ドラマチックストラクチャーをマルチエンディングシナリオに適用する
- nyaa_toraneko
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次にミッドポイント~プロットポイント2。これは主人公の前半の努力の結果が実りはじめる時間帯です。この部分でその物語のもつ本質的な面白さがお客さんにもわかりはじめ、わくわくする時間帯とも言えます。
2010-09-21 03:07:46最後にプロットポイント2~エンドポイント。これは解決の時間帯です。この時間帯で、物語冒頭で示された主人公の超目的が最終的に叶うのかどうかお客さんは見守ることになります。映画でもゲームでもそうですが、このわずかな時間のために投入されるギミック/資金は最大となります。
2010-09-21 03:09:06『ラピュタ』の場合で見てみると、プロットポイント1は「パズーとシータ、海賊ドーラ一家におそわれる」がそれにあたります。実際、前半の山場になっており、この部分だけを見ただけでは後々このドーラ一家がパズーの味方になることは想像できないでしょう。実際、アクションも充実しています。
2010-09-21 03:11:39次にプロットポイント2です。これは「ムスカがシータを人質にしてラピュタの真の姿を復活させる」がそれにあたります。ここでパズーは何が何でもシータを取り戻し、ラピュタをムスカの手から取り戻す必要に迫られます。インドラの矢のシーンがそれにあたると考えてよいでしょう。
2010-09-21 03:13:31さて物語自身はこのように、5つのポイントをつなぎながらストーリーを紡いでいくのですが、まだこれだけでは一気にシナリオを書き上げるのは難しいかもしれません。そこでシド・フィールドは、よく練られた脚本にはもう2つ重要なポイントがあることに気がつきました。
2010-09-21 03:15:13それは、ミッドポイントを境に各のプロットポイントをつなぐために挟み込まれるエピソードのことで、それをドラマチックストラクチャーでは、ピンチ1とピンチ2と呼んでいます。
2010-09-21 03:17:04ピンチと呼ばれるこれらのエピソードは、プロットポイント1からミッドポイントを経由してプロットポイント2までストーリーを上手に流すために使われます。しばしばピンチ1で起こるエピソードの例として、「向こう岸から船が来る」という展開があります。
2010-09-21 03:18:08これは、葛藤の時間帯にいる主人公に対して、都合の良い助け船が与えられるという展開のことを指しています。『ラピュタ』の場合でいうと、「パズー、ドーラ一家の仲間になる」がそれにあたります。その結果、パズーはシータを取り戻すのに必要な機動力を手に入れます。
2010-09-21 03:19:40一方、ピンチ2は後半の主軸になるテーマを提示するエピソードです。『ラピュタ』の場合でしたら、「ムスカが爆薬を使ってラピュタ中枢へ入り込む道を開く」がそれにあたるでしょう。このエピソードを機会に、物語は急速に切迫感とスピード感を高めます。
2010-09-21 03:22:05その重要なエピソードを爆音と共にはじめるのですから、実に宮崎監督のセンスのすばらしさを感じるシーンでもあります。
2010-09-21 03:22:10さて以上のように良くできている物語には、必ずスタートポイント、プロットポイント1、ピンチ1、ミッドポイント、ピンチ2、プロットポイント2、エンドポイントの計7つの重要なポイントがあることに気づかれると思います。この構造をシド・フィールドはドラマチックストラクチャーと呼んでいます。
2010-09-21 03:25:15例えば、一本道のストーリーならば、これらの7つのポイントに適宜イベントを割り当ててやることで、物語は綺麗にエンドまでオチを迎えることができます。しかも各の時間帯において何をしておくとよいかは大体決まっているので、それに従えばかなりの確率で上手に物語を落とすことができます。
2010-09-21 03:27:16例のすでに絵が発注されているエロゲーの場合でしたら、発注済みの絵をこれらの7つのポイントに適宜配置してやることで、後はそれらの間をつないでやるストーリーを作ることで物語を完成させることができるということです。
2010-09-21 03:28:29というわけで、ここまでが通常のドラマチックストラクチャーで言われている方法論ですが、ここで問題を出しましょう。ではこの手法をそのままマルチエンドの構造に持ってくることは可能でしょうか?
2010-09-21 03:29:53答えは否です。理由は簡単ですね。マルチエンドのストーリーは、当たり前ですがスタートポイントは1つですが、エンドポイントは複数あることになります。例えば、出発地が東京なのに、終着点は大阪、京都、札幌、高松…と複数あるということです。この状態で、中間地点を決められるでしょうか?
2010-09-21 03:32:42ドラマチックストラクチャーの実践は、自らが考えている物語をどううまく展開すれば、お客さんに分かりやすくノってもらえるかという体系ですので、この中間地点(ミッドポイント)が決まらないということは、非常に困ったことです。
2010-09-21 03:34:35無理矢理スタートポイントを1つにして、放射状にエンド位置を配置したとしても、それは同じことです。このような構成では、スタートを同じとする複数ルートがただあるだけの状態ですから、途中でルート変更をしたりすることが不可能になります。
2010-09-21 03:35:57しかも各エンドに向かって主人公の超目的はブレブレになりますので、このままでは真の意味で盛り上げることができません。おそらくこのような状態に陥ることがわかっているので、比較的マルチエンドのストーリーは、理論ではなく、その場の勘や経験で組まれていることが多いのだと思います。
2010-09-21 03:37:10まあそんな作り方をしていると、うまいストーリー構成ができるかどうかは、ホント時の運ということになり、その運に見放されればすぐに失業ということになってしまうのですが……例のエロゲーのストーリー構成を考えている時にすぐにそのことに気づいた訳です。こりゃ大変だと。
2010-09-21 03:39:05実際、メインのヒロインのお話は、結構考えましたが自分でもあっさりと出来たほうだと思います。ただそんな冴えはそう長いこと続くはずもなく、実際、先生&中学生ルートを考えている途中から詰まってしまいました。
2010-09-21 03:41:23どうしても絵が足りなくて、先生の構成だけタイムテーブルが2日余ってしまうという状態が発生しました。これではNGなのでさてどうするかと考えた訳です。
2010-09-21 03:41:49いくら考えても結果は出ず、徹夜した朝にシャワーを浴びていた時のことです。ふとこんなことが思い浮かびました。「マルチエンドストーリーの主人公とは、本当にプレイヤーキャラなんだろうか?」これがブレイクスルーになりました。
2010-09-21 03:44:57@nyaa_toraneko ハリウッドの技法は2時間前後の映画を前提としているので、何も考えずにゲームに適用はしにくいですよね……。エッセンスを見極めて応用していければ、発想法はとても参考になるのですが。
2010-09-21 03:46:28@epics_jp そうですね。鵜呑みにするのではなく、良いポイントだけ参考にするといいと思います。実際、ゲームテキストとシナリオは相当違うものだと思ってますので、利用できるのはイベントの配置法ぐらいでしょう。もっともそれが本質の作法なのではありますが…。
2010-09-21 04:19:53@nyaa_toraneko 自分も発表から5年以上経つ延期ゲームに関わってましたが、その件程壮絶なエピソードに恵まれてないのでちょっと羨ましかったりします。
2010-09-21 03:46:48