第一回大罪大戦紅陣営【交流フェーズ03】

紅(ルージュ)は憤怒、ラース[ @RougeWrath ] 紅(ルージュ)は怠惰、スロウス[ @siroeda_sin ]
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スロウス @siroeda_sin

かつん。静寂の中に、その音だけがやけに響く。降り立った広間には、誰の気配もない。 「……まだ誰も、帰っていないのか」 その裏、過る思考、嫌な感覚――既知感。俺は、これを、知っている? ……頭を振り、その考えを払う。少女の身体を抱えたまま、ただ立ち尽くす。

2013-07-06 02:52:58
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

広間の空間に僅かな亀裂が走る。そして、その亀裂から何かが飛び出した。それは無造作に広間の床に落ちる。重苦しい落下音が広間に響く。広間に現れたのは焼け爛れた右腕。その右腕はかつての熱が失われつつある。『怠惰』ならばわかるだろう。この腕は『停滞』している。

2013-07-06 03:20:16
スロウス @siroeda_sin

走った亀裂に、安堵を覚えたのも束の間。 落ちてきたものは、最後に強く握られた右腕――そこから伝わる、懐かしい気配。 名を呼ぼうとし、口を噤む。……恐らくアイツは、死んだのだろう。思うことはあれど、言う事はない。それよりも。 少女の身体を椅子に座らせ、腕の側へ歩いていく。→

2013-07-06 03:31:35
スロウス @siroeda_sin

腕が落ちてきたのだ、暫くすればラースも帰ってくるのだろう。約束の通り、完遂して。ただし……その身体がどうあるかは分からない。 右手で、腕を掴む。『停滞』の残滓が、熱を奪っていくにも関わらず、未だ手を焼く程度の力はある。 ……ならば、まだ間に合う。『流動』の力が、駆動を始める。

2013-07-06 03:35:30
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

先の亀裂がもう一度現れる。今回はより大きな亀裂だ。その亀裂が広がり、そこから焼け爛れた大男が現れた。男の身体は甚大な損傷を受けている。右腕は肩から先が無く、左腕は肘から先が無い。そして、腹には向こうが見える穴が穿たれ、背骨と光る腸が見えている。→

2013-07-06 04:00:42
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→その腸の光は弱々しく、失われつつある。男は険しい表情を浮かべながら、スロウスと少女を見る。そして、大きな音を立てながら、床に倒れた。腹の穴から腸が零れる。

2013-07-06 04:00:51
スロウス @siroeda_sin

「……ッ!?」 帰還したラースの身体は、想定を遙かに超える損傷を受けていた。 倒れこむ身体、しかし、その目は未だ光を失っていない――先ずは『停滞』を押し流し、彼を繋ぎ留める『罪』を以て、その生命を存続させる。 右腕に通る、『流動』の力。→

2013-07-06 04:11:49
スロウス @siroeda_sin

直にかけられていない『停滞』は、同位たる『流動』には勝てない。……頭に燻る感傷を、押し潰す。 次いで、腹部の処置に入った。『流動』を以て、罪科の『流れ』を作る――合わせて、形を整えながら。 ……口を、開く。 「…………すまない」 それは、眠ったままの、少女についてか。

2013-07-06 04:19:49
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「……ッ」自らの腹で起こる流れの変化に男は歯を食いしばる。「ぐッ……、その、乙女は、我らが若き、強欲か?それとも……」男が赤熱した血を吐き出す。「……黒き『裏切り者』かッ!?」男はスロウスに問いかける。

2013-07-06 12:59:58
スロウス @siroeda_sin

「……アイツは」 言葉を、切る。……離れた腕を押し付け、其処にも『流れ』を作る。額に滲む、脂汗。 憤怒の視線の先。紅に染まった白い髪、飾られた百合―― 「アイツは、紅だよ。……『敵』(シン)に成れなかった、強欲(グリード)だ」 ……少女の目は、開かない。

2013-07-06 13:33:58
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

流動により途切れた線が無理やり繋がってゆく。「が、ぁぁあああッ!!」血汐が巡り、右腕がまた熱を取り戻す。「そう、か……ならば、倒れた同胞のために、その若き乙女のために我はもう一度、この身を憤怒に捧げよう!」男の身体が全体が徐々に熱を取り戻し、身体のあちこちから火がちらつき始める。

2013-07-06 14:05:59
スロウス @siroeda_sin

「そうだ、怒りを燃やせ……それがお前の原動力、生の活力」 強引に繋いだラインを修正する。腹の穴まではどうしようもないが、そこは後で塞ぐか、もう一度『憤怒の炎』に頼るかしかない。 「……此処まで来たら、生き残るしかないんだ」 火の勢いは、徐々に増す。種火が再び、燃え盛って行く。→

2013-07-06 14:13:13
スロウス @siroeda_sin

……いかに一番槍たる憤怒とはいえ、今度ばかりは早々に、という訳にも行くまい。 手を離し、ぐるりと周囲を見回した。……他の気配は、未だない。

2013-07-06 14:17:29
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

男は全身が炎に包まれるとゆっくりと立ち上がる。まだ自由に動ききらない右手で零れる腸を腹の中に拾い集める。「力半ばの怠惰よ、手当て痛み入る。貴公の『流動』が無ければ先の戦いを乗り切る覚悟を得られなかった」僅かの間が流れる。「……もう一柱の力半ばの怠惰は、貴公の半身は、我が倒した」

2013-07-06 14:41:29
スロウス @siroeda_sin

「……無理はするな。俺に出来るのは、死なないようにすることだけだ」 治療向きの力ではない。死を延ばすことだけが、『怠惰』に出来ること。 ……憤怒の報告には、表情を変えず。 「――ああ」 「それなら、また――俺達だけか」

2013-07-06 14:51:22
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「我らだけ、であるか」二人だけの広間が余計に広く感じる。傍らに横たわる乙女に歩み寄る。右手の炎を収め、その髪に触れる。「嗚呼、我はまだ慈しみの手を差し伸べることができたのか」男は炎が収まった右手に自ら驚く。「力半ばの怠惰よ、我らが若き強欲は貴公が手にかけたのか」乙女の頭を撫でる。

2013-07-06 19:18:20
スロウス @siroeda_sin

首を、横に振ろうとして。 「いや……ある意味では、そうなるのかな」 胸元の傷。彼女が『そう』したのは、自分のせいだから。 白く染まった髪が、飾られた金が、揺れる。……俺は、負けはしなかったが。勝ってなどいないのだ。 「……アヴァリーティアも、死んだってよ」

2013-07-06 19:26:58
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「なっ!?気儘な強欲が……まさか、『虚ろな者』どもにか」男の歯が軋む。裏切り者の強欲はもういない。虚ろな強欲は新たな罪、執着となった。そして、若き強欲はいま目の前で横たわっている。「もう強欲は存在せんのか」乙女の髪に右手を滑らせる。→

2013-07-06 20:09:05
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→「ありがとう、力半ばの怠惰よ」男はスロウスに礼を言う。「もう一柱の怠惰が我に教えたのだ。『強欲』と『色欲』は生きている、と。我はその時この乙女を手にかけることを覚悟した。だが、もうその必要もないのだな」男の右手はそっと金の百合に触れた。「これは?」

2013-07-06 20:09:23
スロウス @siroeda_sin

「『虚』本人が、そう言っていたよ」 広間の最奥、城主の特等席。飾られた絵画は、何処かくすんで見えた。 憤怒の問には、簡潔に。 「……『憤怒』(Ira)、だ」 言葉に滲む、感情。若き強欲が、若き強欲のままそこにいるのは、彼女のお陰なのだろう。今でも再会の時の叫びを、覚えている。

2013-07-06 20:30:50
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「イラ……その名は『紛い物』の……」男は自らと同じ『座』の響きを反芻する。「そうか。貴公も『完遂』したのだな」男はスロウスを見る。「この乙女は、我儘な強欲は葬ってやるべきだと思うのだが、どうだろうか?」

2013-07-06 22:10:23
スロウス @siroeda_sin

その背に、言葉を受ける。……為すべき事は、全てやった。ならば、完遂と言えるだろうか。 「……ああ、そうしてやれ。そいつも、その方が喜ぶ」 振り返り、憤怒へと告げる。 「お前の手で葬ってやってくれ。俺は、やり方が分からないから」

2013-07-06 22:18:06
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「わかった」男は右腕を乙女の背に回し、抱き上げる。「我儘な強欲よ。どうか、紅き罪のままで、安らかに、眠れ」男の身体から炎が噴出し、男の身体と乙女の身体を包む。だが、二つ分の大罪を焼き尽くすには男の炎では火力が足りない。すると男の下に白く輝く霧が流れ着く。→

2013-07-06 23:18:06
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→金の杯を満たしていた美徳だ。炎が美徳を巻き込み、その色が変わる。それは優しく包み込む愛の炎、『熾』。男の右腕に自然と力が入る、それは乙女を呼び止めるようで。「どうか、そのままで」消え入るような声で乙女の耳元で呟く。乙女の身体が、淡く紅を孕んだ白き光の粒となって消えてゆく。

2013-07-06 23:18:17
スロウス @siroeda_sin

炎が上がる。男の積み上げた美徳が混ざり、愛するように、少女の身体を包み込む。光の粒はまるで、天へと昇華するように。 「…………」 作法も何も分からない彼は、その光景に、自然と。記憶のどこかで、何度も見たそれを――十字を切った。

2013-07-07 01:03:32