第一回大罪大戦《正4の狭間》【戦闘フェーズ02】

紅(ルージュ)は憤怒、ラース[ @RougeWrath ] 黒(ノワール)は怠惰、アーチェディア[ @klown_sin ]
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【アーチェディア】 @klown_sin

逃げられない。『憤怒』は、一度定めた相手を生かして返さない。締め付けられる身体、触れている箇所から破砕音が断続的に響く。口から溢れる鮮血は、最早血の色をしていなかった。それでも。 「逃げられ、ねえなら……」 歯を、食いしばる。掛けた圧に、残っている歯が幾つか砕ける音が聞こえた。→

2013-07-01 23:14:06
【アーチェディア】 @klown_sin

「……ぶち抜くだけだああぁぁぁぁァッ!!!」 残された選択は、殺られる前に、殺るのみ。振り払えぬなら、振り払わない。引き抜けぬなら、更に押しこむまで。炭化しかかる左腕を、更に押しこむ。最早『停滞』の効力は働いていない。謂わば、只の拳。力を込めた左腕の先で、肉の潰れる音が聞こえた。

2013-07-01 23:18:01
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

アーチェディアの結晶が締め付けにより粉砕され、『罪』に引火した種火はやがて炎となり結晶を、二人の罪を薪として燃え上がる。徐々に炭化してゆくアーチェディアの身体。しかし、『貫く』という意思がたしかにそこにあった。男は力み、腹に刺さる左拳に抵抗する。→

2013-07-01 23:57:52
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→左腕を引き絞れば引き絞るほどに怠惰の左手が腹に食い込むのがわかる。それでも、力むのを止めない。肉の削げた男の左手が結晶の下に潜んだ怠惰の脇腹を掴む。「アーチェディアッ!貴様の罪は今!清められる!」二人を包む炎は、その脇腹に空いた隙間から怠惰を焼き喰らおうと侵入する。→

2013-07-01 23:57:59
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→そして、肉を裂く音が聞こえる。怠惰の左拳は憤怒に煮えたぎる灼熱の腸(はらわた)に触れた。赤熱した血汐超える光り輝く腸が腹の亀裂から覗く。力めば力むほど互いの左手が肉に食い込む。男の左手は死毒ごと炎に焼かれ、炭化し始める。悪魔の左手は灼熱の腸に浄化され、溶かされてゆく。

2013-07-01 23:58:12
【アーチェディア】 @klown_sin

『復讐』が、『停滞』が、二人の罪科が燃え上がる。それは、あらゆる罪を灰燼に帰す煉獄の焔。罪を介する全てを焼き尽くす浄火。結晶の隙間から差し込まれた焔が、男の身体を焼いていく。結晶に覆われたそこは、即ち負傷箇所。傷に激痛が重ねられる。男の意識が、命が、凄まじい勢いで削られていた。→

2013-07-02 02:44:42
【アーチェディア】 @klown_sin

だがそれでも、停まらない。男の脳裏に残響するは、『憤怒』の言葉。 清めるだと? この罪を、この『怠惰』を、祓い清めると? 認められない。それは、それだけは断じて許さない。俺が『怠惰』であり、『怠惰』こそが俺だ。唯一アイツだけが俺の『鏡相』。アイツ以外に、『怠惰』の座は認めない。→

2013-07-02 02:44:50
【アーチェディア】 @klown_sin

第四層を冠する『怠惰』(おれ)が――第三冠でしかない『憤怒』(おまえ)の煉獄浄化を、超えられないと思うてか。

2013-07-02 02:45:00
【アーチェディア】 @klown_sin

左腕は、輝く腸に溶かされている。背中は、締め付ける手に刻一刻と抉られている。既に戦える身体ではなく、もう男に戦う手段は残されていない。 だからこそ、と男は力を込める。最早男を立たせるのは、その尊厳のみ。 ――彼が『怠惰』であるという、唯その一点。それが、男に最後を振るわせる。→

2013-07-02 02:45:08
【アーチェディア】 @klown_sin

溶ける指先が、腸を握る。食い込む腕に、更に体重をかける。その力で、ラースの身体を起こす。それは、半身を起こす程度の動作。だがそれで、俺の『最後』は事足りる。 『憤怒』からは、見えぬ位置。駆け抜けてきた、背後。男の霞む視界の先、そこにあるのは――千切れた『憤怒』の腕と、『結晶』。→

2013-07-02 02:45:15
【アーチェディア】 @klown_sin

結晶と憤怒と怠惰。それが一直線に並んだ今が、唯一最後の好機。 もう、碌な操作は出来ない。ただ、『引き寄せる』程度。 腸を握る。決して、逃がすものか。込める意識は、単純。 ――『来い』 命を賭した全霊の祈り。宙に浮いた一振りの『結晶』が、『憤怒』の命を奪わんと、雷が如く駆け抜けた。

2013-07-02 02:45:25
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

来る二つの結晶が怠惰の命により左手へと集まって行く。「がはっ!?」男の背中を貫き、背と腹を繋ぐ穴が穿たれた。「ぐッ、ぬぅ……」背骨はある。背骨の左右が穿たれている。その結晶の侵入口からどろりと腸の一部が零れる。結晶の追加により体に『停滞』の死毒が徐々に広がる。→

2013-07-02 12:31:48
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→炎と拮抗し毒の廻りは遅れている。男は動かなくなる前にと左手を更に力む。左手が熱を帯び始める。「力半ばの怠惰よ。貴様はもう、原初の大罪足り得んのだ。怠惰でありながら、『裏切』の罪を背負ったが故に。もはや、そこに座する、資格が、ないのだ!」男は初めて自分の罪科を解き放った。→

2013-07-02 12:31:49
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→男の左手が肉に食い込むと同時、男は炭化しつつある自らの左手を前腕ごと炸裂させる。そして、『復讐』が解き放たれる。鼻骨を粉砕した拳撃。鋼の如き肉の装甲を貫いた三つの結晶。右腕を機能停止させた二つの結晶。男の腹を穿った左手と二つの結晶。それら全てを怠惰の体内で爆発させた。

2013-07-02 12:32:21
【アーチェディア】 @klown_sin

――今此処に、彼の罪科が解き放たれる。その銘は『復讐』。咎人へ、その報いを下す憤怒の鉄槌。拳による殴打が、結晶による『停滞』が、男の犯した業が全てその身に跳ね返る。食い込む腕を拒むものは、最早何一つとして存在しない。炸裂する衝撃。内部から生じるそれが、男の身体を無様に震わせた。→

2013-07-02 23:28:52
【アーチェディア】 @klown_sin

内側から起こる衝撃に、跳ねる身体。締め支えていた左腕は、既に無い。男の身体が宙を舞い、ひび割れた大地へと転がった。立ち上がる事は、なく。 ――ここに、雌雄は決せられた。

2013-07-02 23:33:52
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

雌雄が決した後、一瞬の間。その後に男は倒れる悪魔、敵ではなくなったかつての同胞を前に片膝をつく。「力半ばの怠惰よ、貴公は安らかにここに『停滞(とど)』まれ。我は、往く」そう呟くと、男はふらつきながら立ち上がる。腹に残るのは腸と背骨体側の肉のみ。腕も左上腕しか残っていない。→

2013-07-03 12:08:27
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→残された死毒が緩やかに熱を奪う。煮え滾る腸から光が失われてゆく。それでも男は踵を返し、倒れた怠惰を背に一歩ずつ確かな歩みを進める。そして、地に突き立った孔の開いた右腕に噛み付き引き抜いた。やがて男の前には扉があった。男はまた一歩ずつ帰路を歩む。→

2013-07-03 12:34:29
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→もう一柱の怠惰に『完遂』したことを伝えるために、交わした約束を『裏切』らぬために。歩みが進むにつれて扉は迎え入れるように自然と開く。そして、男は振り向くことなく、その扉へ足を踏み入れる。

2013-07-03 12:34:56
【アーチェディア】 @klown_sin

「……なぁ、ラース」 ぽつりと響く声。去りゆく背にかけられる、その言葉。倒れる男は、動けない。返された『停滞』が、ほんの僅か生を繋ぎ留めているだけだ。 「さっき、お前はああ言ったがよ……俺は、裏切ったつもりなんてなぁ、ないんだよ」 これを言ってしまったら、怒るだろうかと苦笑して。

2013-07-03 13:46:27
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

男は咥えた右腕を扉の中へ放り投げ、振り向くことなく答える。「罪に故意も過失も無い。それが問われるのは裁きにおいてのみ。だが我もまた罪人。故に罪によって罪を罰することしかできぬ。罪を重ねることしかできぬ。この罪深き世界には裁きも赦しも無いのだ」

2013-07-03 15:54:03
【アーチェディア】 @klown_sin

「あぁ、全く。堅物め」 そういうところも変わっちゃいねえな、と呟き苦笑する。情に依らず、規律と命令を至上とする性格は、相変わらずだ。そんなところを、俺は疎ましく思っていて―― 「……『強欲』と『色欲』は、生きてる」 ――同胞を何よりも大事にするお前の性格だけは、俺の好みだった。

2013-07-03 16:09:43
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

怠惰の言葉聞いて、しばしの沈黙が流れる。「……そうか」ただ、そう言葉を残して扉をくぐる。それは男にとって喜ばしいようで残酷な報告だった。今まさにそうしたように、男は黒く染まった罪を罰することしかできないのだから。今はもう与えるべき『慈悲』すら持ち合わせていないのだから。

2013-07-03 17:14:47
【アーチェディア】 @klown_sin

『憤怒』は知らぬ。黒には堕ちれども、黒には染まらぬ彼女らの事を。 『怠惰』は知らぬ。紅には堕ちねども、紅へと染まった『嫉妬』の事を。 ――だから、お前は取り零すなよ。 ラースの背に向けたその言葉は、音にならなかった。 扉が閉まる。『狭間』の世界が、『無』へと還元されていく。→

2013-07-03 17:58:10
【アーチェディア】 @klown_sin

あぁ。そういえば、アイツへの伝言を忘れていたな、と『怠惰』は思う。暫し考え、飾り言葉は不要と断じた。 精々生きろよ、『流動』。いや―― 「……『怠惰』(スロウス)」 世界が、崩壊する。『無』へと、還っていく。それは、男の肉体とて例外ではない。 男は――ゆっくりと、瞳を閉じた。

2013-07-03 17:58:21