NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災 原発の安全とは何か~模索する世界と日本~」 書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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<ナレーション> 福島第一原発の事故を教訓に、ヨーロッパで新たに作られました。事故では地震で外部から原発に電気を送る送電設備が壊れました。さらに想定を超える津波が襲い非常用の電源設備が水没、すべての電源を失いました。こうした事態にどこまで耐えられるかを調べます。
2012-05-20 07:52:38<ナレーション> 最初に調べたのが洪水対策です。想定を上回る洪水が来ても、メルトダウンが防げるかが焦点でした。これまでは非常用施設の入り口まで洪水は来ないとされていました。ストレステストでは想定を上回る洪水で、施設が水没した場合を評価しました。
2012-05-20 07:57:09<ナレーション> 施設の入り口は一つですが、2重の防水扉になっていました。万が一水没しても水が中に入らない設計でした。施設には2台のディーゼル発電機や電源盤、そして非常時に冷却水を送るポンプがあります。
2012-05-20 08:00:56<ナレーション> ストレステストではさらにメルトダウンが起きたあとの対策も評価します。福島第一原発の事故ではメルトダウン後に、大量の放射性物質が外部に漏れたからです。例えば格納容器内の圧力が高まった場合、気体を抜くベントには放射性物質をほとんど(外に)出さない機能が求められます。
2012-05-20 08:08:47<ナレーション> ミューレベルグ原発のベントには特別な設備がついています。薬品を入れた大きなプールで、放射性物質を1000分の1に減らせるといいます。電力会社は去年10月、ストレステストの結果を政府に提出しました。これを規制機関が審査します。
2012-05-20 08:19:40<ナレーション> 規制機関は国内5つの原発のストレステストを比較します。こうすることで弱点をあぶり出す狙いがあります。その結果ミューレベルグ原発に、大きな弱点が見つかりました。指摘されたのは川です。ミューレベルグ原発は目の前を流れる川から水をとり、原子炉の冷却に使っています。
2012-05-20 08:23:37<ナレーション> 例えば地震で土砂が崩れ川がせき止められて、水がなくなったらどうするのか。規制機関が求めたのは、1万年に1度の災害への対策です。実は他の4つの原発には2つの水源がありました。
2012-05-20 08:28:47<ナレーション> 川の水だけでなく地下水などを使った大型の冷却設備があり、たとえ一方が使えなくなっても原子炉を冷やすことができます。規制機関はより高い安全対策を備えている原発に合わせるよう指示したのです。
2012-05-20 08:32:22原子力安全検査局・フーバー:私たちは安全のことしか考えません。エネルギー政策や電力供給のことを考える必要はないのです。利益を優先する電力会社の事情も考慮しません。
2012-05-20 08:35:29<ナレーション> ミューレベルグ原発では3つの対策が検討されています。貯水設備を作る案、空気で冷却する設備を作る案、そしてトンネルを掘り別の川から水を引く案です。電力会社は6月までに対策を決め、規制機関に報告しなければなりません。費用は500億円以上といわれています。
2012-05-20 08:40:27電力会社・ロアバッハ社長:今後、新しい安全対策ができるかどうかは分かりません。もしコストがかかり過ぎるのであれば、廃炉にします。原発を維持できるかどうかは、安全対策のコスト次第なのです。
2012-05-20 08:45:26<ナレーション> スイスでは原発により高い安全を求める一方で、これまでのエネルギー政策の見直しも進みました。事故から1カ月後、一人の与党議員が政府に脱原発を提案、大きな議論を呼びました。
2012-05-20 08:49:41シュミット議員:日本よりも国土の狭いスイスで、原発事故が起きたら破滅します。人口も密集しています。国土の半分を放棄することになるでしょう。
2012-05-20 08:52:27<ナレーション> スイスでは電力の4割を原子力に頼っています。残りの6割は水力です。原発なしで電力は足りるのか、意見が対立します。議論の流れを大きく変えたのは、ある試算でした。政府のエネルギー委員会のウェステン・ハーゲン教授が行ったものです。
2012-05-20 08:56:56<ナレーション> 今後、安全対策が強化され原発のコストが上がります。その一方で自然エネルギーのコストは年々下がっていくため、2030年ごろには両者のコストが逆転するというのです。
2012-05-20 09:01:07ハーゲン:福島での事故は、原発の安全基準を大きく変えました。想定を上回る安全性が求められるようになりました。安全対策に莫大な投資が必要になるのです。
2012-05-20 09:03:40<ナレーション> 日本の原発事故から2ヵ月半、スイス政府は原発を推進するよりも、自然エネルギーなど新しい分野に力を入れることを閣議決定します。
2012-05-20 09:06:32ロイタルト・エネルギー担当大臣:福島の事故後、原子力が他の電力と比べて今でも優位と言えるのでしょうか。大いに疑問があると思います。
2012-05-20 09:09:27<ナレーション> 去年12月、スイスは寿命が来た原発から徐々に廃止、20年をかけて脱原発を進める方針を決めました。しかし原子力に替わるエネルギー資源を安定的に確保できるのか。大きな課題は残されたままです。
2012-05-20 09:13:37スタジオに戻ります
鎌田:大崎さん、スイスの徹底した安全対策を見てきたわけですけれども。それにしても、このリスクを減らすという取り組み、いかに難しいのかということが本当によくわかりますね。
2012-05-20 09:16:42