量子力学に関する質疑応答

(数学的に)余計なことまで書きすぎて質問にほとんど答えていないのでひどい. 斉藤正彦の線型代数入門はこれを参考にしていただきたい http://togetter.com/li/108307
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相転移P @phasetr

@phasetr まず固有値を定義する前にスペクトルを定義したいが,さらにその前にレゾルベントを定義する.無限次元では,有限次元と違ってダイレクトに「固有値」を定義するのが難しいためだ

2012-12-23 23:27:50
相転移P @phasetr

@phasetr 有限次元での線型代数は既知として雑に説明する.有限次元で線型作用素Aの固有値・固有ベクトルはAx=λxとなるλとxのことだった.これは(A-λI)が可逆でないということだった.レゾルベントはこの逆で,A-λIが可逆にならない元(および元全体の集合)のことだ

2012-12-23 23:30:12
相転移P @phasetr

@phasetr ちなみに正確な定義はもっと面倒だ.興味のある向きは量子力学の数学的構造のP116-119までを読んでほしい.一般の作用素に対するレゾルベントの定義と閉作用素に対する定義の両方が書いてある.先の定義は閉作用素に対する定義(の簡略版)だ

2012-12-23 23:32:17
相転移P @phasetr

@phasetr これだけで既にご理解いただけたと思うが,物理の人にこの意味で無限次元での「固有値」の説明をしても無視される.その意味で清水さんもあの程度に適当に書いたのだとは思う.とてもとても気に入らないが,その辺は物理学科卒としては異常者の自覚がある私なので実に私の方がアレだ

2012-12-23 23:34:26
相転移P @phasetr

@phasetr で,元に戻る.レゾルベントを定義した:ρ(A)とかく.線型作用素Aのスペクトルは次のように定義する:σ(A)=C\ρ(A).有限次元のときと定義は同じだが,σ(A)が行列式からダイレクトに定義できないので,こういう回り道を通ることになる

2012-12-23 23:37:49
相転移P @phasetr

@phasetr せっかくなので連続スペクトルもきちんと定義しておこう.A-λが単射,ran(A-λ)が稠密,(A-λ)が非有界となるλがの全体をAの連続スペクトルという.あとA-λが単射だがran(A-λ)が稠密でないλの全体を剰余スペクトルという

2012-12-23 23:40:30
相転移P @phasetr

@phasetr AΨ=λΨとなるλ全体の集合を点スペクトルといい,各λを固有値というのは同じだ.剰余スペクトルというのを定義したが,自己共役作用素(いわゆるエルミート作用素)は剰余スペクトルがないことが示せるので,実質点スペクトルと連続スペクトルだけ考えればいい

2012-12-23 23:42:52
相転移P @phasetr

@phasetr とりあえずここまで来て,清水本P44の「固有値スペクトル」という言葉,数学的にはかなりアレな言葉遣いであることが分かって頂けただろうか.分かって頂けない場合は私の不徳のいたすところであり,猛省したい

2012-12-23 23:51:33
相転移P @phasetr

@phasetr しかし清水本P44の記述のアレさ,この程度で終わると思ったら大間違いだ.まだ私は固有値の集合である点スペクトルと連続スペクトルと剰余スペクトルしか定義していない

2012-12-23 23:53:30
相転移P @phasetr

@phasetr 連続スペクトルの記述は物理として困るし,離散スペクトルの定義は数学として別途あるのが困る

2012-12-23 23:55:18
相転移P @phasetr

@phasetr とりあえずだ,固有値と連続スペクトル以外のスペクトルの分類があって,これからその記述をするので,固有値と連続スペクトルは一旦忘れていただきたい

2012-12-23 23:56:13
相転移P @phasetr

@phasetr ここからの記述は量子現象の数理に書いてあるので,興味のある向きはそちらを参照されたい.先程書いたとおり,この本を理解したところで物理が分かるようになるわけではないことを注意した上で読んでほしいけれども

2012-12-23 23:57:43
相転移P @phasetr

@phasetr 第5章の記述になる.摂動論を考える上で大事な分類として「固有値の安定性」というのがある.基底状態は固有値(数学的な意味で)なので,「固有値の摂動とその安定性」を考えることは物理としても大事になる(ということにしてほしい)

2012-12-23 23:59:09
相転移P @phasetr

@phasetr P278に「離散固有値と離散スペクトル」の定義がある.P_λという射影がP274で定義されているが,ここで定義は書かない.ちなみにバナッハ空間(有界線型作用素の空間)に値を取る複素積分で定義される.これ自体は物理の本にも書いてある

2012-12-24 00:01:46
相転移P @phasetr

@phasetr (閉)作用素Aのスペクトルの点,λがスペクトルσ(A)の孤立点でかつranP_λが有限次元のとき,これを離散固有値という.(固有値になることは別途示せる.)又離散固有値の集合を離散スペクトルという.また,スペクトルの中で離散固有値の補集合は真性スペクトルという

2012-12-24 00:04:14
相転移P @phasetr

@phasetr というわけで清水本の離散固有値の記述は困る.相転移を起こしていて基底状態が連続対称性を破っているときなど,基底状態が無限に縮退してくる.たとえ基底エネルギーとその上のスペクトルの間にエネルギーギャップがあっても(離散的でも)数学的定義からは離散的ではない

2012-12-24 00:06:52
相転移P @phasetr

@phasetr やや別件で困るのは埋蔵固有値の問題だ.場の量子論ではよく起きるのだが(正確には非相互作用系で)「連続スペクトル」の中に固有値が埋まっている場合がある.相互作用をいれたときにこの埋まった固有値がどういう振る舞いをするかが問題になる場合がある

2012-12-24 00:08:46
相転移P @phasetr

@phasetr 具体的に言うと励起状態の問題だ.分かりづらいと思うので,さらに具体的に水素原子と量子電磁場の相互作用形を考えて星井.相互作用がない状態では励起状態の固有値が連続スペクトルに埋まっている.相互作用が入ると,電磁場にエネルギーを光の形で放出する

2012-12-24 00:10:30
相転移P @phasetr

@phasetr このとき,励起状態は固有状態だったので安定だったが,電磁場との相互作用で準安定状態になる.これは相互作用を入れる前に固有値だったのが相互作用素を入れた(摂動と思って星井)ときに固有値でなくなる現象として現れる.ここを解析するのが埋蔵固有値の摂動問題だ

2012-12-24 00:12:11
相転移P @phasetr

@phasetr 「非相互作用系で連続スペクトルの中に固有値がある」という形なので,やや微妙なところはあるが,「連続した実数からなる部分があればその部分は連続スペクトルをなすという」という清水本の記述はこの辺でだいぶ気持ち悪い

2012-12-24 00:14:20
相転移P @phasetr

@phasetr ついでなので分類についてもう少し書いておくと,絶対連続スペクトル・特異スペクトルというスペクトルの分類がある.これは散乱を考えるときに出てくる.興味がある向きは同じく量子現象の数理の7章を参考にされたい

2012-12-24 00:16:18
ドラミギ @SO880

@phasetr 連続スペクトルをぐにゃっと動かして埋没固有値をひろってくるとかなんとかどっかでみたが…。

2012-12-24 00:19:25
相転移P @phasetr

@phasetr あと(相対論的)場の量子論では(赤外?)発散に対応してpure-pointとpoint-continuousとか言うのが出てくるらしい.興味がある向きはhttp://t.co/z3nSwyUzを参照されたい.私より作用素環周辺の数学が出来れば読めるはずだ

2012-12-24 00:20:52
V-alg-d(ZZ) @alg_d

https://t.co/kYv5hbPq "私より作用素環周辺の数学が出来れば読めるはずだ"

2012-12-24 00:21:57
相転移P @phasetr

@phasetr ここまで数学について勉強したところで物理としてまともなところにはまるで届かず,この程度ではきっと何者にもなれない.私がその証拠である.無論私より春香に優秀なら何の問題もなかろうが.数学に現を抜かしている暇があるなら物理を頑張って星井

2012-12-24 00:22:45