夏休みのためのブックガイド

入門書、一般書を中心に、分野別ブックガイドを作りました。
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シータ @Perfect_Insider

では昼に言った通り、「夏休みのための分野別ブックガイド」を流していこう。ひとまず基本的には入門書、一般書を中心にしていくつもり。ある程度専門的な本は個別に聞いてください。分かる範囲で答えます。

2012-08-18 23:08:58
シータ @Perfect_Insider

【法律】石山文彦『ウォーミングアップ法学』は憲民刑を分かりやすく押さえて法学部の最初で躓いたら読んでおくべき。各々個別には、長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』、内田貴『民法改正』、山口厚『刑法入門』はどれも新書で読みやすい。司法はダニエル・フット『裁判と社会』が常識を壊す良書。

2012-08-18 23:13:36

(追記)憲法解釈の論点については、内野正幸『憲法解釈の論点』日本評論社がよくまとまっている。

シータ @Perfect_Insider

【法哲学】自由については井上達夫『自由論』、民主主義については森政稔『変貌する民主主義』がコンパクト。統治の意味を考えるには安藤馨「あなたは「生の計算」が出来るか」(『RATIO 第6巻』収録)は挑発的な論文で面白い。法解釈論は中山竜一『二十世紀の法思想』がよいまとめになっている

2012-08-18 23:18:58

(追記)この分野は最近一般向けの良書が多く出版された。自由については大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か?』が看視の問題等現代的な自由をめぐる論点を扱っている。民主主義については早川誠『代表制という思想』、待鳥聡史『代議制民主主義』と代議制をめぐる良書が立て続けに出た。

シータ @Perfect_Insider

【政治学】国会の仕組みと動きは大山礼子『国会学入門』、選挙制度は加藤秀治郎『日本の選挙』がまとまっている。国家そのものについては坂本多加雄『国家学のすすめ』が好著か。政治をちゃんと考えるならマックス・ヴェーバー『職業としての政治』は古典だけど講演録だし短いので読みやすいと思う

2012-08-18 23:25:47
シータ @Perfect_Insider

【経済学】理論をちゃんと学びたい人は教科書を読むのが一番早い。数式なしのイメージ把握はジョセフ・ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』が良書。国際経済の制度は小林正宏・中林伸一『通貨で読み解く世界経済』が新書ながら中身が濃い。社会選択理論は佐伯胖『「きめ方」の論理』がベスト

2012-08-18 23:29:34

(追記)経済史は、日本経済はやや古いが伊藤修『日本の経済―歴史・現状・論点』、世界経済は猪木武徳『戦後世界経済史』がまとまっている。税制については三木義一『日本の税金』が入門としてはよいと思う。

シータ @Perfect_Insider

【国際関係】高坂正尭『国際政治』は40年以上前の本ながら今なお色あせない名著。正戦の問題は押村高『国際正義の論理』がいい手引き。グローバルな貧困はロバート・ゲスト『アフリカ――苦悩する大陸』が手堅いルポ、ポール・コリアー『最底辺の10億人』は棘はあるが鋭い論で切り込んでくる。

2012-08-18 23:33:21
シータ @Perfect_Insider

【環境・リスク】中谷内一也『リスクのモノサシ』はリスクというものを考える際の基本書。環境問題をドライな視点から眺める小林和之「未来は値するか」(『法の臨界 第3巻』収録)は挑発的な論文。生物多様性や生態系は花里孝幸『自然はそんなにヤワじゃない』がやはり挑発的な議論を展開している。

2012-08-18 23:37:49

(追記)
【国際情勢(地域別)】地域別に挙げていくと
アメリカ:渡辺将人『見えないアメリカ』
ロシア:武田善憲『ロシアの論理』
中国:園田茂人『不平等国家中国』
韓国:浅羽祐樹、木村幹、佐藤大介『徹底検証 韓国論の通説・俗説 日韓対立の感情vs.論理』
東南アジア:岩崎育夫『アジア政治とは何か - 開発・民主化・民主主義再考』
中東:酒井惠子『<中東>の考え方』、山内昌之『中東 新秩序の形成―「アラブの春」を超えて』
アフリカ:平野克己『経済大国アフリカ』
などか。全般的に扱う本としては池上彰『そうだったのか!現代史(1・2)』はコンパクトな整理としてはよいと思う。

(追記)
【日本社会の諸問題】これも羅列的に挙げていくと
医療:池上直己『ベーシック 医療問題』
農業:神門善久『日本の食と農――危機の本質』
労働:大久保幸夫『日本の雇用』
人口:河野稠果『人口学への招待』

シータ @Perfect_Insider

【科学哲学】入門書としては伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』と戸田山和久『「科学的思考」のレッスン』の前半部分(後半は個人的には微妙だった)がいいと思う。科学史から科学がいかに出来ているか知るには江沢洋『だれが原子をみたか』が原子の存在をめぐる科学者の苦闘が書かれてて面白い。

2012-08-18 23:42:14
シータ @Perfect_Insider

【言語】認知言語学を知るには今井むつみ『ことばと思考』、ソシュールからの流れを押さえるには町田健『ソシュールと言語学』がよくまとまっている。生成文法関連はスティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能(上・下)』が書き方もうまくて一気に読ませてくれる。

2012-08-18 23:45:10

(追記)メタファー論については、最近はピンカーが生成文法から離れてきており、スティーブン・ピンカー『思考する言語(上中下)』が分かりやすい解説になっている。日本語の歴史は山口仲美『日本語の歴史』が簡潔だが面白い記述が多い印象だった。

シータ @Perfect_Insider

【芸術】現代アートを考えるにはアメリア・アレナス『なぜ、これがアートなの?』が作品をたくさん写真入りで取り上げてて良書。デザイン論は原研哉『デザインのデザイン』が軽いエッセイで読みやすい。音楽史は岡田暁生『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』がタイトル通りのなるほどの問いかけ

2012-08-18 23:50:51

(追記)より全体的な音楽史は岡田暁生『西洋音楽史』が定評がある。絵を見るポイントを知るには布施英利『構図がわかれば絵画がわかる』が構図や色彩等の絵画の法則を解説している。建築については大澤照彦『高層建築物の世界史』がタイトルそのもので面白かった。

シータ @Perfect_Insider

【哲学】永井均『<子ども>のための哲学』は自分が中学の頃に読んだ忘れられない本。野矢茂樹『哲学の謎』は様々なトピックスを対話編で取り上げてまさに「哲学」する。現代哲学は青山拓央『分析哲学講義』が数少ない入門書になっている。

2012-08-18 23:56:22
シータ @Perfect_Insider

【宗教】日本の宗教を概観するなら末木文美士『日本宗教史』、特に神道に絞って知りたいなら菅野覚明『神道の逆襲』が面白い。ニュースでもよく出る原理主義については小川忠『原理主義とは何か』が幅広くまとめている。特にキリスト教系は飯山雅史『アメリカの宗教右派』が簡潔で分かりやすい。

2012-08-18 23:59:52

(追記)キリスト教成立と新約聖書がいかに作られたかを知るには加藤隆『歴史の中の『新約聖書』』が良書。キリスト教の教義などは久米博『キリスト教 その思想と歴史』が分かりやすい。仏教の中でも特に鎌倉新仏教の浄土教系列については釈徹宗『法然親鸞一遍』が三者の教義の共通部分と違いを解説している。

シータ @Perfect_Insider

【教育】戦後日本の教育をめぐる問題とその変遷は苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』が非常によく分析している。学歴をめぐる社会状況は吉川徹『学歴分断社会』が鋭い指摘をしている。日本人の教育観は広田照幸『日本人のしつけは衰退したか』が固定観念をデータで覆していく好著。

2012-08-19 00:04:20

(追記)
【歴史(日本史)】再び羅列的に挙げていくと
井上章一『日本に古代はあったのか』
呉座勇一『戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか』
速水融『近世日本の経済社会』
尾藤正英『江戸時代とはなにか』
井上寿一『戦前日本の「グローバリズム」 一九三〇年代の教訓』
吉井守男『日本の古都はなぜ空襲を免れたか』
日暮吉延『東京裁判』

ここからだいぶたった後の追記

シータ @Perfect_Insider

昨日、一昨日と数物系の入門書を流してきたが、社会科学、人文科学の入門書については基本的に以前書いたブックガイドhttp://t.co/BV0rqf1K8Pを参考にしていただければ大体出ていると思う。ただ、トピックスでいくつか抜けているものもあるので、それを少し書いておく。

2014-04-09 23:05:27
シータ @Perfect_Insider

日本経済なら小塩隆士『効率と公平を問う』が要を得た指摘をしている。歴史哲学ならば岡田英弘『歴史とはなにか』がタイトルそのもので面白い。応用倫理学なら加藤尚武『脳死・クローン・遺伝子治療』が幅広い生命倫理の問題を鋭い議論で扱っている。日本文化論は迷わず船曳建夫『「日本人論」再考』

2014-04-09 23:08:35