「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

夜明けにはまだ早い。だが、真昼のように明るい空だ。黒人のボンズはウォッチタワーの窓際に立ち、光の源の方角を眺める。ガイオン上空を。そこに太陽が浮かんでいる。偽の太陽が。わけがわからずとも、打ちのめされる光景だった。視線を下げると、山道を粗末なバンがのぼってくるのが見えた。 1

2012-08-17 15:50:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワッザ……」彼は足早にウォッチタワーを降り、バンを出迎えた。運転席から出てきたのはオンダ=サンだ。ボンジャン・テンプルが世話になっている恰幅の良い行商人の女性である。ひどく憔悴した様子だ。「ドーモ、オンダ=サン。こんな時間に……」「わかるだろ、わかるだろ、ここから見えるだろ」2

2012-08-17 16:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オンダは震えていた。スミスは頷いた。「ガイオンか。あの空、気になってたんだ」「そうだよ、スミス=サン。ジゴクだよ」オンダは掠れ声で言った。そして、後ろのスライドドアを開けた。やはり、ひどく憔悴した女性が降りてきた。「ワッザ?親戚か?」「成り行きで連れてきたんだ!不憫でね……」 3

2012-08-17 16:08:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ドーモ……マツノキです」女性はオジギした。「ドーモ。スミスです。……そのう……」「家族とはぐれちまったんだ、この人は」オンダが口を挟んだ。「ワッザ?そんな、こんな山の中に連れてきたら尚更……」「仕方ないじゃないか!」とオンダ、「置いといたら、何されるかわからん状況だよ!」4

2012-08-17 16:13:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「じゃ、じゃあよォ、とりあえず中に……」スミスは促した。「あんたじゃ頼りにならんよ!ボンズ様はおらんか?」オンダはやかましく言った。「大変なんだ!ガイオンは!一体これは何なんだい?教えてもらわなきゃ!」「なんて言い草だ!」スミスは憤慨し、「あいにくアイツは下だよ!ガイオンだ!」5

2012-08-17 16:18:51
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「ナンデ!?」「役所に用事だよ、俺やニュービーどもが行くワケにゃ行かんよ」「知らないよ!水が飲みたい!」「……」マツノキを連れて門をくぐるオンダの後ろ姿に肩を竦めたスミスは、山道を再び振り返った。またも車だ。数台続いて来る。やはり避難のクチであろう。「ワッ……ザヘゥ?」6

2012-08-17 16:27:23
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「アッへフー!」頭に「米」と剃り込みアートしたヨタモノが鉄パイプを振り下ろす!「グワーッ!」寝巻き姿の中年男性は背中を殴られて倒れる!「助けてください!」「何を言っちゃってンの?」頭に「鹿」と剃り込みアートしたヨタモノが顔を踏みつけた。「インガオホーでしょッ!」「アイエエエ!」8

2012-08-17 16:37:59
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「なンかとにかく全部よこせばいいでしょ?俺らアンダー市民様でしょ?」「アイエエエ!」破壊されたガラスを踏み越え、三人目が店内から出てきた。頭には「苦」の剃り込みアート。「何も無いジャンよ?外れジャンよ?」「ア?」「現金無いよ?」「ア?おっさん、ナンデ?」「うちはギリギリです!」9

2012-08-17 16:43:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」鉄パイプ打擲!「アイエエエ!」「イヤーッ!」鉄パイプ打擲!「アイエエエ!」BOMB!通りの向こうで破裂音!燃える建物!「あっち明るくね?」「まずは殴ろうぜ!イヤーッ!」「アイエエエ!」「おまえ娘いないの?」「別居です!タスケテ!」「イヤーッ!」「アイエエエ!」10

2012-08-17 16:48:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!遠くで引っ切り無しに鳴り続ける恐るべき死のジングルも、彼らにとってはBGMに過ぎない。「こいつに火をつけよう!そしたらゲームソフト探そうぜ!」「女をヤりたい!」「うん!で、ライターある?」「あるある!」「ヤッター!」「アイエエエ!」11

2012-08-17 17:08:51
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「やめなさい!」凛とした静止の声が飛び、ヨタモノ達が顔を上げた。真っ直ぐに走って来るのは、簡素なバトルカフタン姿、荷袋を斜めにかけたボンズである。「ボンズじゃん?」「ボンズだね?」「ボンズ殴るの一番乗りマブいよ!」ヨタモノ「鹿」が鉄パイプを構え、踊りかかった。「イヤーッ!」 12

2012-08-17 17:14:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「セイヤッサーボンジャン!」ボンズはバトルチャントを唱え、鉄パイプを片手でいなした。「イヤーッ!」「グワーッ!?」ヨタモノは吹き飛び、建物シャッターに叩きつけられ、泡を噴いて気絶!恐るべき速度のケリ・キックだ!「イヤーッ!」さらに鉄パイプを両手でU字に捻じ曲げ、捨てる!13

2012-08-17 17:21:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「米」が躍りかかる!「セイヤッサーボンジャン!」ボンズは懐に滑り込む!「ボンジャン!イヤーッ!」「グワーッ!?」ボンジャン・ポン・パンチを腹部に受けた「米」は吹き飛んで「苦」にブチ当たり、もろともに気絶!「ボンジャンハイ!」ボンズはザンシンし、息を吐く。 14

2012-08-17 17:26:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイ、アイエエ」中年店主は震えた。「立てますか」ボンズは手を差し伸べた。中年店主は起き上がった。「ボンズ様、ありがとうございました」「安全なバリケードは数ブロック東にあります。そこに逃れなさい」彼は言った。「アイエエ……」中年店主は呻いた。「ボンズ様、一体これは何なのです」15

2012-08-17 17:31:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私にはわかりません」ボンズは正直に答えた。彼は禍々しきキョート城を見上げた。キャバァーン!キャバァーン!クリスタルはカンジを輝かせ、虹色光線を放ち続ける。店主は泣いた。「頑張って生きていてどうしてこんな!ブッダは寝ているのですか?」ボンズは彼を見た。「寝ているのは私達です」16

2012-08-17 17:34:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「これはインガオホーです」長髪の男は壇上に立ち、集まったまばらな人々に話しかけている。「アンダー民のリアルな息吹だ。我らは共感し、全てを差し出」キャバァーン!虹色光線が彼を直撃して殺す!光は撫でるように周囲の者たちを取り込み、まとめて灰色の死体と化す!「アイエエエ!」 17

2012-08-17 17:45:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!「アイエエエ!」人々は散り散りに広場から走って逃げようとする。運悪くヨタモノが暴れる通りへ入り込んでしまった者たちは、たちまち鉄パイプやバット、スタンガンの餌食だ!「アッヘ!マブ!」「アイエエエ!」「イヤーッ!」「アイエエエ!」18

2012-08-17 17:49:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「アイエエエ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「アイエエエ!」ボンズは非道狼藉者達を鉄拳制裁し、傷ついた人々を逃す。彼の表情は沈痛だ。果たすべき目的があるわけでもない。焼け石に水とはこの事である。彼が見上げた空には戦闘機の機影と、飛び交う光と煙の矢。19

2012-08-17 17:55:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

グゴゴゴゴルルルル、怪音とともにボンズの頭上に飛来した鉄塊は地上を睥睨するかのように旋回した。巨人鎧じみた巨大な肩・背部装甲からロケット噴射を繰り返し、新たな敵を探している。キィィィ、飛来した戦闘機がミサイルを発射、飛び去る。鉄塊に到達する前にミサイルは爆発せず消滅。 20

2012-08-17 18:01:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チチチチピピピ、鉄塊の走査音をボンズのニンジャ聴力(左様、彼はニンジャだ)が捉えるほどに近い。鉄塊に抱かれたサイボーグ存在が首を巡らせ、ふとボンズを見た。二者の視線が交錯した。ボンズは身構える。「……」サイボーグ存在は飛び去った戦闘機に向き直り、高速のミサイルを発射した。 21

2012-08-17 18:09:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

SMACK……飛び去る戦闘機にミサイルが命中、爆発しながら墜落した。ボンズは目を細めた。墜落地点に人がいれば、死傷者が出ただろう。キャバァーン!キャバァーン!鳴り続ける殺人光線の照射音。そして、遠くにあっても耳に届いた狂騒の声。「「ウオオオーッ!」」鉄塊は声の方角へ旋回した。22

2012-08-17 18:21:08
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