第二大罪大戦《第一の狭間》【戦闘フェイズ1】

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

―――降り立つ。 意識が覚醒し、辺りを見回すとそこは舞台だった。 周りに見えるものは大きな鉄の輪だったり高台の近くに設置されたブランコだったり… …ここは 「サーカス、の舞台かな…中々面白そうなところにでたなぁ」→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 見れば、観客席らしきところには有象無象の影がユラユラと揺れている。 その場で、くるりと回った。 「さぁさぁ！　皆様お立会い！ 　これからここで大罪なる者どもの愚かで悲しい殺し合いが行われます！」 身振りは大きく、まるで本物の道化のように。→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 「演じます片方は私、このとおりしがないクラウンにございます。 　その芸の拙さにはどうか寛大なお心でご容赦を…」 舞台上から、観客席を向いて一礼。 さぁ、始まりだ。 黒を紅く染め上げる演目の。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

コツ、コツと木靴を鳴らして少女が歩いてくる。背は低く、髪は地面を這うほど長い。 「あら、貴方、楽しそうね」 少女の手には首の伸びたウサギのぬいぐるみが抱かれていた。 「初めまして、まずは名乗るものよね？　私はツォルン、憤怒よ」 よろしく、と少女はほほえむ表情を作った。

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

背後から聞こえてくる足音と声に、振り返ることをせずに答える。 「そうだね、まずは名乗りをあげるものだ。」 くるり、その場で回る。　その瞳はまだ閉じたまま。 「ようこそ、楽しい楽しいサーカスへ。　僕は紅の罪華の道化、『屈折』の『憤怒《コレール》』」→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 「全ては僕たちに害を為す黒をほろぼ…す…」 言いながら、双眸を開き相手を見据える。 「…………」 少年の思考は、一度そこで停止した。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「……？」 言うのを辞めてしまうの？ 「そういう口上、私も用意しておくべきだったのかしら」 つまらないと思われた？ 少女は首をかしげて相手の様子を伺った。

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「…は、はははっ」 渇いた笑いが口から出る。 「…まさか、最初の相手が『コドモ』だなんてね…」 自分も、妹も…我らが傲慢や暴食だってそうだというのに、どうして幼い大罪が他にも存在するということに気付けていなかったのか。→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 「…改めて、『僕と同じ《憤怒》』でいいのかな？」 今度こそしっかりと相手を見据えて、そう問う。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「ええ、同じようね」 さて、どうしましょう。 相手はすぐに殴りかかってくる気配もないし、尋ねる機会は今かしら？ 「貴方は、今回なぜ大罪が二種いるのか知っているの？」 少女はかしげた首を戻し、少しの笑顔を保ったまま尋ねる。 相手の憤怒に近づこうとする様子は無い。

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「…知らないよ、それが『世界』の意志なんじゃないのかい？」 話し合いが出来るようなのでこちらからは攻撃をすることもなく対話に応じる。 「君は、知っているとでも？」

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「知っていたら聞かないわよ」 あら、思っていたよりあれなのかしら。 「紅なら知っていると思ったのだけど、思い違いだったみたいね」 名前だけ、なのかしら。 「仕方ないわ、次に期待しましょう」 少女は、持っていたウサギの首をショールに結ぶ。それを腰へと撒きつけた。 →

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

→ 「事実の通り、これが同じものなのだとしたら」 あの方の時と変わらないなら。 「どちらかが負けを認めたら終わりよね」 少女は笑う、無邪気さを出して。 「ねえ、どうする？」

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「…僕は…」 そう言い、トランプを取り出す。 何の変哲もない、ただの紙で出来たトランプ。 僕は、道化だ。 だとしたら、口で。 「僕は戦うのは嫌いでね、君が『ごめんなさい』をするのなら、赦してあげてもいいよ？」 トランプを構えて、そう言い放つ。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

トランプ？ 戦いたくないなら、あれは武器ではないのかしら。 「まさか、トランプで決着をつけよう、何て事はないわよね？」 コツ、と少し体制を崩す。 「私、貴方に謝罪する理由、あったかしら」 初めての相手、同じ憤怒というだけ。仲間より、遠い相手。

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「あるさ」 黒の問いにすばやく答える。 「君は『黒』としてこの戦場に来た…ならばそれは僕たち『紅』としては『悪いこと』だ…君たちは僕たちに害を為そうとしているんだからね？」 くるくるり、何度かその場で回る。 「けど僕は誰かを傷つけるのは嫌いだ、だから」→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 「君が、謝ったら、僕は君に危害を加えない」 ぴたり、回っていた身体をピタリと止め、2枚のトランプを放つ。 勢いよく回転し飛んでいくトランプの軌道を『屈折』させ、狙いは相手の両膝へ。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

此方に飛んでくるトランプ。ただのトランプに見えたが、軌道が変わる。 曲がった……！ 少女は咄嗟に片手で一枚を弾いた。だが、もう一枚はスカートを撫でながら足を擦り落ちた。 投げられたトランプを見るが、見た目には変化がない。 「……何を」 したのかしら？

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「何も出来ていないよ」 そう、何も出来ていない。 スカートの生地を押して膝にまで到達出来るかと思っていたがそれも無理なようだ。 「ただ、今のがナイフだったりしたら、危なかったね？」 にこり、笑みを浮かべてそう言い放つ。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「私は貴方がどうしたいのか分からないわ」 抱いた感想を率直に告げる。 投げたものを操作する力はあるようだけど、なぜトランプだったのかしら。攻撃できるという意思表示？ 「面倒ね」 考えるのは。 一歩ずつ少女は相手へと近づく。ただ歩いていく。 「貴方は本当に”私”を倒しにきたの？」

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「…っ」 相手の言葉によって表に出てくる動揺を隠すために『屈折』して姿を見えなくする。 「…当然さ、僕は黒を倒すためにここにきたんだから」 声を弾ませろ。 決して動揺を口に出すな。 僕は道化、感情を表にだすな。 演じて、演じて。 傷つけずに負けを認めさせるんだ。

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「そう」 消えた。何なんだろう。でも分かった。敵なのだやっぱり。 「私は今、あなたが見えない。けれど、足音も、布の擦れる音も、消せるのかしら？ ここはこんなに静かだものね」 まっすぐ歩く、彼がまだいる保証はない。 少女は前に手を伸ばす。→

黒の憤怒：ツォルン @whiteplays_sin

「ねえ、貴方も、私の敵でしょう？」 なら。 「貴方も私を傷つけるのでしょ？」 よね。 「ねえ、貴方は私のどこを」 何所を。 「切るの？　取るの？　抉るの？」 だって。 「貴方は私の気持ちなんて」 物の気持ちなんて。 「分からないのでしょう？」 少女は手を伸ばす、少年に触れようと。

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

「…そう、敵だ」 敵、なんだ。 音で判別されるとは思わなかった、なら。 「敵なんだ」 なのに、僕は。 「けど、僕は…」 この先の本音は言わない。 「戦いは苦手だ」 代わりに口をついて出るのは嘘。→

muguet(ミュゲ) @reclew_2ndsin

→ 『嘘つき』は『オトナ』の領分だけど。 僕は、『コドモ』を守るためなら…『自分の信念』のためなら、『嘘つき』にだってなってやる。 それが道化…それが僕。 高く跳躍し、相手の背後に降り立つ。 今度は姿を消すのではなく、増やす。 「さぁ、遊ぼうか？」