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<ナレーション> 福島原発事故の直後からアメリカは事故を分析するチームを立ち上げます。チャールズ・ミラー博士、この特別チームの責任者を務めました。特別チームはアメリカ原子力規制委員会・NRCの中に設置されます。
2012-04-30 00:24:18ミラー博士:NRCは地震から数時間後にはフクシマでの事故を知りました。私たちがまず最初にしたのは、緊急対応センターを立ち上げることでした。情報が不足していて、非常に混乱した時間でした。一刻も早く情報を集めようと努めました。
2012-04-30 00:28:45<ナレーション> メリーランド州にあるNRC本部。24時間体制で50人のスタッフが交代で事故の行方を分析しました。104基の原発を抱え、新たな原発建設も進めようとしているアメリカは、福島の事故に重大な関心を寄せました。
2012-04-30 00:33:29事故当時の音声:「原子炉が冷却できなくなっている」 「すべての原子炉が交流電源を喪失している」 「アメリカなら50マイル圏内は一斉避難だな」
2012-04-30 00:37:21ミラー博士:当初、情報はなかなか入りませんでした。日本にいるチームは東電や原子力安全・保安院から、思うように情報を入手できませんでした。
2012-04-30 00:40:29ミラー博士:機密事項なので詳しくは言えませんが、アメリカの情報機関のソースを使い、ようやく何が起きているのかを把握することができました。
2012-04-30 00:44:33<ナレーション> 去年の3月11日、激しい地震に見舞われた福島第一原発は自動的に運転を停止しました。しかし送電線の鉄塔が倒れるなどして、外部電源を喪失します。そして津波によって非常用ディーゼル発電機や電源盤が水をかぶり、ほぼすべての交流電源を失いました。
2012-04-30 00:51:23<ナレーション> やがて原子炉に冷却水が送れなくなります。高い熱を出し続ける炉心の冷却ができなくなりました。燃料棒が溶け落ちるメルトダウンが起き、大量の水素が発生します。水素は格納容器へ、そして原子炉建屋に漏れ出しました。
2012-04-30 00:56:04<ナレーション> 全交流電源喪失から24時間後、1号機が水素爆発。その後、3号機・4号機も続きました。福島の事故からどんな教訓を学ぶべきか。ミラー博士の特別チームは早急に提言をまとめるよう求められました。そして7月には報告書をNRCに提出します。
2012-04-30 01:01:08ミラー博士:もともとアメリカで開発された技術が土台になって、各国に原発が建設された。フクシマもそうだ。NRCはその時点で我々が持っている情報をもとに、迅速に見解を出すように求めた。
2012-04-30 01:07:38<ナレーション> 特別チームがまとめた原子炉の安全強化への提言。報告書は福島のような事故はアメリカでは起こるとは考えにくいとしつつも、12項目に及ぶ勧告の中でベントと呼ばれる装置の強化を求めました。
2012-04-30 01:11:26ミラー博士:同様のことがアメリカで起きた場合、私たちはベントを作動させることができるだろうかと考えた。特別チームはベントの設計を強化することは可能であると考え、NRCにそう勧告しました。
2012-04-30 01:16:12<ナレーション> 福島の事故ではこのベント操作の遅れが問題となりました。原発の格納容器に取り付けられているのがベントです。ベントは格納容器内の水蒸気や水素を緊急に逃がすための装置。事故で電源を喪失し冷却水が送れなくなると、中は水蒸気などで充満します。
2012-04-30 01:21:27<ナレーション> ベントして圧力を抜かなければ冷却水の注入も難しくなり、メルトダウンにつながります。 福島第一原発にもベントが付けられていました。しかし東京電力のマニュアルは万全ではありませんでした。電源を失った場合に、手動でベントを操作する方法が書かれていなかったのです。
2012-04-30 01:26:24<ナレーション> その結果、ベントに手間どることになりました。作業員が高い放射線量のなか1号機のベント作業にあたり、地震から丸1日経ってようやくベントの実施を確認しました。しかし、すでにメルトダウンは起きていました。
2012-04-30 01:30:15<ナレーション> ベントからおよそ1時間後、発生した水素によって建屋で爆発が起こり放射性物質が撒き散らされました。 これに大きな衝撃を受けたのが、ミラー博士の特別チームでした。アメリカには福島と同じ型のマークⅠが23基、改良型のマークⅡが8基あります。
2012-04-30 01:36:29ミラー博士:驚いたのはベントをする弁が、手の届かないところにあったりするんです。スパイダーマンのようなことをするようではダメなんです。
2012-04-30 01:42:00<ナレーション> アメリカで原発にベントが導入されるきっかけになったのは、1979年のスリーマイル島原発事故でした。起こるはずがないと思われていたメルトダウンが起きたのです。事故を教訓に重大事故・シビアアクシデントに備える対策が始まりました。
2012-04-30 01:45:52ミラー博士:スリーマイル島事故は、アメリカにとって目覚めの時でした。事故後、私たちは原発に多くの改良を加えました。日本がそれらをどの程度取り入れたかはわかりません。NRCはさまざまな原子炉について、重大事故の時に何が起こるかについてのリスク分析に乗り出しました。
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