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牧眞司の文学あれこれ2

牧眞司の文学あれこれ http://togetter.com/li/290388 あまりに前のまとめが長くなりすぎたので、続きを作りました。
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千織 @hioric_bits

残念つながりで報告しておくと「残念な日々」読了。深い家族愛の溢れた素敵な作品だった。汚かったけど。前半のはちゃめちゃが後半に向けて収斂してゆく感じがとても良かった。

2012-08-20 22:15:12
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

朝吹真理子『きことわ』(新潮社)を読んだ。これもメッタ斬りで高評価だったので興味を持った作品。冒頭の数ページを読んだだけで、只者でないことがわかる。夢が紐帯となって現在と過去とが継ぎ目なくつながり、しぜんに流れる意識がそのまま物語の動きになる。 (続く

2012-08-20 23:38:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しばらくして、いちおうの定点が現在にあることがわかるのだが、それがかならずしもこの小説の中心ではなく、目の前にあらわれる時間も、そして語っている視点も滑らかに変わっていく。と、技巧的にみるとちょっと凄そうだが、べつに読みにくい難しい小説ではない。 (続く

2012-08-20 23:39:03
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

記憶や印象というのは本来そうやって浮動するものだ。しかし、おおかたの小説は、それを虫ピンで止めるようにして書いてしまう。『きことわ』はそういう惰性化したルールなど関係なしに、物語をはじめる。

2012-08-20 23:39:18
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『きことわ』で面白かったのは、主人公のふたり――永遠子(とわこ)と貴子(きこ)――の関係だ。子どものころの仲良しが二十五年ぶりに再会し、すんなりと昔どおりの仲良しになる。 (続く

2012-08-20 23:52:17
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ふたりは気持ちのつながりだけでなく、子どものころ、ふざけあっているうちに手足がからまったり、髪がまつわったりという身体的な結びつき(?)もあり、ひとつ時間を共有したという記憶のつながりもある。 (続く

2012-08-20 23:52:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ただし、それは必ずしも一体ではなくズレやほつれがあり、そのあたりが不思議な感覚になってくる。そのあたりを作者はじつに巧みに描いていく。

2012-08-20 23:52:49
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

清水良典『あらゆる小説は模倣である。』(幻冬舎新書)読了。このタイトルを見て、ぼくなどはすぐボルヘスを思うが(本書でも中ごろに紹介されている)、清水さんはもっと通俗的なところから触れていく。ちかごろの日本で盗作騒ぎになったいくつかの例だ。 (続く

2012-08-21 23:31:18
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そんなスキャンダルみたいなことから、ベンヤミンやクリステヴァの論、さらには二次創作の話題まで、かなり欲張りにつめこんでいる。本書のいちばんの眼目は、オリジナリティというロマン主義的幻想の打破だ。論旨は明快で、快刀乱麻を断つがごとし。 (続く

2012-08-21 23:31:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ただ、ちょっと力業っぽく感じるところもある。清水さんは、やおいについて〔素材を借りながら自在に作り替える二次創作というもののゲリラ的本質が、より端的に表れている〕〔本書が提唱する模倣の可能性のなかの、先鋭な一サンプル〕と評価したうえで、 (続く

2012-08-21 23:32:18
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そうした〔オリジナリティへのこだわりをハナから持たず、パクリに躊躇のないネット世代〕が〔書物という何千年もの蓄積を持つデータベースに(略)もっとアクセスしてほしい〕と言う。 (続く

2012-08-21 23:32:40
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もちろん、清水さんの気持ちはそれとしてわかるのだけど、やおいの先鋭性は書物の文化と接続しにくいと、ぼくは思う。やおいが消費する(もしくは再生産する)のは主にキャラクターの属性や相互関係であって、テーマ展開・作品構成・文体ではないからだ。 (続く

2012-08-21 23:33:25
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

模倣とひとくちに言っても、要素(キャラクターや道具立て)を模倣するか、方法(技法)を模倣するかで、大きく違ってくる。そのあたりが詳しく書かれていたらもっと良かった。

2012-08-21 23:34:06
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

日本の小説にももうちょっと積極的に手を出そうと思い、本屋で目についた蜂飼耳の短篇集『紅水晶』(講談社)を読んでみた。うーん、残念ながらぼくの好みにはちょっと合わない。どの作品も主人公が生活のなかで感じた違和感、世界のなかでしっくりしない気持ちからはじまる。 (続く

2012-08-22 00:04:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そのとっかかりはだいぶ面白い。ただ、その違和感が主人公の内側にずっととどまっていて、ほかへとあまり広がっていかない。もっと普遍なテーマや情動につながるとか、世界もともに変容していくとか、そういうことはない。そのせいで、めんどくさい人の話になってしまう。 (続く

2012-08-22 00:05:19
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

また、ここに収められた作品はいずれもちょっと変わった表現がちょこちょこ出てきて、ひとつひとつは確かにユニーク。だけど、小説を動かすことにつながっていない。直喩や隠喩の面白さにとどまっている。詩的と言えばそうなのだろうけれど。

2012-08-22 00:06:09
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

日和聡子『螺法四千年記』(幻戯書房)読了。日本の現代文学はよく知らないので、あてずっぽうで買ってみた。コシマキには〔ふるさとはかくも妖しき〕とか〔〈此岸〉と〈彼岸〉、〈私と彼方(あなた)〉の《景色》を打ち立てた、新しい文学〕とか書いてある。もしかすると面白いかも、と (続く

2012-08-22 20:31:52
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

思ったが、ビンゴ! 予想以上の面白さでした。主人公の印南(いなみ)は、蜥蜴、大権現、管物(くだもの)へと姿を変えながら、あいまいな世界をうろつき、何度も何度も「螺法四千年記」なる文書と出会う。文書のなかにも印南がおり、くるりと小説空間がひっくりかえる。 (続く

2012-08-22 20:32:59
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その仕掛けは文学ではとりたてて目新しいものではないけれど、この作品は空間のたわめかたが柔らかくて、気持ちいい。 (続く

2012-08-22 20:33:28
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

仕掛けは別として、物語も面白い。読みながら連想したのは、北野勇作(水棲の生き物が活躍する)、筒井康隆(弁天様がいきなり登場)、田中啓文(弁天様の琵琶演奏がジャズっぽい)、町田康(全体にへろへろ感が漂う)。まさにぼくの好みだ。

2012-08-22 20:34:10
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ヴォロディーヌ『無力な天使たち』が面白かったので、おなじ作家の読みのがしていた作品『アルト・ソロ』(白水社)を読んでみた。普通の人間にまじって有翼人が暮らしている都市を舞台としたディストピア小説。くっきりとした体制批判ではなく、じわっと炙られる閉塞感があって、ちょっと風変わり。

2012-08-23 22:05:24
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

国枝史郎訳『恐怖街』(松光書院)を読んだ。昭和14年に出たアンソロジーというか、米国の猟奇パルプ雑誌から作品を選んだもの。収録六篇のうち、まちがいなくSFと呼べるものが二篇。あとの四篇も神秘や秘境や恐怖やらの要素があり。広義のゾンビ小説も。こういうの、けっこう好きです。

2012-08-23 22:11:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

パオロ・バチガルピ『シップブレイカー』(ハヤカワ文庫SF)読了。資源枯渇や海面上昇で荒廃した近未来のアメリカを舞台にしたボーイ・ミーツ・ガール。恋愛成分は控えめながら、ちょこちょこくすぐってきます。超格差社会の頂点(娘)と最底辺(少年)という組み合わせ。 (続く

2012-08-23 22:50:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

プロットでもうひとつの柱になるのが父子の確執で、ちょっとハックルベリー・フィンっぽい。オヤジがかなり酷くて、物語を通じて最大の悪役です。もちろんバチガルピ作品なので、グロテスクに歪んだ国際社会や人間性を無化するほどの貧困、それらを起因とする新しい習俗が背景に描きこまれている。

2012-08-23 22:50:50
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その点、篠田節子がいいよ。大震災で壊滅した東京からの避難民が、山村で暴徒化する「幻の穀物危機」なんて総毛立つよ。RT @Sakai_Sampo 多くのSFファンがそういうイヤなリアルを逃れるためにSF読んでるのもわからんではないけどさー。そればっかりじゃあ、全然ダメじゃん

2012-08-24 11:57:27
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