SecretLover3【R-18】

secretloverシリーズその3(・ε・) 【1】⇒http://togetter.com/li/605940 【2】⇒http://togetter.com/li/605940 ※なお、【1】・【2】については改訂版がHPに置いてあります。※
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橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

102)「――なーんか、最近綺麗になったよねぇ、楠木さん」 「…え?」 同僚の言葉に驚いて目を見開くと、彼女は苦笑していた。 「え、って自分で気づいてないの?」 「そ…そうかな…っ」 「休み明けくらいからさーなんか急に雰囲気変わったよ。なんていうの?大人の色気みたいな」

2013-12-29 14:23:56
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

103)そんな風に褒められたのは初めて、頬が酷く熱い。ペタペタと頬を押さえていると、彼女がまた、今度は可笑しそうに笑う。 「楠木さん、もしかして彼氏出来た?」 「へっ!?いいいやいやそんなまさかっ…!」 「あ!じゃあまだ片思いとか!?」 「う…っ」

2013-12-29 14:25:06
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

104)彼女の追求が激しくて、咄嗟にごまかす言葉が見つけられない。顔を真っ赤にして言い淀んだ私に彼女は答えを理解したようだった。 どんな人と何度も聞かれて、四苦八苦しながら漸くごまかして仕事に戻る。 自分だって、馬鹿だと思う。 こんな恋心抱いたって叶わないのなんかわかりきってる。

2013-12-29 14:27:05
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

105)ましてや、相手はプロで、私なんかただのお客の一人しか過ぎないのに。 彼は今も、私の心の中に居座っていて、出て行ってくれない。 もう26なのに、いい加減大人の割り切りも身につけていてもいい年なのに、彼に会いたいと思ってしまう自分がいて、情けなくて仕方なかった。

2013-12-29 14:29:22
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

106)何もしなかった訳じゃない、あの後、どうしても我慢できなくて、もう一度だけでいい、彼に逢いたくて、お店のHPを覗いた時、そこに彼のプロフィールはなかった。 数週間前までは確かにあった、彼の情報が、すべて綺麗に消えていて、本当にもう、これで終わったのだと、泣きじゃくった。

2013-12-29 14:33:09
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

107)泣いて泣いて、もう涙は枯れた筈なのに、彼を想う度涙が滲む。 仕事を終えてぼんやりした意識のまま駅までの道を歩く。 信号待ちをしていると隣で電話をしていたサラリーマンが笑った。 「ははマジで勘弁してくださいよ辻井社長!え?ああそれは…」 「…?」 その名前をどこかで聞いた。

2013-12-29 14:37:23
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

108)信号はまだ赤でそのサラリーマンはまだ電話で話してる。 私は必死でどこで聞いたのかを思い出して彼の声を思い浮かべた。 そうだ、確かに彼が言っていた、辻井さんって、その人が小さい会社なんて言ったら怒るって、確かにそう言っていた。 それに、彼は自分がシステムエンジニアだとも。

2013-12-29 14:40:27
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

109)彼への繋がりの可能性を見つけて、いてもたってもいられなくなった。 携帯で、その名前を検索して、いくつか出てきた会社名からまた絞り込んで、私はそのまま駆け出した。 会いたい、会いたい。 突然会いに行ったら、探しにいったら、彼は困るかも入れない。 そんな事わかってる。

2013-12-29 14:42:24
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

110)だけど、もう一度だけ。 あのぶっきらぼうで人見知りで、すごく優しいあの人に、逢いたくてたまらなかった。 好きだと、あなたが好きだと、どうしても伝えたくて、必死で足を動かした。 電車に乗ってたどり着いたその街のそのビルの前に立って息を整えた。 ビルの明かりは半分消えている。

2013-12-29 14:44:48
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

111)時計の針はもう19時を過ぎていた。 ここにいるとは限らない、もしかしたら間違ってるかも知れない。 会えないかも、けど、私の直感がそこから動くことを拒絶していて、ビルの入口に掲げられた「辻井企画」の文字をじっと見つめる。 中から聞こえた足音に、反射で顔を向けた。

2013-12-29 14:46:48
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

112)「…っ…」 「……桃……?」 あの日とは違う、スーツ姿に、フチなしメガネをかけた、その男の人が、ずっと聞きたかったその声で、私の名前を呼んだ。 「…っ…颯人さん…っ!」 駆け寄って飛びついた私の身体を、彼はなんなく受け止めて、痛いほどの強さで抱きしめた。 fin.

2013-12-29 14:49:19
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