牧眞司の文学あれこれ その8(2015年)

牧眞司の文学あれこれ その7(http://togetter.com/li/673244)の続きです。
小説 文学 書籍
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牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
マデリン・アシュビー『vN』(早川書房)読了。ロボットにデフォルトで意識がある。その点ではアシモフよりさらに後退しているのだが、それはそれ。この作品は現代的な問題を扱った寓話なのだろう。物語は力強い。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
非差別者の人権とか、マジョリティとマイノリティの依存/搾取とか、そういう実際の社会にある歪みをロボットに仮託してみごとに模式化。たんなる告発におわらず、解決しにくさの構造もよく描かれている。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
神々廻楽市『鴉龍天晴』(早川書房)読了。超科学とオカルトが拮抗する「もうひとつの幕末」が舞台。東国日輪(帝国政府)vs西国大和(諸侯連合)の、「日ノ本の未来」をかけた決戦がはじまろうとしていた。そこに暗躍する《月蜘蛛》機関、開国を迫る欧米の圧力などが絡んでいく。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
この作品で目を引くのは細部に凝った設定の異様さと、それを支える文章の妙技だ(ただ、ときおり不用意にクリシェが用いられているのが惜しい)。キャラクター造型もうまい。時代小説としてのケレンもあり、アニメ的なくすぐり(萌え的なものも含め)もあって、それが良い塩梅にブレンドされている。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
荒俣宏編『怪奇小説大山脈Ⅲ』(東京創元社)読了。荒俣さんの長い「まえがき」と「作品解説」が書誌情報的に興味深く、また読みものとして面白い。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
この巻は大衆雑誌に埋もれていた作品を掘りだす狙いで、扇情的なグラン・ギニョルや臆面もないパルプ小説がまとめて読めるのが貴重。けっこう新鮮。現代の定形的エンタメより愛嬌がある。まあ、続けて読むと少々飽きてくるのだが。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
そのなかで随一の傑作が、カール・ハンス・シュトローブル「舞踏会の夜」。ちょっとポーの「赤き死の仮面」を思わせる展開だが、あれほどの象徴性の強さはなく、そのかわりにもっと不条理な展開。語りもイメージもシュルレアリスムの域に達している。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいはサミュエル・R・ディレイニー『ドリフトグラス』(国書刊行会)を取りあげています。 webdoku.jp/newshz/maki/20…
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
書評のさわり―― この作家の作品を読むうえで重要なのは、物語の進行を追うのではなく、むしろ枠組みの構造をつかむことだろう。喩えれば、夜空に散らばる星々のなかから、星座を見いだす感覚。 webdoku.jp/newshz/maki/20…
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
荒俣宏編『怪奇小説大山脈』Ⅰ~Ⅲ巻(東京創元社)収録作品のベストを選んでみた。 (1)カール・ハンス・シュトローブル「舞踏会の夜」Ⅲ巻 (2)フィッツジェイムズ・オブライエン「鐘突きジューバル」Ⅰ巻 (3)ジョン・メトカーフ「ブレナー提督の息子」Ⅱ巻
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
(4)H・S・ホワイトヘッド「唇」Ⅲ巻 (5)E・ブルワー=リットン 「モノスとダイモノス」Ⅰ巻 (6)A・E・コッパード「シルヴァ・サアカス」Ⅱ巻 (7)スティーヴン・クレーン「枷をはめられて」Ⅲ巻 (8)リチャード・マーシュ「仮面」Ⅰ巻
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
(9)クレメンス・ハウスマン「人狼」Ⅰ巻 (10)マッシモ・ボンテンペッリ「私の民事死について」Ⅱ巻 (11) モーリス・ルヴェル「赤い光の中で」Ⅲ巻 (12) ベネット・サーフ「近頃蒐めたゴースト・ストーリー」Ⅱ巻
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
月村了衛『機龍警察 火宅』(早川書房)読了。いやあ、これは文句なしに面白い。短篇集だが、すでに発表されている《機龍警察》を読んでいれば、その記憶が自然と甦るような“信管”が仕組まれている。元のシリーズがしっかりと作られていればこそだ(特に人物と組織の背景)。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
ハードボイルドとしての味わいはエクストラドライマティーニみたいなもので、フレーバー(情緒性)を微量にすることで、かえって香気をひきたたせる。まあ、作品によってその塩梅はちがうのだけど。ぼくが痺れたのは、元テロリストのライザが〈機龍兵〉搭乗者になる直前のエピソード「済度」。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
感心したのは、科学技術的な説明がけっこうあるのだが、それが物語を停滞しない点。それどころか、むしろ物語の勢いに寄与するくらいなのだ。わかりやすく書いているとかそういうことではなく、語りのテンポとか微妙なアクセルのきかせ方があるのだろう。うまい。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
篠田節子『インドクリスタル』(角川書店)読了。1250枚のボリュームながら、まったく無駄がなく、文章的にも物語的にも引き締まった傑作。いつもながら、幾筋もの伏線を絶妙の張力で操る筆力には舌を巻く。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
超精密電子デバイスの要となる希少な水晶を安定的に入手すべく、インドの僻村に入りこんだ藤岡(零細メーカー社長)は、インドの複雑な社会構造・習俗・常識に翻弄される。状況がめまぐるしく変化するが、すべてにリアリティがある。エンタメ的な作為がのぞくようなつくりではない。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
インドのなかには多様な文化層がせめぎあい、さらに日本からの赴任者、英国出身のボランティア、米国のオフィスワーカーなど、さまざまな価値観が物語中で拮抗する。一意的な正義はなく、単純に敵/味方で割り切れもしない。善意や良識さえも正当性を担保できない。この苦さは篠田節子ならではだ。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
水晶を巡るメインプロットに併走して、もうひとつの物語が点綴される。実はこちらのほうが作品を支配している。その焦点に位置するのが、アウトカーストの少女ロサだ。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
ロサはかつて生き神として崇められ、その後アウトカーストとして虐げられた娘だが、彼女自身は感情を露わにすることがない。きわめて聡明だが、何を考えているかわからない。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
藤岡はロサが置かれた境遇(売春さえ強いられる)を憂い、彼女の類い稀な能力を惜しみ、自立のための助力をするが、ロサは感謝するふうでもない。一方、彼女は周囲から「邪の種」と疎まれている。しかし、ロサが進んで災禍を引き起こしているという証拠はない。その素振りもない。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
ロサの存在性は、ヒロインとかファム・ファタルとか従来の(あるいは地上的な)規範では捉えきれない。強いていえば、ちょっと吉田秋生『吉祥天女』の小夜子に似ているかもしれない。しかし、ロサはさらに冷ややかで強靱で、孤絶している。最後まで読み、ぼくは立ちすくんだ。
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいはマデリン・アシュビー『vN』(早川書房)を取りあげています。 webdoku.jp/newshz/maki/20…
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
書評のさわり―― 人間側からみれば「vNはどんな人間でも好きになる」だが、vNにしてみれば「好きでもない人間の要求に否応なく従ってしまう」のだ。この非対称な状況は(略)マジョリティとマイノリティとのあいだの依存/搾取――の射影のようだ。webdoku.jp/newshz/maki/20…
牧眞司(shinji maki) @ShindyMonkey
イヴリン・ウォー『ピンフォールドの試練』 (白水Uブックス)読了。主人公はすでに一家をなしている小説家だが、精神状態が不安定になり、よせばいいのにそのまま船旅に出る。
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コメント

伊藤正一 @awaroba 2015年1月7日
まとめを更新しました。
伊藤正一 @awaroba 2015年10月20日
まとめを更新しました。
伊藤正一 @awaroba 2015年11月15日
まとめを更新しました。
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