低線量被曝の影響ってどうして良く分からないのか?に関する対話

低線量被曝による健康への影響は「良く分からない」と言われますが、その意味は「何が起こるかさっぱりわからん」ではなくて「影響が小さくてはっきり影響が見えない」という意味です。そのツイをしたときの皆さんからのレスポンスが興味深かったのでまとめておきます。 特にhindu_kush420さんには長々とお付き合いいただきました。意見が交わせたことに感謝いたします。
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naka-take @Yuhki_Nakatake

あと、言い忘れていたのが「今後解析されて低線量の影響が明らかになったとしても事実は変わることは無い」という点です。LNT・閾値・ホルミシス仮説のどれが正しいのか今は分かりませんが、「低線量の被曝では解析が困難なほど影響が小さい」という事実は変わりません@minako_genki

2012-03-24 17:57:54
naka-take @Yuhki_Nakatake

「低線量の影響は良く分かっていない」というのが、放射線の危険性を煽る文脈でよく使われますが、「何が起きるのかさっぱり分からない」ではなく「影響が小さすぎて正確な計算ができない」の意味です。@Yuhki_Nakatake @minako_genki

2012-03-24 17:59:34
naka-take @Yuhki_Nakatake

「低線量被曝の影響ははっきりと小さいことが【分かっている】」のですよ。線量が小さいと、大きいところで得られていた線形が保たれているのかわからん、ということです。よく混同される点ですので、留意する必要があると思いました。@Yuhki_Nakatake @minako_genki

2012-03-24 18:03:12
naka-take @Yuhki_Nakatake

皆似たような感覚だと思いますが、信頼が崩れたのは発電所の危機管理体制であって、放射線の生体への影響に対して、何か信頼が崩れたわけでもありません。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、という諺は「それって仕方ないよね」という意味ではないです@Veem_atomic @minako_genki

2012-03-23 23:33:20
naka-take @Yuhki_Nakatake

科学的な証明というのは、そういった蓋然性を含むので、逆説的に、少数の変な反論で通説が覆されることもありません。反論に対する反論を延々と繰り返し、生き残った論が通説です。結構強いですよ?@Yuhki_Nakatake @minako_genki @Veem_atomic

2012-03-23 22:54:35

ここまでのやり取りはhttp://togetter.com/li/277615のまとめにもあるとおり。↓以下、そのレスに対するコメントをまとめ

buvery @buvery

もう一ついうと、科学者は考えを変えず、死んで行くからその節が廃れる。RT @Yuhki_Nakatake: 反論に対する反論を延々と繰り返し、生き残った論が通説です。結構強いですよ? @minako_genki @Veem_atomic

2012-03-25 10:14:25
naka-take @Yuhki_Nakatake

@buvery @minako_genki @Veem_atomic やり方が胡散臭くて再現できなかったり、突っ込み点が多すぎて相手にされない論文なんてゴマンとありますからね。通説と外れた昔の論文って、大抵そう。ほんとに大事な結果だったら、ちゃんと再現性を取られて通説になるし

2012-03-26 00:58:53
金字塔🚙 ³₃ ぽんぽこ商事CEO @kinjitou2010

4.5年後に責任負えるのかな?誰一人実害がなければいいけど。“@Yuhki_Nakatake: 「低線量の影響は良く分かっていない」というのが、放射線の危険性を煽る文脈でよく使われますが、「何が起きるのかさっぱり分からない」ではなく「影響が小さすぎて正確な計算ができない」の意み

2012-03-24 18:07:26
naka-take @Yuhki_Nakatake

お酒は二十歳になってから、といったら全てのアルコールに起因した死亡例に責任をとるべきなんですかね?それとおんなじくらい変な言いがかりですよ?データを僕が言った以外にどう解釈するんでしょう? @kinjitou2000

2012-03-24 18:25:36
naka-take @Yuhki_Nakatake

データがちゃんとあるのに、不確かな表現のまま『わからん』と思考を止めることの方が無責任でしょう。あと、根本的に自分の行動の責任をとるのは、自分です。自分の人生の損害に保障が欲しいのは分かりますが、責任取れんのかぁ!?は大人気ないですよ @kinjitou2000

2012-03-24 18:33:44
DEAD END BOT @junalow

「低線量の被曝では解析が困難なほど影響が小さい」のが前提だとすると、ホルミシスが仮説として残る理由がわからないのですが。世の中には低線量は影響なしとホルミシスを同時に主張される方もおられますので、その辺りの理論のミッシングリングをご存じであれば是非 @Yuhki_Nakatake

2012-03-24 18:44:16
naka-take @Yuhki_Nakatake

基本的に統計処理で、どのような解釈もできてしまうので、意見が分かれるのです。ホルミシスの本家はhttp://t.co/7WOv0SFfあたりです。根本的な理屈としてはストレス応答によって、生物の抵抗力が上がる、という論。http://t.co/QClzUY5C @junalow

2012-03-25 00:57:35
DEAD END BOT @junalow

ありがとうございます。統計手法が途中で変わっちゃうってヤツですね。 うさんくさい仮説になんで飛び付く人がいるんだろう?というのが最近の疑問だったんですが、精神論好きにとっては心引かれる要素があるのかなぁ、と思ったり。@Yuhki_Nakatake

2012-03-25 12:22:18
naka-take @Yuhki_Nakatake

んー、ホルミシス仮説の論拠としては、分子生物学的な証明もされていますよ。まとめのhttp://t.co/NYvgYWfvとかhttp://t.co/BHjTzOq2をご参照ください。ホメオパシーとはまた異なります。まぁヒトに対しての実証は統計的に厳しいのですが@junalow

2012-03-25 12:34:55
DEAD END BOT @junalow

おぉー。「低線量の場合はDSBは修復されない」あたりのくだり、非常に興味深かったです。なんかもう、良くできてるなー、としか言いようがないですね @Yuhki_Nakatake

2012-03-25 13:37:27
naka-take @Yuhki_Nakatake

人間のカラダってうまくできてるんですよ。まぁそういう仕組みがないとガンになりまくりで困りますがw 個人的には、一番確からしいのは閾値あり説だと考えてます。まぁ防護的にはLNTで良いと思いますし、逆にホルミシスを政府が採用してはいけないとおもいます。 @junalow

2012-03-25 13:42:56

↑ここまでは普通のやり取り

↓ここから今回のメインコンテンツ

白黒ダジャレうさぎ @DonnieTheDutch

影響が小さいときに研究者は普通,どのようにして影響を調べようとしますか?ただあきらめますか? RT @Yuhki_Nakatake 「影響が小さすぎて正確な計算ができない」の意味

2012-03-24 18:52:48

--僕の説明が初っ端からけっ躓いてるので、まずそこから

議論の前段階ともなる『小さな差を検出するには大量の検査数が必要』ということを説明します。

例えば、クラスA組とB組のどちらが身長が高いのか、というのを知りたかったとします。一番簡単なのは全員を調べることなのですが、そうせずに一人一人呼びつけて身長を測り、どっちの平均身長が高いかを当てるクイズをしてみるのです。

大元のクラスの平均的な身長に明らかな差がある場合、検体数は少なくて済みます。例えばクラスAが幼稚園児で、クラスBが大学生ならそれぞれ二、三人調べれば「多分Bの方が高いんじゃね?」という推察はかなり確からしいです。ですが、クラスAが高校2年生だった場合、ちょっとたくさん調べないと、どっちが高いか良く分かりません。これと同じようなことが統計解析でも起こります。

http://p.tl/9q0Hの例を見れば分かるように、2つの集団の小さな違いを「かなりの確率で正しい判断(有意な差)」をつけようとすれば、標本数が莫大に必要です。コメント欄のtonkyo_hanageさん(生物統計の記事が相当丁寧http://p.tl/Nvmo)のご提示のリンクhttp://p.tl/6qbBにあるようなエクセル表で、教科書的な計算をしてみます。例えば1Gyで10%のガン死亡率に差がでる場合を仮定します。そうすると、
100mSvの影響を見るために必要な検体数は7734人
10mSvの影響を見るために必要な検体数は732951人
1mSvの影響を見るために必要な検体数は72888114人
の検体を調べれば、「確からしい推察」として「統計学的な論拠」を示すことができます。

コメント欄のmido4299さんが御提示されたリンクhttp://p.tl/10X2を参照しても分かると思いますが、ICRPが提示している数字も大体そんなもんです。なぜこんなに検体数がいるのか、というのはお分かり頂けると思います。
(あと、ここに関して細かい統計のパラメータやモデルなどの突っ込みは勘弁してください 回答能力を超えます)

なので、低線量になればなるほど、解析が難しくなります。
現実問題、100mSvくらいならなんとか数のノルマを達成できるのですが、10mSvとか1mSvとか、かな~り数をこなす必要があり、研究するには労力・費用・時間のコストがとてもかかるので、例えば、本当は70万人くらい調べないとはっきりしたことがいえないのに、7000人しか調べられなかった、ということが多々起こります。サンプルの数が十分でないと、統計的な論拠が弱い論文になってしまうので、「はっきりしません」と表現されます。

これが低線量被曝の影響が「よくわかってない」とされる原因の一つです。調べられてはいるのですが、結果に曖昧さが含まれるのです。


naka-take @Yuhki_Nakatake

@hindu_kush420 普通は、分からない原因に対して、解決策を提示して、その改善策にのっとってもう一度はっきりさせようと試みます。低線量の影響が良く分からない原因として考えられるのが、「母数が小さい」と「交絡要因が大きい」なので、母数を大きく、厳密な対照をとって再解析です

2012-03-25 01:01:12

↑ここで「母数」と書いたのは間違い。言い訳になりますが、「んーなんて説明したらいいのか・・・サンプル数を増やすってのも大事だし、色んな年齢層の母集団をとって解析するのも大事なんだよなー・・・えーと、えーと、なんか良い言葉は。。。あ、母数、かな」としたのが致命的なミス。母数とは母集団の分布を表現する数なので、『典型的な語句の誤用』です。失礼しました。
。o0○(飲み会後のコメントってのがそもそもの問題なんだよね、これ)

白黒ダジャレうさぎ @DonnieTheDutch

なるほど.そうすると「低線量の影響」をもっとはっきりさせるためには「母数を大きく」したり「様々な他の要因が同じ」な対象を増やして調べれば良いわけですね RT @Yuhki_Nakatake 「母数が小さい」と「交絡要因が大きい」な

2012-03-25 06:26:41
naka-take @Yuhki_Nakatake

そうです。例えば、医療被曝や放射線従事者の健康被害の追跡調査は母数が大きいので、原子力事故よりも明確なデータが得られるのでは、と期待されています。で、そこら辺の知見も含めて通説となっているのが100mSvで0.5%の致死的ガンが増える、ていう考えです@hindu_kush420

2012-03-25 12:44:13
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