モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Autumn VIII~
- IngaSakimori
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「どうも、こんにちは」 真っ先に会釈した志智を見つめる亞璃須の、『おやっさん』の、そしてちょうどトイレから戻ってきたティックの表情が示すところは、すべて等しく「なぜこんな老人と知り合いなのか?」であった。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:22:38「うん、いい挨拶だ。 とはいえ、私の頃は礼儀知らずなくらいフランクな奴の方が多かったがね」 奥原一征(おくはら いっせい)はニヤリと笑いながら、アライ製のヘルメットをRVFのタンクに置く。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:22:58そして、自分に集まっている好奇の視線へ気づくと、様子をうかがうように辺りを見回し、こう言った。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:23:02「三鳥栖くん……だったか。 そこのお嬢さんは━━『コレ』かい?」 奥原は志智にむかって小指を立ててみせると、胸元からタバコを取り出した。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:23:25「………………?」 思わず首を捻る志智。奥原の仕草がなにを意味するのか分からなかったのだ。 もっとも、疑問を声に出すよりも、亞璃須が隣に並ぶ方が早かった。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:23:36「もちろん、わたくしと志智は『そういう』関係ですわ!!」 「げ」 見せつけるように志智の腕へ抱きつく亞璃須。ようやく志智も状況を悟ったのか、慌てて首を振る。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:24:03「い、いや、これはその……あの……おい、亞璃須。こういうところでな━━」 「なんです? 志智は何か後ろめたいことでもあります?」 「そ、そういう問題じゃなくて━━」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:24:14「ほっほー」 カチリ、という音がして、奥原が手にしたジッポーライターへ灯がともる。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:24:21「ずいぶんと身長差のあるカップルもいたものだ。面白いじゃないか。 しかし、不思議なお嬢さんだな……そんな格好で、彼とタンデムしてきたわけでもないだろうに。 それでいて、向こうの車には、どうもバイク一台が入ってるみたいじゃないか」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:24:42「あら。 喫煙者のおじいさん。どうしてそれが分かりますの?」 「ハイエースはトランポの王様だよ。 川野にそんな車で乗り付けるのは工事関係者か、大人げないバイクを載せてきた奴だけだ」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:25:04「運転手もきっちりいるみたいだしね」 奥原が視線をむけた先では、執事の吉脇が悠然と一礼していた。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:25:09「それで、見てくれだけはずいぶんときらびやかなお嬢さん。 君は乗るのかい? それとも愛しの彼を追いかけているご令嬢気取りかい?」 「……その質問に答えてもいいですが」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:25:23奥原のくわえたシガレットの先から、紫煙がふわりと立ち上る。 気まぐれな風は不意に方向を変え、副流煙を亞璃須の鼻先へ運んだ。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:25:52「とりあえずわたくしの近くで、タバコを吸うのをやめてもらえます? 煙たいんですけど」 「………………」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:26:05「聞こえましたか、おじいさん。 煙たい。臭い。不快だと申し上げています」 「はっはっはっ!!」 刺々しいにも程がある亞璃須の言葉。 そのどこが琴線に触れたのか、奥原は愉快そうに笑い出した。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:26:13「いやあ、威勢がいいもんだ! そうそう……まったくな。若い女の子はそうでないとな!! ははははっ!」 「……志智。 わたくし、このタバコジジイがそこのバツイチおやじと同じくらい気に入りません」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:27:16「そ、そりゃあないぜ、モタロリちゃん……ヨ」 「お前って、基本的に年配の人が嫌いだよな……」 忌々しげに吐き捨てる亞璃須に、突然巻き込まれて困惑する『おやっさん』と、呆れたように肩をすくめる志智。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:27:24「あ……そのえっと。 奥原さん。こいつは━━亞璃須は失礼な奴かもしれませんけど、いちおうバイクには乗ってるんですよ」 「一応とはなんですか、一応とはっ。 わたくしの方が志智よりずっとバイク歴は長いんですからね」 「……頼むからすこし黙っててくれよ……」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:28:18「まあ、とにかくそういうことです。あの車にはXR650Rっていうバイクが入っていて……ちなみに、あそこにいるのがこいつの弟です」 すこし離れた場所で様子をうかがってるティックを志智が指さすと、金髪の美少年は人当たりのいい笑顔でぺこりと頭を下げた。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:28:26「いや、見た目で判断しようとしてすまなかった。 それにしても、姉弟おそろいで髪を染めているのは珍しいね」 「あ、いや、こいつらの髪は……その自前です」 「自前?」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:28:44「ハーフですから当然ですわ。 ついでに言いますと、わたくしもティックも帰国子女ですから」 なぜかやたらと誇らしげに胸を張ってみる亞璃須。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:28:59別に帰国子女であることは、どうでもいいことではないかと志智は思ったが、きっと亞璃須の中では重要なのだろうとも察する。 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:29:08「なるほど、それはそれは。 いや、ずいぶんと変わった事情があるのだね……驚かされたよ」 「理解が早くて助かります」 「なあに、実を言うと私も帰国子女なんだ。幼い頃は欧州にいてね。 お嬢さん、君と同じだね」 #mor_cy_dar
2013-11-30 18:29:20