バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト #4
「死ななんだか」ジバヌチが不服げに言った「ヌルいぞ!」「ヌウウーッ!」ガラマは己のセンスを怒りと共にへし折った。「ノーカウントだ、あれは!股間に当たっただけだ。事故だあれは!」「ハッ!往生際悪し!」シマムラがせせら笑った。「喜劇じみたオチがついたのは良かったぞ!ハハハハ!」 25
2013-01-10 17:43:12アコライトは再びオジギし、ドヒョー・リングを降りた。逆立ち状態で動かないウォーピッグの身体は、護衛戦士十数人がかりで運び出された。「要らぬわ!あんなもの!海に捨てろ」ガラマが毒づいた。 26
2013-01-10 17:50:34オーバーウェルムはジバヌチのテーブルへ戻るアコライトを注意深く見守っていた。アコライトの攻撃はあの瞬間取りうる迎撃選択肢としては最適であり、ウォーピッグの巨大質量の落下に潰されず弾き返すほどの威力も非凡。その心中に何が去来したものであろうか? 27
2013-01-10 17:55:33そしてアナスタシアもまた、アコライトを見つめていた。彼女の抑えた表情の裏には、しかし、彼女の考えがあったのだ。……「素晴らしきイクサ!我々の魂は高揚し、より高い段階に達した事でしょう!」ガンダルヴァが言い、アナスタシアに再びオミクジを促す。「次のカードへ進みましょう!」 28
2013-01-10 18:02:13◆「素晴らしきイクサ!我々の魂は高揚し、より高い段階に達した事でしょう!」ガンダルヴァが言い、アナスタシアに再びオミクジを促す。「次のカードへ進みましょう!」◆
2013-01-16 11:47:57「俺だな、これは」焦げ茶のニンジャがオミクジを高く差し上げた。蛇の焼印だ。「よしッ!相手は誰だ?」チョンマゲ眼帯姿の闇カネモチ、シマムラが見渡した。然り。この焦げ茶のニンジャが、彼の手駒、バグベアーである。「さァ!さァ!誰だ!誰だ!」 29
2013-01-16 11:51:40「……」赤紫のニンジャがオミクジを掲げた。「アー私の……弊社のニンジャですねこれは……ウフフ」メガネを指で直しながら、実際安いスーツ姿のサラリマンが椅子から立った。シマムラは顔をしかめた。「ネズミめいて俺たちの社会をウロチョロしたがっている奴がいたと聞いたがよ!」 30
2013-01-16 12:03:20「ゲットビジネス……ゲットチャンスですよ」サラリマンは口の端を歪めて笑った。「ローカル流儀を尊重しつつですね……是非この、健闘させていただいて。徐々にですね、皆様の役に立つ存在として認知されたいと、そういうわけでして」「カッ!」シマムラがツバを吐き捨てた。「商人!」 31
2013-01-16 12:26:47「まあまあ、おのおのがた」ガンダルヴァが制した。「神聖闘技は喧嘩や権力闘争ではありませぬ。快楽追求の象徴行為……楽しむ事です」「そうですわ」ナイーブそうな太った貴婦人が羽根扇子をパタパタと動かした。「とっても素敵な教えですのに!運気を乱さないで」 32
2013-01-16 12:44:10闇カネモチ達の一通りの鞘当てののち、対戦者は互いにアイサツした。「ドーモ。バグベアーです」「ドーモ。バロールです」体格、腕の長さではバグベアーの優位。鬣めいて威圧的に逆立てた髪が恐ろしい。一方のバロールは痩せ型だが、一見したシルエットで実力を測れないのがニンジャというものだ。33
2013-01-16 13:01:39「あそこのガンタルヴァ=サンにでも祈るがいいぜ。神らしいからよ」バグベアーが拳を打ち鳴らして凄んだ。「俺に殴られると死ぬ」「シシシ……」バロールは歯を鳴らして笑った。「はじめよ!」ガンダルヴァが手をあげた。「「イヤーッ!」」二者は同時に回転ジャンプし、ドヒョーに着地した。 34
2013-01-16 13:21:01着地と同時にバグベアーは足元のドヒョーの土を抉るように蹴った。「イヤーッ!」土くれが飛沫と化してバロールを目くらましめいて襲う!先制攻撃!ドトン・ジツの一種だ!「グワーッ!?」土煙の中から呻き声!バグベアーはそこへ両手でスリケン投擲!「イヤーッ!」 35
2013-01-16 13:25:13「ハハーッ!」シマムラが叫び、拳を振り上げる。「コロセー!」それは非情なるセットプレー!目くらましで防御を封じ、スリケンで動きを封じ、さらに、見よ!素早い踏み込みから繰り出す強烈なキリモミ回転ドロップキックでトドメを刺す!「イヤーッ!」「グワーッ!」 36
2013-01-16 13:27:39煙の中から回転ジャンプでバグベアーが跳び戻る!「手応え有り!」「カイシャクだ!土煙のせいでダウンしているかどうかわからんから殺すつもりで追撃してよし!」シマムラがガンダルヴァをチラチラと見ながら叫んだ。「お手柔らかに……」サラリマンが卑屈に請う。シマムラは無視!「コロセー!」37
2013-01-16 13:34:11「ウオオーッ!」バグベアーは煙の中に走りこむ。勢いをつけた跳び蹴りだ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」内側から放射状の風が吹き、土煙を払い飛ばす。観戦者は息を飲んだ。そこには、跳び蹴りを跳ね返され仰向けにドヒョーに倒されたバグベアー!そして、両腕をひろげて立つ奇怪なニンジャ! 38
2013-01-16 13:56:24「なんだあれは!」シマムラが呻いた。「タッグ交替だ。汚いぞ!一対一がルールだ!」「あれはバロール=サンです」サラリマンが興奮した笑みを浮かべ、メガネを直した。「あれが彼の戦闘スタイルなのだ!彼は変身するのです!アクマにね!」「ヒィーッ!」太った貴婦人は泡を吹いて気絶! 39
2013-01-16 13:58:35「シシシシッ……」歯擦音を響かせ、バロールは嘲った。装束の上半身はもはや破け、青銅じみたパンプアップ肉体は今やバグベアーよりも大きい。頭には二本の角が生え、額には第三の目が開いていた。後ずさるバグベアーをドヒョー端まで追い詰める。「待て……」「イヤーッ!」 40
2013-01-16 14:06:24「グワーッ!?」容赦の無い蹴り上げが戦意喪失したバグベアーを空中に打ち上げた。「アクマ!」バロールは叫び、限界まで身を縮めたのちに跳躍!ナ……ナムアミダブツ!二本の角で空中のバグベアーを背中から串刺しだ!「アバーッ!?」 41
2013-01-16 14:08:38「終わりだな」とジバヌチ。「ヤッター!」サラリマンが腕を振り回し快哉した。「バグベアー=サン!どうにかしろ!」シマムラが地団駄を踏む。「アバーッ!」だがバグベアーはヤリで刺されたツキジのマグロめいて苦しむのみ!「イヤーッ!」バロールは頭と脚を掴み、引き裂く!「アバババーッ!」42
2013-01-16 14:16:21ナムアミダブツ!ドヒョーには三つないし四つに引き裂かれたバグベアーの死体が散乱した。「ワオオオーッ!」利害関係の無い闇カネモチ観戦者が残忍な喜びもあらわに歓声を上げる。「ドーモスミマセン、ちょっとオーバーキルしました。まあ、戦いは続いていましたし……」とサラリマン。 43
2013-01-16 14:20:47「今後とも我が社を宜しくお願い致します。このように我が社はニンジャも強いですし……」サラリマンが名刺を取り出そうとした。「し、死ねーッ!」サラリマンの態度に激昂したシマムラが黄金チャカを抜き放つ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」だが次の瞬間、その手首から先が吹き飛んだのだ! 44
2013-01-16 14:26:16オーバーウェルムである!恐るべき間合いを一瞬にして飛んで詰め、ヤリめいて放たれたサイドキックがシマムラの手を破壊したのだ!「アバーッ!」シマムラは鮮血が噴出する己のケジメ手首を見つめ、クルクルと回りながら地面に倒れ込んだ。「狼藉はいかんなァ」オーバーウェルムは低く言う。無残!45
2013-01-16 14:29:30