彼女はAC(アダルトチルドレン) 人格はどう形成されるのか

アダルトチルドレン(AC)を自認していた「彼女」について。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

そこから、慎重で対立を避ける日本的パーソナリティには遺伝的な基礎がある、とも言える。

2013-09-29 18:01:26
倉沢 繭樹 @mayuqix

 さて、遺伝要因が優位な人格特性があるとしても、遺伝要因と環境要因は単純に加算されるものではなく、両者が互いに影響し合い、相乗的に作用すると考えるのが相互作用説だ

2013-09-29 18:02:07
倉沢 繭樹 @mayuqix

(遺伝要因と環境要因がともに働いて一定の特性が形成されるが、個々の特性ごとに遺伝と環境の関与する割合が異なると考えるのは輻輳説)。

2013-09-29 18:02:38
倉沢 繭樹 @mayuqix

プロミン(1990)は、遺伝子型と環境の相互作用を、受動的相関、誘導的相関、能動的相関の3つに分類している。

2013-09-29 18:03:16
倉沢 繭樹 @mayuqix

 知能の高い子どもの親は、高い知能を持っている可能性が高く、家の中に多くの本があったり、知的能力を促進するような会話が多かったりと、知的刺激に富んだ環境を子どもに与える傾向がある(受動的相関)。

2013-09-29 18:03:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

もし、この子どもの知能の高さが家族以外のひとにも認められるなら、家族以外の人々もその子どもに期待したり、様々な知的刺激を与えたりする可能性が高い(誘導的相関)。

2013-09-29 18:04:29
倉沢 繭樹 @mayuqix

知能の高い子どもは、自ら進んで本を読んだり、大人に尋ねたりして、より豊かな知的経験を得ていく可能性がある(能動的相関)。子どもは、自らの知能を伸ばすような環境を選択するかもしれない。

2013-09-29 18:05:18
倉沢 繭樹 @mayuqix

 遺伝と環境の相互作用は、次のように言うことができる。(1) 個体が親から与えられる遺伝要因と環境要因が共通の方向性を持っている。(2) 個体の持つ遺伝要因が特定の環境的働きかけを引き出す。(3) 個体の持つ遺伝要因が特定の環境を選択させる。

2013-09-29 18:08:20
倉沢 繭樹 @mayuqix

(4) 同じ環境要因でも、個体の持つ遺伝要因によってその効果が異なる。(5) 同じ遺伝要因を持っていても、環境によってその表れ方が異なる。

2013-09-29 18:09:42
倉沢 繭樹 @mayuqix

 ジェンセンは、心身の発達には遺伝と環境の両要因が関与しているが、環境の適切さがある水準(閾値)を超えると遺伝的素質に応じたその性質の発現が見られるが、環境の適切さがその水準に達していない場合には、その性質の発現は大きく阻害される、という環境閾値説を唱えた。

2013-09-29 18:10:46
倉沢 繭樹 @mayuqix

 Sさんの特徴を心理学的に考えるなら、父親は喫煙者で、父親への嫌悪が煙草嫌いに表れている(置き換え)、と言える。異性は父親を思い出させ、身体的接触の忌避は、父親への嫌悪感の表現だ、と考えられる。ウサギへの愛着は、家族から冷遇された自分の代わりに、

2013-09-29 18:11:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

ウサギを可愛がることで自分を慰めている(代償)、とも言える。自分の感情に気づけないのは、一種のスプリッティング(分割)で、それによって苦痛を回避してきた防衛機制(鈍麻)だ、とも言える。

2013-09-29 18:12:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

彼女の過ごした家庭環境が、彼女の心的発達を著しく阻害した。「私はアダルトチルドレン(AC:オトナに見えるコドモ)なんだ」とは、そうした状況を指しているのだろう。

2013-09-29 18:13:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

 「生物は遺伝子の乗り物だ」とは生物学者、リチャード・ドーキンスのテーゼだが、人間は環境に働きかけ、環境を変えることができる。そして変化した環境がまた、人間自身を変える。ジェンセンの環境閾値説は、環境の「不適切さ」についても言える。

2013-09-29 18:13:52
倉沢 繭樹 @mayuqix

Sさんは、環境が「不適切」の領域にあったので、外向性・社交性が強く発現せず、神経症的傾向を増悪した、と考えられる。遺伝的素質がどうであろうと、異なる環境で成長したのなら、SさんはACではなかっただろう、と僕は思う。

2013-09-29 18:14:42
倉沢 繭樹 @mayuqix

 僕は彼女の話を聞き続けたが、当然と言おうか、特に変化は表れなかった。「私の話を聞いていて、何かわかった?」といつも訊かれたが、「それに気づくのは、自分自身だよ」と答えるしかなかった。そんなある日、僕は訊いた。

2013-09-29 18:15:45
倉沢 繭樹 @mayuqix

「今は僕に対して何の感情も湧かなくても、時間がたったら、好きになる可能性はある?」と。「わからない」と彼女は首を振った。そのとき、僕の心は折れた。彼女の手を取って握手をし、別れた。

2013-09-29 18:16:25
倉沢 繭樹 @mayuqix

 彼女が今、どうしているのかは知らない。ウサギのように生きているのかもしれない。

2013-09-29 18:16:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

  (引用・参考文献) リチャード・ドーキンス『延長された表現型』紀伊国屋書店、1987年。榎本博明、桑原知子編著『人格心理学』放送大学教育振興会、2004年。氏家達夫、陳省仁編著『基礎 発達心理学』放送大学教育振興会、2006年。

2013-09-29 18:19:34