報道ステーション〝TSUTAYA図書館〟計画の問題点

2012年6月20日に放送された報道ステーション「〝TSUTAYA図書館〟計画」の書き起こしとともに、問題点を挙げます。
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古舘 伊知郎

はあ。小川さん、どう思います。今のお話聞いてて素直に思ったのはね。その、図書館っていうのは、蔵書がいっぱいある。つまり、本がいっぱい置いてある所という風に取るか。図書司書の、まあ現実はそうなってませんが、そういう方々の存在も含めて、検索エンジンなんかとは違って、自分が本をつかみ取ってそこから学んでまた悩んで考え抜いて、また別な本を借りてっていう、学び、教育の場だっていうように捉えるのとでは、これは正直言ってどっちだっていうように言えなくなってくる。

小川 彩佳

そうですよねえ。でも、まあ、全て、こう民営化という風になるのでなければ、わたしはいいんじゃないかなと思うんですよね。というのは、色んな使われ方をすると思うんですよ、図書館というのは。やっぱり古い蔵書を引っ張り出して論文を書いたり調べ物をする人もいれば、ゆったりくつろぎに行く人もいると思うので、こうした民営化なので、あの、バラエティ豊かに図書館の、ニーズがこう広がって、色んな種類の図書館ができたらそれはそれで楽しいのかなあという風に、思いますよねえ。

古舘 伊知郎

はあ。この問題ばっかりはわたし、ヤジロベエ状態…

小川 彩佳

(笑)

古舘 伊知郎

こうだなあと思ったら、そういうこともあるのかっていうことですか。

小川 彩佳

ちょっと軽いかもしれないですが。

古舘 伊知郎

くつろぎの方に、若干、力点を置いてますね。

小川 彩佳

そうですね、そうですね。

古舘 伊知郎

そういう空間、重視っていうか。

三浦 俊章

そうですね。ただあの、図書館っていうのは無料の貸本屋とか、古い本の倉庫ではないんですね。それはやっぱり活用する努力をやって、それでくらべて欲しいと思いますね。

古舘 伊知郎

なるほど。ほら、こう言ってますよ。

小川 彩佳

はい。ちょっと叱られてしまった気がします。

古舘 伊知郎

いやいや、考えて行かなきゃいけないですよ、これ。重要なことだと思うんですよね。これで、一点突破、全面展開になる可能性あるわけですから。

じゃあその他のニュース、参ります。


以上、書き起こし中の番組出演者の方々は、番組での表記のまま敬称は略させていただきました。


感想

前半残念、後半満足。

以下、詳細や出典についてのリンクやTogetterまとめを挙げつつ、特に残念な点について説明します。

既得権益

まず冒頭から、新旧対決、既得権益との戦いというイメージ自体が全くの虚像です。

実は樋渡市長がそのように見せかけようとしたがっているだけなのです。

実際に樋渡市長が既得権益と称しているのは以下の通りです。

図書館流通センター(TRC)

図書館に本を納める「図書館の本屋さん」なのだそうです。
市長は幾度となく「卸だ」と繰り返し言っていますが、卸ではなく書店だとのことです。

市長は昨年、TRCから本を買うのをやめて地元の本屋から100%直買いすると言い出しました。
http://hiwa1118.exblog.jp/14646724/

それがご覧のとおり、TSUTAYA(を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ、CCC)になってしまいました。
TRCがCCCになるだけで、地元の本屋はどこへ行ってしまったのでしょうね。

当の地元の本屋には、CCCとの競争を迫る始末です。
「民業圧迫だとか馬鹿な事言う人達」とは、不況にあえぐ地元の本屋でもあったわけです。
地元の本屋は市民ではないのでしょうか。
「市民に向いている」の実態がこれなのです。

ちなみにTRCは実際には、地元の本屋との共存を言っています。
たとえ儀礼上のことでもそれが普通でしょう。あからさまに競争を迫るなどありえません。
また、武雄市との対話を求めてもいるのに、応じてもらえないそうです。

地元同業者(雑誌・文具)と佐賀新聞

地元紙、佐賀新聞は早くから新図書館構想の問題点を把握し、5月20日に論説にまとめました。
論説では、図書館で販売されることになる雑誌や文具を地元で扱っている同業者の反発に触れました。
すると市長がこう吠えます。

「いつから佐賀新聞は地元同業者とグルになった利権集団になったんですか?」
http://hiwa1118.exblog.jp/15895120/

理解できますか?
進出してくる中央の大企業から地元の店舗を守ってこそ、少なくとも共存共栄をはかってこその首長が、論説を書いた新聞社と地元同業者を利権集団扱いしています。
地元の本屋に競争を迫っていることは既に述べました。

だいぶボロが出てきましたね。

日本図書館協会と図書館問題研究会

図書館の団体です。
両団体が行動を準備していると報じられた際、「これこそ、既得権益の権化だ!!」と叫んでいます。
http://twitter.com/hiwa1118/status/200474482320744448

しかし、市長は新図書館構想を立ち上げるまで、日本図書館協会を知らなかったそうです。
http://hiwa1118.exblog.jp/15958614/

どうして知りもしない団体が突如として既得権益の権化になるのでしょうか。

ようするに自分の考えを賞賛してくれない相手はなんであろうと既得権益の権化なのです。

そんなものは、新旧の対決でも何でもありはしませんね。

こんな市長にホイホイ載せられて、既得権益がどうこう語ってしまうような人はもっとよく事情を調べてください。
そうでなければ、事実の歪曲に荷担しているとみなされてもしかたがありませんよ。

社長と会った話

年末に代官山蔦屋書店をテレビで見たというのは、TV東京系のカンブリア宮殿、12月22日の回です。
公式サイトで動画も見られます。ビジネス話に耐性のある方はご覧になられてもよいでしょう。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/dogatch.html

市長の増田社長との邂逅のよくできた話は、そのカンブリア宮殿で増田社長が語った、エネオスの渡社長(当時)に会った時の話と酷似しています。
不思議ですね。話している本人も吹き出しながらしゃべっていますね。

6月4日の演告でも同じ話を詳しく語っています。
副社長に会いに行ったら社長がいた。社長と話していたらそこに高橋副社長もいた。
調子に乗ってしゃべりまくって、そもそも誰に会いに行った設定だったのか忘れてしまっています。
ついでに副社長の名前も間違えました。ウェブサイトの文章では中西副社長と訂正されています。

まとめ 平成24年6月定例会 6月4日本会議 市長の図書館関連部分の書き起こし。 4017 pv 48 2 users 2

経費の削減

閑話休題。ナレーションで一番のメリットと紹介された経費の削減。
実は削減でも何でもないことを、ちょうど画面に映し出されていた宮本栄八議員が質問で看破しています。

画面の通り、これまでの予算は1億1千万台から1億2千万台です。
1億4500万円という額はどこから出てきたのかと宮本議員はこの時尋ねました。
平成24年度の当初予算に、嘱託職員を追加する補正予算を含めた額だと答弁がありました。

ところで3月議会では、市長の無二の親友であることをTwitterのプロフィールで公言している吉川里已議員が、平成22年度の決算ベースであるとして1億4500万円という額を披露しています。

まとめ 平成24年3月定例会 3月16日一般質問 吉川里已議員 樋渡啓祐武雄市長が認識している武雄市図書館の問題点。 吉川里已議員は市長とは無二の親友。 2938 pv 10

おかしいですね。
説明のたびに根拠があっちこっちしている1億4500万円とはいったいなんなのでしょうか。
宮本議員は答弁を受けて、従来の額に上乗せした額だと指摘しています。
1億2千万台に2千万も上乗せしてから1割削減しても、全然削減にはなりません。

さらに言うと、武雄市図書館は歴史資料館という、博物館の機能も備えています。
CCCに委ねようとしている業務の範囲には、歴史資料の展示業務が含まれていないことが明らかにされています。
当然、その予算は1億4500万円とは別に必要となります。