クローズアップ現代「社会を変える“ビッグデータ”革命」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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国谷:しかし医療の分野というのは、個人情報の扱いという非常に難しい課題も抱えています。その課題を抱えながら、積極的な利用を進めるアメリカの例をご覧ください。
2012-05-29 14:24:35VTRが流れます
<ナレーション> アメリカ・テキサス州にある地域の拠点病院です。ここでは病気の治療や予防にビッグデータを活用しています。患者の病名や診察の結果などをコンピュータに入力します。さらにカルテのメモなどから患者が何時に起きて1日をどう過ごすかや、住所・家族構成などのデータを収集します。
2012-05-29 15:11:50<ナレーション> 2000人以上の患者のこうしたデータを、手書きの文字も読み取れる最新のスーパーコンピュータで分析していきます。この病院がまず解明に取り組んだのが、うっ血性心不全という病気です。心臓の機能の低下で血液が肺などに溜まり、ときに呼吸困難になります。
2012-05-29 15:15:43<ナレーション> 再入院する可能性が高いのはどんな患者なのか。分析の結果、18の要素がわかりました。血圧やコレステロールが高いなど予想された原因が並ぶなかで、意外な要素も浮かんできました。老人ホームで暮らす人が、とりわけ目立ったのです。
2012-05-29 15:23:58<ナレーション> 施設によって介護の状況に差があり、患者の健康状態への目配りが不十分なことがわかりました。そこで病院では老人ホームを定期的に訪問するチームを結成、再発の可能性の高い患者の支援を始めています。
2012-05-29 15:27:11ジーベル医師:ビッグデータを分析することで、患者の姿が見えてきました。これを生かせば、その人にとってベストな治療を行っていけるのです。
2012-05-29 15:29:53<ナレーション> こうした医療のビッグデータ活用で、いま最も動きが活発なのが遺伝情報の分野です。ネット販売最大手のアマゾンなどの巨大IT企業が相次いで参入、先月開いた大規模なセミナーでもビジネスの可能性を訴えました。
2012-05-29 15:34:25<ナレーション> 人の身体の設計図に当たる遺伝情報は、1人で30億もの塩基の配列があります。1人分すべての解読にかつては数年かかりましたが、今では1時間ほどで読むことができるため、扱うデータの量が飛躍的に増えています。遺伝子とのかかわりを調べる対象も大幅に広がっています。
2012-05-29 15:38:38<ナレーション> 病気だけでなく、目鼻立ちなどの外見的な特徴まで対象になっています。これまでの研究では、一部の遺伝情報とガンなどとの関係しかわかっていませんでした。すべての遺伝情報の解析が可能になったことで、人体とのあらゆる要素とのかかわりを調べる研究が加速しています。
2012-05-29 15:43:13<ナレーション> こうした遺伝情報のビジネスを積極的に展開しているのが、検索サイト最大手のグーグルです。去年、遺伝子の解析技術で最先端のベンチャー企業に出資しました。共同で始めたのが遺伝情報のクラウドサービスです。
2012-05-29 15:55:59<ナレーション> インターネット上の巨大なサーバーに、各国の研究機関が集めた2000人近い遺伝情報を保管。これまで一部の研究者に限られていた情報に、誰でもアクセスすることができます。病気の名前を入力すると、該当する人の遺伝情報が一覧で表示されます。
2012-05-29 15:59:48グーグルベンチャーズ、ビル・マリス:現在DNAデータは爆発的に増えています。こうしたビッグデータを整理し、保管し、役立てるのが我々グーグルの使命です。
2012-05-29 16:04:51<ナレーション> 一方で究極の個人情報ともいわれる遺伝情報のビッグデータが、インターネットで多くの人に共有されることに懸念の声も上がっています。
2012-05-29 16:07:24大統領諮問委員会での発言:「DNAデータを集める段階では、誰がどう使うか説明が難しくなっています」 「民間企業が扱っている以上、DNAデータも売買される可能性があります」
2012-05-29 16:10:50<ナレーション> 今年開かれたアメリカ大統領の諮問委員会では、遺伝情報の提供者が特定されるリスクが高まっているという意見が出ました。遺伝情報の保管や、提供者への説明のあり方について議論が続いています。
2012-05-29 16:14:03ワシントン大マシス客員教授:価値の高い情報は、正しい目的以外にも使われやすいものです。これからますます大きな成果を得ていくには、分析の技術だけではなく…データを提供する個人の権利や考えを尊重するルールを作っていくことが重要なのです。
2012-05-29 16:17:34スタジオに戻ります
国谷:鈴木さん、この遺伝情報というのは本当に究極の個人情報ですよね。もちろん医薬品の開発とか要因解明の期待もあるんですけれども、このバランスをどう考えたらいいのか。
2012-05-29 16:50:18鈴木:遺伝情報は大きな活用が期待できる一方で、遺伝情報ならではの怖さがあると思っています。なぜなら遺伝情報というのは私の情報であるのと同時に、私の親や子供などの血縁者に対して影響を及ぼしてしまうデータだからです。
2012-05-29 16:55:06鈴木:こうしたデータは数年前までは取ること自体困難だったわけですけれども、それが非常に取りやすくなっているなかで…ちゃんとその情報が不適切に使われないように管理していきましょう。使う上での管理の制度作りが必要になると考えています。
2012-05-29 16:59:06