◆ザ・ヴァーティゴVS地底科学世界◆その1◆
ザ・ヴァーティゴは素早く炭酸水に指をひたした。親指と人差し指でつまんで、三方を祓った。「……」「……」ウエスギと大臣が彼の仕草を注視した。 7
2012-08-14 23:56:55「オホン!」ザ・ヴァーティゴは咳払いを一つした。「これは、アー、私の故郷で、どうしてもやらなきゃいけない、宗教上の習慣てやつでして」「……」ウエスギはしかめ面をした。「スミマセン。いや、ほんと」ザ・ヴァーティゴは炭酸水に指を浸し、普通に洗った。「いただきます!」 8
2012-08-15 00:00:09「貴方がたのお力、感じ入っております」カラマス大臣は身を乗り出して熱っぽく言った。「さきの戦い、死者は一人も出なかった!」「そりゃよかった」ザ・ヴァーティゴは器を手に取り、岩塩のスープを啜った。二人を注意深く眺めながら、器を戻した。「私の銃が役立って何よりだ」とウエスギ。 9
2012-08-15 00:07:53「このドメインは人類の希望だ」とカラマス。「いや……希望も何も。ここが終われば、人類は終わりです」彼は悔しげに唇を噛んだ。「終わらんよ」ザ・ヴァーティゴは言った。「俺がいるからな」「その自信のほどを戦いでも見せてもらえると良いのだが!」とウエスギ。 10
2012-08-15 00:11:56「……キッシュ?」ザ・ヴァーティゴは微かな声で呟き、ウエスギを見た。ウエスギは気づかない。ザ・ヴァーティゴは息を吐き、キッシュをフォークで刺し、食べた。一つ。二つ。「……」カラマスがザ・ヴァーティゴを見た。ザ・ヴァーティゴは頷いた。「この世界の食べ物は美味ですな!」 11
2012-08-15 00:14:17◇ひとくち?食べ尽す?間を取って二つにしたよ。ギリギリOKって感じじゃないか。やりやがったな?だが俺のリスクマネジメントでなんとか着地した。早く香草焼きちゃんを食べたいぜ!◇
2012-08-15 00:15:51「して、シュタインウルフガー博士は?」ウエスギはカラマス大臣を見、それから香草焼きを切り分け、上品に食べた。「そうそう。居場所がわかったとか」ザ・ヴァーティゴは既に香草焼きを食べている。それからキッシュを。「美味ですな。このキッシュは」「……見つかりました」とカラマス大臣。12
2012-08-15 00:20:40「第8ドメイン跡地に、大規模な実験施設を作っております。火星人の精鋭もそこに」「フウーム」ザ・ヴァーティゴは顎をさすった。「そんなら、このキツネと二人で早速行ってひと暴れしてやりますよ」「なんと勇敢な!」「あんたらの武器は効かないからな。それなら二人で暴れるのが話がハヤイ」13
2012-08-15 00:24:45「……ま、彼の話は乱暴ですが、平たく言えばそうです」ウエスギは香草焼きを賞味し、黒ワインを一口啜った。「お任せ頂きたい」「さすがです」カラマス大臣は感激した。彼らは知る由もない……頭上のシャンデリアの上で奇怪な火星手裏剣を構えるスパイが虎視眈々と狙っている事を!14
2012-08-15 00:27:39「え、上!?」ザ・ヴァーティゴは突然叫び、立ち上がった。「クセモノダー!」彼は叫んだ。「何!」ウエスギが椅子を蹴って立ち、腰の銃を構えた!銃の先端部は縞模様の球体で、ウエスギが引き金を引くや、リップル状の光線が飛び出す!POW POW POW POW!15
2012-08-15 00:30:25シャンデリア上で今まさに火星手裏剣を投げつけんとしていたアッサシンは、オーバーテクノロジー拳銃の光線を食らうと痙攣して即死した。ザ・ヴァーティゴが素早くキッシュの皿を掴んで退避させる。アッサシンがテーブルに落下、破壊した。「嗚呼!」カラマスは飛び下がり、侍女が悲鳴を上げる。 16
2012-08-15 00:34:17「ありがとうございます!危ないところでした」カラマスが汗を拭った。ザ・ヴァーティゴはキッシュを食べながら、「礼には及びません。しかし美味ですな、これは」「既に敵の手が!」ウエスギは懐からモノクルを取り出し、装着して火星人を見下ろす。「ご覧なさい。なにか隠し持っておるようだ」17
2012-08-15 00:39:06ウエスギは膝をつき、八角形の大理石を取り出す。彼の狐尻尾がパタパタと動いた。「これは軌道コンパス!」「何だそりゃ」ザ・ヴァーティゴがキッシュを食べながら覗き込む。「軌道コンパスはこの地までの進行ルートを映し出す。つまり逆に辿ればこのアッサシンの出発点が……第8プラント!」 18
2012-08-15 00:46:19「おい、じゃあ軌道コンパスとやらのルートを辿れば、安全に博士のところまで行けるんじゃないか?」ザ・ヴァーティゴは言った。ウエスギは頷いた。「おそらく」「そうか」彼は通りがかった侍女に囁いた「何時に仕事あがるんだい?」「いけませんわ」侍女は微笑んだ。 19
2012-08-15 00:49:29ウエスギはザ・ヴァーティゴをしかめ面で二度見した。しかし立ち上がり、カラマスに向かって言った。「こうしてはおれません。早速出発致します」「本当ですか?その前にスパを試されては」「スパだって?」とザ・ヴァーティゴ。ウエスギは被せるように言った「いえ、結構。時は金なりと言います」20
2012-08-15 00:53:37「わかりました!おい、彼らをプテラノドン厩舎にお連れせよ」「わかりました」衛兵の一人が敬礼し、二人を案内する。ウエスギとザ・ヴァーティゴは早足で続く。「何をやっておるか!破廉恥な」「いや、テレパスで指示が……」「テレパスを口実にするでない!」ウエスギはピシャリと言った。 21
2012-08-15 00:58:23二人の異世界戦士は厩舎につながれたプテラノドンにまたがった。プテラノドンは二人乗りで、前にウエスギ、後ろにザ・ヴァーティゴが座る。「クエーン!」プテラノドンが叫んだ。「おほッ!なかなか面白そうだ!」ザ・ヴァーティゴが歓声を上げた。ゴウン……飛行口シャッターが開いてゆく。 22
2012-08-15 01:00:31「軌道コンパスの調子は?」とザ・ヴァーティゴ。「うまく動いている」とウエスギ。「よし!ハイヨー、シルバー!」ザ・ヴァーティゴは手綱を振るった。「クエーン!」プテラノドンが飛び立つ……巨大鍾乳洞を通過し、黄色い空の下へ! 23
2012-08-15 01:01:57