政府・文科省の科学技術政策文書から「安全・安心」の理念を探ってみた
- KutaroMichikusa
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成句ともなった「安全・安心」の政策起源を探るべくネット検索したが、公的文書としては文科省関係くらいしか引っ掛からない(警察や自治体の「生活防犯」関係文書はたくさんある)。以下、文科省関係の「安全・安心」論議の経緯メモを30TWほど。(あとで整理)
2012-10-11 19:12:48○1996年7月2日閣議決定 科学技術基本計画 ← 政策理念としての「安全」も「安心」も含まれていない。 http://t.co/HaecLt0W
2012-10-11 19:13:52○2001年3月30日閣議決定 第2期科学技術基本計画 理念1から3まであるが、関係するのは理念3「安心・安全で質の高い生活のできる国の実現に向けて-知による豊かな社会の創生-」 http://t.co/wj5Rywy8
2012-10-11 19:14:32まずこの文書の冒頭を引用。「20世紀の最後の10年間に世界は大きく変貌した。冷戦の終結によって、局地的な紛争はなお一部に生じてはいるが、全世界的に見ると多くの人々が平和を享受することができるようになってきた」←9.11テロの半年前の文書であることに留意。
2012-10-11 19:15:17理念3抜粋「「安心・安全で質の高い生活のできる国」とは、本格的に到来する高齢社会において国民が健康に生活できるよう疾病の治療・予防能力を飛躍的に向上させること」「自然及び人為的な災害やそれによる被害を最小限にとどめること」(続く)
2012-10-11 19:16:04(承前)「人間活動の基盤をなす食料やエネルギーの安定供給を図ること」「地球環境と調和した産業活動や経済的発展を実現すること」「安定した国際関係を維持するとともに、人々が安心して心豊かに、質の高い生活を営むことのできる国である」
2012-10-11 19:16:39(冷戦終結とテロ戦争の狭間であることを反映して、ここでの「安心・安全」はこれからの平和で豊かな生活が備えるべき一つの価値指標と位置づけられているように読める。視線の先に「個人」の存在が窺える)
2012-10-11 19:17:45(この「基本計画」決定以後2003年までの不安事象→2001年同時多発テロ・アフガン侵攻。2002年雪印牛肉偽装、東電原発損傷隠蔽、不審船事件・北朝鮮日本人拉致を認める。2003年有事法制成立、宮城県北部地震、香港で新型肺炎SARS、翌年にかけて鳥インフルエンザ国内初感染、など)
2012-10-11 19:18:30○2003年4月「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」が設置される。(科学技術・学術政策局長決定)http://t.co/geZ81W95
2012-10-11 19:20:01(局長決定抜粋)「社会システムの脆弱性の克服や科学技術の発展に伴い生じる陰の部分の解決は安全かつ人々が安心して生活できる社会の構築に不可欠」← 「社会システム」への危機意識が登場。
2012-10-11 19:20:39○2004年4月同懇談会報告書 http://t.co/YQ8Rh2EF (まえがき抜粋)「近年、大災害や事故の多発、世界的な感染症の流行、テロの頻発や国内の治安の悪化など、社会の安全・安心を脅かす危険や脅威が顕在化」
2012-10-11 19:21:22(第1章抜粋1)「当懇談会では、豊かな社会の実現には、まず、その基盤となる社会における安全と安心(以下、安全・安心と記す)を確保し維持することが重要であるとの認識に基づき」← 「安全・安心」の位置づけが豊かな生活の価値指標からその前提条件に微妙に変化している。
2012-10-11 19:22:19(第1章抜粋2)「安全・安心に対する国民の受け止め方については…安全は自ら努力せずとも与えられるという受動的な態度と、災害や事故に遭遇してもそれは運命もしくは宿命であり、やり過ごせば自然と復旧するといった…考え方が歴史的に存在する」
2012-10-11 19:23:12(第1章抜粋3)「このような安全への受動的な態度と危機に対する「宿命論」的な考え方が妨げとなって、訪れた危機への対応を経験として蓄積し防止策を見直す、危機に対して2重・3重に防御策を講じる、といった危機管理体制が我が国には根付きにくくなっている」
2012-10-11 19:23:59(ここでは「社会システム」維持にとって国民の平和ボケが障害物と意識されているように読める。「安全・安心」の実現対象が人から社会システムに比重移動しているようだ)
2012-10-11 19:25:17(第2章抜粋1)「安全とは、人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されることである。ここでいう所有物には無形のものも含む」← 「人」とは別個に「共同体」やモノを併記。
2012-10-11 19:26:00(第2章抜粋2)「社会システムが、利用者である個人の行動と密接に関連しているということは、社会システムの安全が何らかの方法で確保できても、安全を考慮せずに個人が行動すれば、安全な社会は容易に崩れることを意味している」← 「人」とは独立した「社会システムの安全」という見方。
2012-10-11 19:26:53(第2章抜粋3)「起こりうる全ての出来事を人間が想定することは不可能であり、安全が想定外の出来事により脅かされる可能性は常に残されている。そこで、リスクを社会が受容可能なレベルまで極小化している状態を安全であるとする」
2012-10-11 19:28:01(第2章抜粋4)「安全を高めようとすればするほど、利便性や経済的利益、個人の行動の自由等が制約され、プライバシーが損なわれる可能性がある。よって、安全性を向上させる際には、このようなトレードオフの関係を考慮する必要がある」
2012-10-11 19:28:58(第2章抜粋5)安心について。「個人の主観的な判断に大きく依存するものである」「人が知識・経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況にならないと信じていること、自分が予想していないことは起きないと信じ何かあったとしても受容できると信じていること、といった見方が挙げられた」
2012-10-11 19:29:36(第2章抜粋6)「完全に安心した状態は逆に油断を招き、いざというときの危険性が高いと考えられる。よって、人々が完全に安心する状態ではなく、安全についてよく理解し、いざというときの心構えを忘れず、それが保たれている状態こそ、安心が実現しているといえる」
2012-10-11 19:30:29○2006年3月6日安全・安心科学技術委員会設置 http://t.co/BGlLl5id 「第2期科学技術基本計画…期間中、国内外における自然災害及び人為的脅威等による国民生活への不安がますます高まりを見せている」
2012-10-11 19:32:00○2006年3月23日「安全・安心科学技術政策に関する論点メモ」(安全・安心科学技術企画室)http://t.co/7j9G0hTD
2012-10-11 19:32:36(論点メモ抜粋)「「安全」及び「安心」についての基本的考え方 当面、国民・社会の安全を脅かす事象・事態に対して、科学技術的観点から可能な取組により安全を確保し、これらの結果として国民が安全であることを理解できることを目指す」
2012-10-11 19:33:24○2006年3月28日閣議決定 第3期科学技術基本計画 http://t.co/K5tI2LX6 理念3 健康と安全を守る~安心・安全で質の高い生活のできる国の実現に向けて~「国家・社会レベルから生活者の暮らしに至るまで、安全が誇りとなり世界一安全と言える国を実現する」
2012-10-11 19:34:33