- 2013年1月27日
- 2013年2月14日
甲状腺の被曝、解明の途上
【大岩ゆり】 東京電力福島第一原発事故によって、住民らは甲状腺局所にどれぐらい被曝(ひばく)したのか。国は昨年から、実態を解明するプロジェクトを進めている。1月末のシンポジウムでは、大半の福島県民は30ミリシーベルト以下という推計結果が中間報告された。推計の精度を高めるには課題も山積している。
福島県民は30ミリシーベルト以下か
放射性ヨウ素は半減期が8日と短く、事故直後の実測データはほとんどない。このため、甲状腺被曝の実態ははっきりせず、限られたデータから推計するしかない。
環境省は放射線医学総合研究所(放医研)に委託し、実態解明を進める。二つの手法で線量を推計中だ。半減期が比較的長く、内部被曝でのデータが豊富なセシウムの線量から、ヨウ素の被曝線量を推計する手法と、環境中に出たヨウ素の拡散状況のシミュレーションを使う手法だ。
シンポジウムでは主にセシウムを使う推計が報告された。甲状腺局所の被曝線量が最高とされた飯舘村の1歳児でも9割は30ミリシーベルト以下、それ以外の地区は27~2以下との推計だった。甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準の50ミリシーベルトを下回っていた。
- 2013年2月27日
- 2013年2月28日
- 2013年3月 1日
一部乳児、がんリスク増 福島原発事故の影響 WHO予測
【前川浩之=ジュネーブ、大岩ゆり】 世界保健機関(WHO)は28日、東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)による健康影響に関する報告書を発表した。大半の福島県民では、がんが明らかに増える可能性は低いと結論付けた。一方で、一部の地区の乳児は甲状腺がんのリスクが生涯で約70%、白血病なども数%増加すると予測した。日本政府は「想定が、実際とかけ離れている」と不安を抱かないよう呼びかけた。
全体では増加見えず
WHOはまず、環境の線量などから被曝線量を推計した。計画的避難区域の住民は事故後4カ月避難せず、県内産のものしか食べなかったという前提で推計した。この線量をもとに、当時1、10、20歳の男女の甲状腺がんと乳がん、大腸がんなどの固形がん、白血病になるリスクを生涯と事故後15年で予測した。
この結果、被曝線量が最も高いとされた浪江町の1歳女児は生涯で甲状腺がんの発生率が0・77%から1・29%へと68%、乳がんが5・53%から5・89%へと約6%、大腸がんなどの固形がんは29・04%から30・15%へと約4%増加、同町1歳男児は白血病が0・6%から0・64%へと約7%増加すると予測した。
- 2013年3月4日
- 2013年7月19日
【大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝(ひばく)をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。
作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。
東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。
東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。
実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の経験などから、甲状腺に100ミリ以上の被曝をすると、がんのリスクが高まると考えられている。従来は、40歳以上はがんが増えにくいとされていたが、最近は40歳以上でもリスクが増えるとの報告も出ている。
東電広報部は「甲状腺被曝線量が100ミリを超えていた作業員全員に対し、東電の負担で生涯、年1回の甲状腺の超音波検査を行う。検査対象者にはすでに通知した」としている。検査を受けた作業員の割合は確認中というが、関係者によると、甲状腺検査を受けた作業員は半数程度にとどまっている。
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〈甲状腺被曝(ひばく)〉 主に吸入などで体内に入った放射性ヨウ素による内部被曝。100ミリシーベルト以上被曝するとがんが増えるとされるが、チェルノブイリ原発事故では50ミリシーベルト以上でがんが増えたとの報告もあり、予防目的で甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準は50ミリシーベルトだ。
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朝日新聞としては、記事に疑問の声が上がっているのは認識しているとのこと
@asahi_apital @asahi_lifestyle 朝日新聞科学医療部記者大岩ゆりさんに非難が殺到していますが、朝日としては信用問題になりませんか?というか既に信用問題になってますが。http://t.co/N4w5NqXW
2012-07-11 14:49:57