掻きながら、ターゲットがスズキ・キヨシ一味であることを示す証拠を探した。『大型スーツケース3個、開かないス』『他は無いか』『タンス』『安直だ』 40

2012-02-08 23:06:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シキベはチャブの上に置かれた置物を片端から裏返し、何かが隠されていないか確認する。『マズイ、奴らが来た』ガンドーから緊急IRC『30メートル先の角を曲がって、近づいてきてる』『脱出の時間は?』『間に合わない、隠れてくれ』『どこに隠れりゃいいスか?』『チャブの下か、タンスだ』 41

2012-02-08 23:12:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!シキベは一瞬迷った跡、オブツダン式の大型衣装ダンスを開き、中に飛び込んだ。物理鍵が下り、電気が消える。ガンドーがハッキングを一時解除したのだ。運搬中にフートンと酒瓶をこぼした無能なホテルスタッフの芝居を打つガンドー。3人のターゲットは小さく笑いながら部屋に入る。 42

2012-02-08 23:16:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「実際スゴスギルな!ネコネコカワイイは!」3人のリーダー格であるコケシ・ソイチは、興奮冷めやらぬ面持ちで言った。「計画変更ですか?」「もしかして今夜、中庭のライブステージからネコネコカワイイを盗むとか?」2人のヤングカチグミが囃し立てる。タンスの中に隠れたシキベは息を呑む。 43

2012-02-08 23:30:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや、計画重点だ」と声を潜めながらコケシ。後ろ手で室内雅楽BGMのボリュームを増す「ストイックにやらなけりゃ、怪盗は務まらない。さあ、急ぐぞ。プロポはどうだ?」「大丈夫です」「スモークは?」「抜かりないです」「よし、じゃあ俺のスーツケースは……こんな所に……置いたかな?」 44

2012-02-08 23:36:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ウェー)))シキベはタンスの中で冷汗をかいた。先程開けようとした時に、並び方を変えてしまったのかもしれない。日頃のがさつな性格が災いしたのか。「気のせいじゃないですか?」「もうすぐ計画の時間ですよ?」と取り巻き2人。「……」コケシ・ソイチは眉をしかめ、タンスを開ける! 45

2012-02-08 23:47:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アブナイ!シキベが隠れている側と反対側の戸が開く!コケシ・ソイチの艶々とした手が掴み取るのは、ハンガーに掛けられシワを伸ばされたレトロ調の怪盗マントと、ハーフヴェネツィアマスクめいた形状のハンニャ・オメーン!ナムアミダブツ!それこそは、怪盗スズキ・キヨシの代名詞ではないか! 46

2012-02-08 23:56:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タンスが閉じる!息を吐くシキベ!「何か臭うな……」コケシが呟く。「誰かが正体に気付いたとか?」と取り巻き。「そろそろ潮時かもしれないですよね?」もう片方がチャブの下を覗き込む。「……まだだ。もっとやる。詮索者がいたら、琵琶湖に沈めてやる。跡形も無く揉み消してやる」とコケシ。 46

2012-02-09 00:10:54