【twitter小説】標本の館#2【ファンタジー】

若い冒険者であるモアとクレインは、ある不思議な館の譲渡の話を聞く。奇妙なことに夫婦であることを条件として譲渡するというのだ。モアとクレインは夫婦ではないが――? 小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

 それもシリンダーを身体に埋め込んで無理矢理魔法を使っている三下魔法使いとは違う、真の魔法使いだ。宗教上の理由で殺生が出来なくて不便な目にあってるだけで、クレインの魔法のレベルはかなり高い。だからこそ老人の術中に完全に陥ることはなかった。 56

2013-10-05 14:53:50
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「あ、ああ……私はここで休んでいるよ。少々……疲れてしまったのでな」  一瞬の魔法戦はクレインに軍配が上がった。老人は疲弊の影響で抵抗が難しかったようだ。魔法によってある程度までは相手の思考を制御できる。 57

2013-10-05 15:00:46
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 もちろん相手の嫌がる行為はさせるのがかなり難しい。この部屋で老人を休憩させる以上のことは難しかっただろう。例えば何をしようとしているのか口を割らせるとか……しかしチャンスはできた。急いでモアを連れてクレインは部屋を出る。 58

2013-10-05 15:04:49
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「モア、時間が無いぞ。急いでこの屋敷を探索するんだ」 「えっ、どういうことなの……」 「僕らは魔法にかけられていたんだ。そこまでする理由があるはずだ。それを知らないといけない」 59

2013-10-05 15:11:30
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 薄暗い廊下はクレインの漏らす魔力の波動に反応して照明がつく。かなり魔法使い用に改造された館のようだ。光が灯ると共に、奇妙な物が浮かび上がってきた。さっきまでは闇の中で見えなかったもの……それは、無数の生物標本だった。 60

2013-10-05 15:15:27
減衰世界 @decay_world

 標本は緑色の液体に浸かってシリンダーの中に浮かんでいた。それが照明の中いくつも浮かび上がる。 「大丈夫だよ、標本くらい錬金術師なら大抵……」 「モア、こいつら、みんな生きてるぞ」 61

2013-10-05 15:21:10
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 クレインは老人が後をつけてくるか察知するため生命探知の呪文を使っていた。奇妙なことに、それはこの標本すべてに生命がまだ宿っていることを知らせてくれたのだ。さらに、向こうの奥の部屋に人間大の生命反応があることもわかった。 62

2013-10-05 15:26:16
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「モア、奥に誰かいる……人間がいる」 「なるほど……怪しいね。この謎解いて見せようか!」  モアは急に意欲を出して屋敷の中を進んでいく。彼女は元来冒険好きなのだ。しかし、それと同時に後を追いかけてくる……老人の存在も察知する。 63

2013-10-05 15:31:41
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「急ごう、モア。その部屋だ!」  二人は奥にあった鉄の扉を思い切って開く! 鍵はかかっていなかった。ゆっくりと重い扉が開く。その奥には……。 64

2013-10-05 15:35:57
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 のっぺらぼうの、男女の肉体の標本がふたつあったのだった。 65

2013-10-05 15:38:24