モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring XII~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーターサイクルダイアリー~Episode of Spring XII~ #mor_cy_dar

2013-06-30 10:11:36
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 土曜日の朝は惰眠と共にあるのが、本来、三鳥栖志智(みとす しち)の日常である。 「……おは」 「わぁっ! お、おにいちゃんがこんな時間に起きてるっ!  なに? どうしたの? 風邪? 悪い夢でも見たの!?」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:12:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……普通の時間に起きただけで、どうしてそこまで言われるんだかな……」  広々とはとても言いがたいキッチンとの共用スペースへ顔を出すと、洗濯の途中だったらしい千歳(ちとせ)が、世界の終わりを目撃してしまったような顔でむかえてくれた。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:12:17
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えっと、それでおにいちゃん。  本当にどうしたの? あんまり寝てないでしょ? 体調わるいの? 添い寝してあげた方がいい?」 「中学生の頃のお前じゃあるまいし  10時にティックの奴と待ち合わせているんだよ」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:12:27
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「へえ~、いいなあ。  そっか。ティックくんもバイク乗ってるんだもんね。ツーリングにいくの? 亞璃須(ありす)さんもそうだけど、一緒っていいなあ。  わたしもバイクの免許とろうかなあ」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:12:42
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………いや、それはダメだ」  きっと心の底からそう思っているのだろう。無邪気な千歳の笑顔に、志智はどこか暗い瞳で首を振った。  そして、仏壇の方向へちらりと視線を投げる。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:12:51
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「俺はともかく、お前に何かあったら、父さんと母さんに申し訳が立たないからな」 「あ……うん。それじゃあ、おにいちゃんの後ろがいいな。  おにいちゃんのスパーダって二人乗りできるんでしょ」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:13:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いや、それは━━」 「別にティックくんのバイクでもいいんだけど」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:14:34
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「━━あいつのはダメだ125ccしかないから二人乗りしたらエンストするぞあと亞璃須のやつもレーサーだから一人乗り登録とか言ってたなとにかくダメだどうしてもっていうなら俺の後ろに乗せてやるから一週間前に予約しろいいな千歳」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:14:45
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 その反応はカリカリにチューニングされたエンジンの吹け上がりより早く、言葉をつむぎだす速度はどんなドラッグレーサーよりも鋭い。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:14:57
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ぜぇ……ぜぇ……」 「う、うん、わかった。おにいちゃん、息切れてるけど、大丈夫?」 「と、とにかくタンデムはダメだからな。  どうしても。本当ぉぉぉぉぉぉぉぉに、どうしても乗らないとまずいときは俺に言うんだぞ。いいな」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:15:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「くすっ」  きっと三鳥栖千歳(みとす ちとせ)はなぜこんなに兄が慌てているのか、気づいていない。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:15:30
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 彼女は邪推しないから。この世の悪意や敵意といった感情は、彼女に決して近づこうとしないから。  ゆえに、千歳は善意と愛情をもって、志智の行動を解釈した。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:15:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おにいちゃんがわたしに危ないことをさせたくないって思ってくれるの、とっても嬉しい」 「……千歳」 「でも、わたしね、おにいちゃん。  おにいちゃんがそう思ってくれてるのと同じくらい……ううん、きっとそれ以上、おにいちゃんに危ないことをしてほしくないの」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:15:50
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………」 「だからね」  細い指がお湯で濡らしたタオルを絞る。  眠たげな、そして沈痛な志智の顔がぬくもりで包まれる。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:16:01
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えへへ、おにいちゃん気持ちいい?」 「あ、ああ……」 「うん、よかった。  ……だからね。もしどうしても危ないことをしなくちゃいけないときは……わたし、おにいちゃんと一緒がいいな……」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:16:15
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「千歳……あのな、俺は━━」 「安全運転でいってらっしゃい、おにいちゃん」 「……ああ、いってくるよ」  時計の針は午前9時を回ったところだった。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:16:23
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~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-06-30 10:16:32
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あっ、おはようございますお兄さん」 「ティックか。悪いな、ちょっと遅刻した」 「いえ、ぜんぜん平気ですから」  地方であれば国道沿いに呆れるほどつらなっている道の駅は、しかし東京都に限ると、一つだけしか存在しない。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:16:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 国道を走り疲れたトラックの運転手がのんびりと休める場所でもなければ、首都圏からの旅行者が集う場所でもなく、中央道八王子ICや国道16号、同20号の至近ということもあって、どちらかと言えば待ち合わせや小休止に適したスポットと言えるだろう。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:17:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 地元産の野菜や土産物をもとめる行列も、『遠くまで旅行にいくほどの時間がない都民が、観光気分を味わいたくてあつまっている』といった雰囲気である。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:17:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ここはバイクがいっぱい並んでますし、見てるだけで飽きないです」 「そうだな。休日のこの時間だからな……お前のグロムも結構注目されてるみたいだぞ」 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:17:37
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あはは、さっきおじいさんに「軽くて楽しそうだね」って言われました」 「そうか……本当は、そういうもんだよな」  志智自身、見るからに軽くてコンパクトなグロムの車体をみていると、これに乗ったらどんな走り方ができるだろうかと思ってしまう。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:17:45
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(まあ、スパーダでも結構窮屈なくらいだし、シフトも一苦労かもしれないけどな……)  すくなくとも両足ベタつきどころの話でないことは、確実だった。 #mor_cy_dar

2013-06-30 10:17:54
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