オーズ・ディケイド・平成ライダー 火を噴け!十二人ライダー 08
「む、火野君たちはどこかな。姿が見えないようだが……」 「六枚目のメダルを追って走り去って行きましたよ、会長」 それから暫くし、半壊したクスクシエの中から鴻上と里中が現れた。鴻上は二人がもういないことを知ると、里中に向かい「これはまずい」と声を上げる。
2014-01-07 22:42:57「何か……火野さんたちに伝えていないことでも?」 「彼らはライダーメダルを使う怪物を下し、順調にメダルを取り戻している。しかし、しかしだ。幹部が倒され、ディケイドがこの世界に現れた事を知ったなら、必ずやアポロショッカーは本腰を入れてライダー掃討に乗り出すだろう」
2014-01-07 22:44:36「門矢君が満足に戦えず、ライダーメダルが十分に集まっていない今、”あれ”を呼ばれでもしたら……、二人に勝ち目は無いだろう」
2014-01-07 22:44:47「”あれ”……ですか」里中は不安そうな口調で言葉を返す。「しかし、あれをこんな都心で暴れさせてしまえば、彼らにとっても痛手の筈」 「いいや、それでも彼ならやるだろう。奴らにとっての障害は仮面ライダーだけだ。街一つ潰したとしてもお釣りが来る」
2014-01-07 22:46:32鴻上は暫く思案を巡らせた後、「やはり」と言葉を継ぐ。 「呼び戻しておくべきか……『彼』を」 「その件でしたらご安心ください。帰国の折に『彼』に連絡しておきました。もう間も無くこちらに到着するかと」 「流石は里中君。その抜かりの無さ……素晴らしいッ!」
2014-01-07 22:48:08「ですが会長。今回の業務の範囲外ですので、後で特別手当をお願いします。輸送ヘリの操縦代行の分も含めて頂きますので、そのつもりで」 「どこまでも抜かりが無いね里中君! 素晴らしい……実に素晴らしいッ!」
2014-01-07 22:49:27門矢士と火野映司が、金色のメダルを奪った戦闘員を追い掛けて三十分。 追いかけ始めた時点では、俺が戦闘員ごときに負けるか。速攻で捕まえてやると息巻いていた士だったが、パスにフェイント、数に物を言わせた妨害に苦戦を強いられ、未だに追い付くことすら出来ないでいる。
2014-01-07 22:50:59「ちきしょう……雑魚のくせに、雑魚のくせに! 許さねぇ、絶対に許さねぇぞこの野郎!」 「落ち着いてください士さん。焦ってちゃ捕まえられるものも捕まえられませんって」 「これが落ち着いていられるか! あぁもう、これ以上我満出来ん!」
2014-01-07 22:54:31——KAMEN RIDE「DECADE」 ——FORM RIDE「FAIZ ACCEL」 士は勢いに任せてディケイドに変身し、続いて超加速形態「ファイズ・アクセルフォーム」へと二段変身。通常の千倍の速さで地を駆け、周囲の戦闘員たちを散らして金色のメダルを奪い返した。
2014-01-07 22:57:09「どうだこの野郎。俺が本気を出しゃあこんなもんよ」 「大人気ないですよ、その台詞……ん、ん?」 二人の耳に妙な音が届く。電車のものにしては音が荒々しいし、そもそもここに線路はない。首を傾げる二人の遥か頭上に、正面に二つの砲門を備えた、巨大な重武装『電車』が現れた。
2014-01-07 23:00:51「なッ! なんなんだありゃあ!」 「分かりません、分かりませんけど……逃げましょう!」 『電車』がこちらに照準を合わせて砲弾を撃ってきた。狙いが粗いお陰でなんとか躱せたもの、避けた先の家屋や商店などが、一瞬にしてセルメダルの山へと姿を変えている。
2014-01-07 23:03:24「士さん、何なんですかあの電車……っていうか、電車なんですか、あれ! 電車というか”戦車”ですよ!」 「そんなこと俺が知るか! 敵の侵略兵器であることは確かだが……」
2014-01-07 23:05:05あれは何だと思案を巡らせるが、妙案も対抗策も浮かびはしない。 ならば行動あるのみだと結論付け、動き出そうとしたその瞬間、彼ら二人の頭上から、ビルの上部が瓦礫となって降って来た。重武装砲門付き車両の攻撃を受けて“中程”だけがセルメダル化し、支えを無くして落ちて来たのだろう。
2014-01-07 23:07:58映司はメダルをバックルに嵌め、士はカードをドライバーに装填するが、変身までに間に合いそうもない。ビルの瓦礫は二人の男を押し潰さんと、重力に従い堕ちて行く。
2014-01-07 23:11:17――セル・バースト ――ブレストキャノン・シュート! 何処からともなく放たれた緑の閃光が、落ち行く瓦礫を一瞬のうちに消し去る。士と映司が驚き戸惑う中、空から一人の戦士が降り立った。
2014-01-07 23:14:08カプセルを模した球型のパーツが全身に施され、顔にはU字の赤いライン。セルメダルの力だけで稼働する鴻上ファウンデーション製の強化パワードスーツ、仮面ライダー『バース』だ。
2014-01-07 23:14:59「――火野、それに門矢士だったか。怪我は無いか?」 涼やかでよく通ったその声に聞き覚えがあったのか、映司は驚いて声をかける。 「その声……“後藤さん”、ですか?」 「日本の危機にジッとしていられなくてな。ライドベンダー隊隊長に臨時で復帰さ」
2014-01-07 23:18:04映司と士を救ったこの男。名を後藤《ごとう》慎太郎《しんたろう》と言い、かつてのグリードとの戦いでバースとして活躍した元・警察官だ。 「あ、紹介します士さん。彼は以前……」映司は後藤のことを士に紹介しようとするが、当人は「そんなことは後でいい」と突っぱね、士もそれに頷いた。
2014-01-07 23:20:22「俺は会長の指令でここに来た。お前たちの助けになれとな。と言うことは差し詰め……」 後藤は空を見上げ、砲弾を滅茶苦茶に撃ち捲る電車を指差す。 「あれをぶっ壊す手伝い……、ってところか」 「そうなるな。奴は“電王”のメダルを持っている。乗り込んでぶっ壊し、メダルを奪い返す」
2014-01-07 23:22:54「乗り込むって……、士さん、あんな暴走特急に、どうやって乗り込もうって言うんです? 」 あぁも攻撃の激しい電車にどうやって乗り込めと言うのか。映司が腕組みをして悩んでいると、後藤が任せてくれと手を挙げる。「あの電車の動きと攻撃を封じればいいんだろう? そいつは俺の仕事だ」
2014-01-07 23:24:35「そんな簡単に……。可能なんですか?」 「一瞬で良ければな。異論はないか? 門矢士」 「問題ない」士は首を縦に振った。「後は俺たちで勝手に乗り込む。あぁ、それと……足になる車、バイクが欲しいな。そいつはどうだ?」
2014-01-07 23:27:18「そいつも大丈夫だ。ほら」後藤はバッタ型のメカを士に手渡した。「通信機だ。そいつで会長と話が出来る」 後藤から手渡されたバッタのメカは、士の手に渡った瞬間、鴻上の声でひとりでに喋り始めた。
2014-01-07 23:29:43「――やあ、元気かね諸君。君たちに嬉しいお知らせだ。カンドロイドと『ライドベンダー』の起動権を掌握した。戦況は未だ敵側に傾いているが、これらを駆使して頑張ってくれたまえ」 鴻上は言いたいことだけ言い切ると、こちらの言葉を聞かぬまま通信を切ってしまう。
2014-01-07 23:30:47「何なんだ一体。カンドロイド、ってのは分かるが……らいどべんだぁ、ってのは何だ?」 「あ。それはですね……あれです、あれ」 映司はそう言って、街中に無造作に置かれた自販機を指差す。士にはその意味が全く分からない。
2014-01-07 23:32:18